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真鍋先輩のキスは優しいキス。
布団の中でくっついて、繰り返してる、少しだけ触れる優しい優しい、キス。
さっき廊下でね、ちょっとだけね、ちょっとだけ…………木戸先輩が言う濃厚なのっていうの、されて。
びっくりして、ひゃあってなったら、真鍋先輩の熱はすぐに戻って行っちゃって、それからはまた、優しい優しいキス。
それはそれで、ちょっと残念。
抱き込まれて、真鍋先輩が僕に覆い被さった。
そういえば、昨日もこんな風にされて、首筋にキスされたんだっけ。
思い出しながら、真鍋先輩の背中に腕を回す。
僕を見つめる、真鍋先輩の熱っぽい目。
とけそう。
とけちゃう。
………とかして、くれるかな。
近づいてくるその目を、それ以上見ていられなくて。
閉じた。
触れるだけだった唇が、強く重なる。
しがみつく。
逃げようにも、逃げられない。
僕は真鍋先輩の熱いぐらいの手で頭を固定されて、そのまま深く深くキスをされた。
絡み付く熱が、僕を追いかけてくる。
苦しくて。でも。ゾワゾワして。何かが這い上がってきて。
離れそうになった唇を、今度は僕が捕まえた。
やだ。
もっと。
もう逃げないって分かったのか、僕の頭を押さえていた手が離れて、すうっと首筋をなぞった。
くすぐったいのと紙一重の感覚に、身体が震える。
唇が離れて、その唇が今度は僕の耳にキスを降らせた。
甘く噛まれて、なぞられて。僕は息を止めて、そこに与えられる感触を必死に堪えた。
忘れちゃいけない。
ここにはみんなが居て、僕たちだけじゃないって。
もう、無理。
小さく首を振ったところで、真鍋先輩の動きが止まって。
僕ははああって、息を吐いた。
心臓が、バクバクしてる。
でも。嫌じゃ、なかった。
嫌じゃ、なかったよ?
ピタリと動きを止めたまま、動かなくなった真鍋先輩のうなじに。
僕はそっと、唇を寄せた。