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あれ?真鍋先輩の部屋ってどこだっけ?
トイレに行ったのはいいけれど、同じようなドアばっかりがいくつも並んでて、真鍋先輩の部屋が分かんなくなっちゃった。
そのうち誰か来てくれるかな?
なんて気軽に考えて、僕は窓の外に視線をうつした。
ひろーい庭が、まだキラキラ光ってる。
「きれーい」
窓際に寄って、そのキラキラを見る。
何か、色々あったな、このクリパ。
今何時ぐらいだろう?楽しい時間はあっという間。
もっと、続けばいいのに。
「先輩、来てくれないかな………」
そしたら………好きって言うのに。言っちゃう、のに。
しばらくそのまま、ぼんやりと窓の外を眺めてた。
「真尋!!大丈夫か!?」
「え!?」
バタバタバタって向こうの方から真鍋先輩が猛ダッシュで来て、僕はちょっとびっくりした。
「先輩、どうしたの?」
「真尋がなかなか戻って来ないから、みんなしてお前が青い手にさらわれたんじゃないかって」
僕の腕をガシってつかんで、ものすごい真剣な顔で言うから。
「心配して来てくれたんですか?」
「え、あ、うん、そう………」
「………ありがと」
真鍋先輩、あんなに怖がってたのに。
嬉しくなって、僕は真鍋先輩の肩におでこを乗せた。
来てくれた。
真鍋先輩が。
来てくれたよ。
だから。
「で、お前はんなとこで何してたの?」
「迷子」
「え?」
「部屋、分からなくなっちゃって、誰か迎えに来てくれないかなあって、待ってた」
「マジか」
「うん」
バカだな、お前って、笑われる。
だから、ね。
「先輩のパジャマ、触り心地いいですね」
「そうか?」
「うん、僕、これ好き」
合言葉は、好き。
好き。
ああ、ドキドキする。ドキドキしちゃうよ。
「先輩の、くりくりした目が、好き」
「真尋?」
「いつもは超カッコいいのに、時々眉毛下がってる笑い方が好き」
「真尋、ちょっと待て」
「先輩の声が好き」
「待てって」
「あったかい手が好き」
真鍋先輩の手を持って、自分のほっぺたにあてる。
うん。やっぱり、あったかい。
ドキドキ、する。
肩に乗せてたおでこを離して、顔を上げる。
真鍋先輩の目を、じっと見る。
庭のキラキラが、うつってる。
「先輩が好き。………大好き」
やっと。
やっと、言えた。