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「あ、ごめん。お邪魔だった?」
多分きっとばっちり今のを見ちゃったであろう木戸先輩がそう言ったのが聞こえたけど、僕はもう、へなへなって、その場にへたりこんだ。
腰が抜けるって、こういうこと?
「真尋!?」
「パジャマ忘れてきたみたいだから何か貸してー」
「え?ああ、うん」
心臓が、ドキドキっていうより、ドッキンドッキンしてる。
何か色んなドキドキがまざって、過去最大級超ド級の放心状態。
真鍋先輩と木戸先輩が何か言って何かやってるけど全然分かんなくて。
それよりも。それより、も。
「真尋、大丈夫か?」
「ひゃあああっ」
急に真鍋先輩が僕の視界、しかもすごい近くに入って来たから、びっくりして叫んじゃった。
「ひゃああって………」
「う、え?あ、うん、あの、えっと」
「キョドりすぎ」
ぽんぽんって頭をされて、やっと落ち着いてくる。
「えっと」
「とりあえず、着ろ。その格好はマジでヤバい」
「う………はい」
座ったまま改めて渡されたTシャツを着ると、手を差し出されて、立てるか?って言われて、僕はその手を取って、立ち上がった。
立ち上がると同時に、ふんわりと抱き締められる。
「ごめん、本気でヤバかった」
「うん………僕も」
「つーかさ、真尋、エロすぎ」
「なっ………!?僕!?」
「身体とか、反応が」
「………そんなの、自分じゃ分かんないよ」
恥ずかしくて、ぎゅうって、真鍋先輩にしがみつく。
「何なの、お前」
くすくすと真鍋先輩が笑い出す。
「何で笑うのっ!?」
「かわいいだけと思ったらあんな風にエロくて、エロいかと思ったらやっぱかわいい」
「だから、自分じゃ分かんないってば!!」
「分かんなくて、いい」
強く抱き締められて、耳に、キスされた。
「分かんないままでいい」
低い声で耳元で言われて、また身体の奥がきゅってなる。
このままこんな風にしてたら、今度はもっと色々言っちゃいそうで、やっちゃいそうで。
身体を、離した。
目の前の真鍋先輩が、とけそうなぐらい、僕がとけちゃいそうなぐらい、甘くて優しい顔をしてる。
「部屋、戻るぞ」
「………うん」
「寒くない?」
「色んな意味で、あつい、よ」
俯いて小さく呟いた僕の頭を、今度はくしゃくしゃってして。
真鍋先輩が。
………僕のほっぺたに、キスをした。