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笑い声が、聞こえる。
誰の声だろう?
透と、友弥?
それからカシャって写真を撮る音。
母さん?
また変な写真撮られてる?ってパチって目を開けたら。
「ひゃああっ」
真鍋先輩の超スペシャルな、どアップ。
起き上がろうとしたけど起き上がれなくて、身体が重くて、何だかよく分かんない感じで真鍋先輩の腕や足が僕に絡まってるってやっと気づいた。
そしてそんな僕たちを見て笑っている透と友弥と木戸先輩。
み、見られてた。めちゃくちゃ見られてた。
うわああああああって恥ずかしくなって、布団を被る。
余計に笑われる。
笑い声に目が覚めたのか、うーーーんって唸る真鍋先輩に、余計にぎゅうううううって抱き締められて、苦しくなってぷはって布団から顔を出した。
寝起きでぼんやりしている真鍋先輩と、ばっちり目が合う。
「お、おはようございます…………」
って、言うしかないよね?
「はよ」
16年間で一番ドキドキした朝だった。
「見て、これ」
「すっげぇがっつり抱き合って寝てたぞ」
「ラブラブだねぇ」
友弥に見せられたスマホには、透の言葉通りがっつりぎっちりお互いに腕を絡めて抱き合って寝てる僕と真鍋先輩の写真。
いや、ちょっと待って。これってどうなの?みんなの前でどうなの?
「早佐、それ、俺んとこに送って」
「ええええええっ!?」
「了解です」
「ええええええっ!?」
「まーくんとこにも送るよ」
「ええええええっ!?」
「まー、うるさいわ」
「だだだだって!!」
俺んとこに送ってって、了解ですって、僕んとこにもって!!
ど、どうするの?その写真!?もらって一体どうするの!?
「おれたちも撮って欲しかったなぁ?」
「いらねーよ」
「ハヤーー」
「うっさいわ」
「昨夜はあんなにかわいかったのになんだよ」
「え?」
「は?」
「亮平くん?」
「昨夜はハヤ、おれの布団に入ってきて、ぎゅうってしがみついてきたんだ…………ぶっ!!」
ぼふって、また顔面に枕をくらった木戸先輩が、ふふふふって笑ってる。
もう完全に友弥の反応見て楽しんじゃってるよね?
良かった、真鍋先輩がこういうタイプじゃなくて。
なんて思って、ごめんね?友弥。
「ねぇ、すっげぇどうでもいいけどさぁ」
透が急に、すっごい面倒くさそうに言った。
何?って、みんなで透を見る。
友弥を指差す。
みんなで友弥を見る。
「友弥、首んとこ、キスマークじゃないの?」
え?
「亮平くーん」
「あーーーーー!!」
「見るなあああああ!!」
「ふふふふ」
友弥の、パジャマから見える首筋のところに、しっかり見えた赤いあと。
昨夜聞こえたべしって音と、木戸先輩のいてって声は、もしかしたらこの時のなのかな?
同じことを思ったのか、真鍋先輩が僕を見て笑った。
「まーには付いてないよな?」
「なっ、ないよ!!あるわけないじゃん!!」
「でも光ちゃん、絶対濃厚なチュウしただろ?」
「もう!!木戸先輩!!」
何てこと聞いてるの!?反応見て楽しむのは友弥だけにして!!
「当たり前だろ?」
しかもそれにしれって答えてる真鍋先輩。
もう!!どうしてこの二人って、この二人って!!
「真鍋先輩のーーーー」
「ん?」
「ばかばかばかばかーーーー!!」
恥ずかしくて恥ずかしくて。
僕は布団を被って、しばらく丸まっていた。