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幸せになります〈エピローグ的な〉



 リリーとジョンが結婚して3ヶ月。


 王族の、たくさんの親戚との個別のパーティーや会食もほぼ終わり、2人は皆に祝福されつつ通常の生活が始まった。


「おはよー! シルバー、ペコ、ソラ!」


 朝日のさす頃、2人の新居のバルコニーに眠る3匹を起こすことからリリーの一日は始まる。


 ビギューン!


 ピキュ~


 ピキッ


 3匹目のソラは、ハロルドが盗んできたあのたまごの竜だ。この数ヶ月、リリーとジョンはシルバーの助けもかりてこの竜の子を育ててきた。


 ソラのウロコは日の光にあたると空色に輝き、目がくるっとしていて可愛い。


「おはようリリー、よく眠れた?」


 ジョンが起きてきて、リリーを後ろから抱きしめる。


「ジョンおはよう! よく寝たわ」

「今日も一日よろしくね」

「こちらこそ」


 2人はチュッと触れるだけのキスをする。


 ピキュ~


 男の子のペコは少しだけ焼き餅を焼く。


 リリーはジョンのことを公の場ではヨハン、プライベートの場ではジョンと呼ぶ。ジョンが「ジョンと呼んでもらった方がうれしい」と言うからだ。


 カロン王国でのジョン(ヨハン)の仕事は自然保護と領地管理、および竜使いの3つだ。


 どの仕事も人と竜の関わるもので、ジョンにはぴったりの仕事だ。彼はまだ若いが、ユニークで誠実な仕事ぶりで王族たちにはもちろん、貴族たちからもたちまち信頼されるようになった。


 リリーはジョンと一緒にシルバーに乗ってパトロールに出かけたり、ペコの観察記録ノートを使って竜飼いたちと勉強会を開いたりしている。だから谷の森へ出かけることも多くなった。


 竜飼いや竜使いたちは無口だが誠実で意志の強い人たちだとリリーは最近知った。ジョンが弟子入りしている師匠は厳しいけれど、何にも縛られない自由な人だ。


 リリーが竜飼いたちと交流していることが国民に伝わると、「竜飼いになりたい」と弟子入りする女の子も出てきた。


 子爵令嬢なのに第3王子のハートを掴み、王族の一員となった竜に乗る女性として、リリーはひそかに国民の人気者になっている。


 仕事が終わると、夕方リリーはペコに乗って飛ぶ練習をする。3mの大きさに成長したペコにリリーとジョンが乗り、城の塔の上空を旋回する。


 ピキューン! ピキューン!


 ペコが大きく伸びやかな声で鳴くと、野生の竜たちがそれに応えるように鳴き声をあげる。


「リリー、右上に行きたい時は手綱をこっちに動かすんだよ。そうそう、そういう感じ」


「左上は難しいのよね。……こうかな?」


「左上はこういう角度で引っ張る。この時振り落とされないように足にも力を入れてね」


 ジョンに手とり足とり教えてもらっていると、ふわりふわりとアンナがほうきに乗ってやってきた。


「今日も2人はあつあつね? 空中デート?」


「アンナ! 久しぶり。私ねペコに一人で乗れるように練習しているの」


「あら? それはすごいわね!」


「アンナはどこへ行くんだい?」


「うふふー。実は今からデートなの。あっちの塔の上で待ち合わせしてるんだー。また遊びにくるわね。じゃあね~!」


 アンナは機嫌良くふわりふわりと飛んでいった。


 恋するアンナは少し性格がまるくなった。リリーはアンナの恋がうまくいきますようにと心の中で祈る。


「ねぇジョン、私婚約破棄されて、たまごを拾って、あなたに出会えて本当に良かったわ。王族の皆さんはやさしいし、竜使いさんたちとの交流は楽しいわ。魔法使いのアンナもこうして時々ほうきに乗って会いに来てくれるし、竜たちと毎日たくさん触れ合える。カロン王国の上から下まで自由に飛び回って、色々な人と交流することができる、国のために働けるなんて本当にステキなことだわ」


