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怖がってる真鍋先輩を面白がって、友弥がポツポツと話し出したのは、今までで一番怖かった時の話だった。
授業中いきなりふらっと教室を出て行った友弥がいつまでたっても、夜になっても、朝になっても帰って来なくて。
警察に連絡しようかどうかって父さん母さんたちが集まって相談していた。
僕と透も心配でずっと起きてて、明るくなってきたからもう一回学校を見てくるって、早朝の、まだ誰も居ない学校に行ったんだ。
そしたら校庭に友弥が真っ青な顔で冷え切った身体で倒れていて、その首筋には。
「………青い手形がくっきりと残っていたんです」
「うわあああああああっ」
「あれ、完全に絞められてただろ?すっげぇはっきり残ってたもんな」
「しかも青色でね」
「うん。だって青い手に連れられて行ったから」
「友弥も真っ青な顔でさ、死んでんじゃないかってマジ焦ったんだよ」
そうなの、そうなんだけどね!?
あの手形は凄かったの、くっきりはっきり付いてて、
迎えに来てくれた友弥んち父さん母さんも超パニクってた。
友弥から詳しく話を聞いたら余計に怖くなって、怖すぎてしばらく夜も3人で寝てたんだよ!!
それぐらい怖かったんだよ!!そうなんだけどね!?
「せんぱっ………くるしっ」
ぎゅうううううって、僕にしがみついてる真鍋先輩の力が強すぎて、ギブギブって、腕をとんとんする。
「真鍋先輩、見て」
「なっ、何だよ!?」
「後ろ」
「だから後ろが何だよ!?」
「真鍋先輩のすぐ後ろに」
「な、何!?」
「青い手が………」
「マジやめろってーーーーー!!」
「ぐ、ぐるじぃ………」
真鍋先輩、もう、本当に離して…………。
「ハヤ、ハヤ」
「はい?」
「その辺にしないと新井ちゃんが死んじゃう」
「あ………」
「光ちゃん、光ちゃん、絞めすぎだから」
「真鍋先輩、マジでまー落ちるって」
透が真鍋先輩の腕を剥がしてくれて、僕はやっと解放された。
真鍋先輩とくっつけるのは嬉しいけど、苦しいのは勘弁。
僕ちょっと三途の川が見えそうだったよ。
「わ、わりぃ、真尋。大丈夫か?」
「く、苦しかった………」
「だから、何回も言うけど俺そういうのマジ苦手なんだって」
ごめんな?って真鍋先輩が何回も言ってる。
はあ、死ななくて良かった。
「光ちゃん夜一人でトイレ行ける?」
「ト、トイレぐらい!!」
「青い手がもしかしたら………」
「だからマジやめてって、亮平くん!!」
「あ、僕トイレ行ってこよ」
「真尋お前、よくこの状況でトイレなんて行けるな」
「うん、平気」
「す、すげぇ。俺マジ無理」
真鍋先輩だっせー。
透の一言にみんなで爆笑して、僕は真鍋先輩の部屋を出た。