竜の楽園に行きました〈1〉
修正できましたので更新いたします。
自由にペコが飛べるようになったら、ペコはシルバーと一緒に住むようになるだろうと皆が思っていた。
実際ペコが飛べたあの日、ペコはシルバーにくっついて飛んで行ってしまったのだ。リリーはその夜さびしくて、涙しながら眠ることになったのだが、次の朝ペコはリリーのバルコニーで、いつものように「朝食はまだかな」と待っていた。
「ペコ~~! 帰ってきてくれたの?!」
ピキュ~ン! ピキュ~ン!
ペコは甘えた声を出し、リリーのほっぺたに鼻をくっつける。どうやらペコにとってリリーは育ての母親で、自分の巣はこのバルコニーだと思っているらしい。
ジョンは「ペコはもう自由に飛べるんだし、リリーの所とシルバーの巣を好きな時に行き来させてやったらいいんじゃないかな」とリリーにアドバイスした。
リリーにとってはこれ以上ない嬉しい言葉だった。
ペコは朝食以外は森や谷へ草を食べに行くようになったし、水あびもシルバーといっしょに川や湖でしているようだ。
また、谷のずっと奥に果樹や薬草や花がいっぱい生えている竜の楽園のような場所があり、シルバーとぺコはそこで過ごすこともあるらしい。
「いいなぁ! 私も行ってみたい! 竜の楽園」
リリーが目を輝かせて言うと「じゃあ一度連れて行ってあげるよ」とジョンは約束してくれたのだった。
◆◆◆
そしてその日がやってきた。
ジョンとシルバーがリリーの家へ来るのは久しぶりだ。
リリーはジイヤと一緒に作ったサンドイッチを2人分肩掛けカバンに入れて、シルバーの背中に乗った。
「大丈夫? この綱をしっかり持ってね」
「うん。こうかな?」
「そうそう」
ジョンはこの日のために、シルバーに手綱をかけ、お尻が痛くないように座布団まで用意してくれていた。
「怖かったら言ってね。引き返すから」
「大丈夫! 怖くないわ。本当よ」
飛んでるうちに慣れるし、僕が後ろに乗るから絶対大丈夫! ジョンはリリーのすぐ後ろにまたがると、シルバーに「さぁいこう!」と声をかけた。
シルバーが飛びたつ。
そしてそのすぐ後ろをペコが追いかけるように飛び立った。
「行ってらっしゃーい!」
「お気を付けて~!」
庭で手をふる母親とジイヤが、あっと言う間に小さくなる。
「すごい! 気持ちいい!!」
シルバーは風に乗り岩山の間をぬいながら進んでいく。目の前に現れては消える灰色の岩肌と、そこにくっついているように見える家や人々。
上を見れば大きなお屋敷が。下へゆくほど家は小さく貧しいものが建っている。住んでいる場所で身分の高さが一目瞭然だ。
「竜使いはどのへんに住んでいるの?」
リリーはすぐ後ろのジョンに尋ねる。
「竜使いたちは城のむこう側の森の中に住んでる。魔法使いたちと領地争いにならないように、しっかり離れたところに住んでいるんだよ」
「そうなんだ」
リリーは手に職をもって生活している彼らは素晴らしいと常々感じている。でも彼らはこの国で身分の低い階級に分類されてしまっている。
前方にカロン山が近づくと、リリーはその山の荘厳さに畏敬の念が湧いてきた。
「なんて立派な岩山……!」
その岩山の上方には王族が住む立派な家や城が立っている。
「ねぇリリー、お城の中に入ったことある?」
ジョンは大きな城をはるか上に見ながら質問する。
「ううん。一度もないわ。中はどんな風なのかしら?」
「じゃあ、カロン王国の王族の名前、何人覚えてる?」
「うーんと、カロン国王様でしょ? ローザ王妃でしょ?
あと王子様が3人いるはずよ。確かミカエル王子と、アレン王子と、一番下の王子様は……、そうそうヨハン王子よ。王子様たちにはー度も会ったことがないわ。あとの王族の親戚の方々の名前は、……ごめんなさい、多すぎて覚えてないわ」
令嬢なのに王族のことをうまく答えられず、リリーは少し恥ずかしくなる。ジョンに詳しく教えてあげたかったな、今度ジイヤに聞いておこうとリリーは思った。
そんな世間話をしていたら、前方にほうきに乗った魔法使いたちのご一行様があらわれた。
あら? もしかして、いるかも?
「リリー!!」
竜二匹とほうき軍団がすれ違うとき、元気な声が飛んできた。
「アンナ!」
アンナは集団から離れて嬉しそうにこちらへ飛んでくる。
「この子がジョンね? 今日は竜に乗って2人でデート?」
「そ、そんなんじゃないわっ!」
頬を赤くするリリーを見てアンナは満足そうに笑う。
「リリーをよろしくね! ジョン君。じゃあね~~!」
アンナは手をひらひらさせて、仲間の方へ飛んでいってしまった。
「元気のいいお友達だね」
「アンナって言うの。とっても大切な友達よ」
住居のある岩山群を抜けると、きり立った渓谷は狭くなりいよいよ荒々しい岩の塊が剣のように立ち並ぶ荒涼とした風景になってきた。
「この辺からが竜の住む谷だよ。竜使いたちもめったに入らない場所なんだ」
「あら? 何か光った」
リリーは谷の森の中にキラキラ反射するものを見つけ目をこらす。それはいくつもあって、緑の木々の合間に見え隠れしている。よく見ると動くそれは人間だと分かった。
「光ってるのはサーベルだ。どうして騎士たちがこんな所にいるんだろう? 道は険しいし、危険なのに」
リリーは目が良い。
騎士たちの中にハロルドがいるのがチラリと見えて、慌てて目をそらした。
「知った顔があった?」
「ううん。何でもないの」
嫌なことを思い出し、リリーは目をぎゅっとつぶる。
「手が震えてるよ。大丈夫?」
ジョンは手綱を持つリリーの手に自分の手を重ねて包みこむ。
「上に昇るからしっかり掴まって!」
そう言うと、ジョンはシルバーの手綱を引いて急上昇しはじめた。
ここまで読んで下さり本当にありがとうございます!
今完結にむけて執筆中なのですが、後半のお話をすべて書きあげてから投稿したいと思っています。
なので明日からしばらく更新はお休みさせて頂きます。
申し訳ありません。m(_ _)m
数日中にまた更新再開できるように頑張ります!
よろしくお願いいたします。
(。・∀・。)ノ
◆◆追記のお知らせです◆◆
感想にて「そもそも身分差の婚約がどうして成立していたのでしょうか?」とのご意見いただきまして、
その説明を<第一話>に追記させて頂きました。
第二話も少しだけ改稿してあります。
ご意見大変ありがたかったです。
他にも矛盾点や質問がありましたら、ぜひ教えて下さいませ(。・∀・。)ノ
ありがとうございました!
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◆◆改稿・追記のお知らせです◆◆
・ハロルドとリリーの婚約破棄が正式に成立した記事を
追記しました。<第2話>
・それにともない両親の会話が少し変更になっております
<第6話>
色々検討したところ、大筋には影響はなさそうです。
婚約破棄は一度ちゃんと成立したということでお話は進みます。後半ハロルドがもう一度登場するのは最初の予定通りですので、よろしくお願いいたします!
(。・∀・。)
ご意見ご感想、大変助かっております。
ありがとうございます
m(_ _)m