 目を輝かせるリリーは、傷ついて萎縮していた少女とは別人のようだ。


 ジョンは言葉で返事をする代わりに、リリーを左腕でやさしく包み込み、後ろからしっかりと抱きしめた。


「今晩はリリーのお家に夕食によばれてるんだったね。このまま飛んでいこう!」


「うん!」


◆◆


 岩山の中腹にあるリリーのお屋敷が見えてくると、ペコは嬉しそうな声をあげる。


 リリーの両親はペコたちのためにと、庭を半分キャベツ畑に変えたのだ。食いしん坊のペコは大喜びだ。


 2人は両親たちと楽しい夕食の一時を過ごした。


 最後にリリーの両親は、ハロルドについてコーリン公爵から聞いたことを話してくれた。


 ハロルドは密猟にかかわった他の騎士たちと共に一年の懲役が課せられることが決まった。また公爵の位は剥奪され、第一騎士団からも当然外された。一年後は隣国にあるカロン王国の飛び地の警備隊の下男として働くことになるそうだ。ハロルドには特別に監視員がつけられ、再びリリーやジョンに近づかないよう、見張られることになるらしい。


 リリーはその話を聞いてホッとする。

ハロルドには一生会いたくないと心から思っている。人はそう簡単には変わらないものだから。


 ハロルドの父コーリン公爵は少しずつ体調を回復し、リリーの父と関係を再構築しているらしい。息子を甘やかし密猟に加担した妻とは離縁し、新しい妻をめとったという。今はお屋敷で妻と2人で静かに過ごしている。


「コーリン公爵がリリーに本当に申し訳ないことをしたと謝っていたよ」


「もう終わったことだわ。それにコーリン公爵が長年ご苦労されていたことは想像できるし」


 食事を終えてジイヤから竜使いの新しい手づくりのコスチュームを受け取り、リリーとジョンは自分たちの部屋へ戻ってきた。


 バルコニーではシルバーとソラがくっついて、すやすやと気持ち良さそうに眠っている。

 ソラが飛べるようになったら、竜の谷へ生みの親探しに連れて行こうと2人は考えている。


「ふふ。本当の親子みたいね」


「ペコ、たくさん飛んで疲れただろう? ゆっくりお休み」


 リリーとジョンが頭を撫でてやると、ペコはピキュ~と小さく鳴いてシルバーに寄り添い丸くなった。


「僕たちも寝ようか?」


 そうね、と甘えて抱きつくリリーの薬指には、ピンクサファイアが埋め込まれている、花の形のかわいい指輪がはめられている。


「愛しているよ。誰よりも」

 ジョンはリリーの耳もとで囁き、リリーをふわりと抱きしめた。




 これは、竜や魔法使いも住んでいる、谷の中にある岩山群の小さな国、カロン王国でのお話。


 傷ついた少年と婚約破棄された少女が、竜のたまごを通して出会い、癒やされ、愛し合うようになった、小さな恋の物語。




fin.






このお話を読んで下さった皆様に心から感謝いたします!

(。・∀・。)ノ


作者の力不足で、うまく表現できない部分が多々あったかと思います。

どうかお許し下さいませ。

m(_ _)m


感想、コメント下さった皆さま、大変励まされ嬉しかったです。また意見、考察、矛盾点の指摘などして下さった方にも大変感謝しております。


作者は自分の作品をなかなか客観的に見られないので、とても貴重なアドバイスを色々頂けて感謝でありました。


また誤字脱字などの報告も大変助かりました。

(一応見つける度に直してはいるのですが。まだまだある不思議。汗)


そしてブクマ、評価して下さった皆様ありがとうございました。


この2週間、集中して書いて、投稿して、改稿して……と、とても目まぐるしい日々でした。


最後までおつき合い下さり本当にありがとうございました。


(。・∀・。)ノ



追記……完結設定するの忘れていて、今慌てて完結ボタン押しました。最後までバタバタ……。∑(OωO; )


でも完結ボタンを押し、一つの物語を書き終えることができスッキリいたしました!

(*´ω`*)















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