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ドッペル転生~鑑定&コピー能力で目立たず着々と最強に~ 作者:あまうい白一

二章 出会う者と出くわす者

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第25話 かつてと今の明るさ


 祝勝会の会場は、ギルド塔の大部屋一室を借り切って行われていた。
 参加者は、この街のギルド職員や兵士たち、または街の住人たちだ。

 大部屋の中に設置されたいくつかのテーブルには山盛りの料理と酒が載っており、参加者は勝手に飲み食いしていく形式らしい。
 そんな感じで、俺とリコリスが参加した時には既に準備が完了していた。

「街の防衛を祝して、十度目のかんぱーい!!」
「ははは、飲め飲めローランド!」

 というか、半分くらいの参加者が出来上がっていた。

 完全に赤ら顔で酔っ払っている。

「というか、ローランドって、吸血鬼襲撃の時にぶっ倒れていたんだけど。あんなに飲んでいいのか?」

 倒れていた姿を所を見るに、手足がへし折れていた記憶があるんだが。

「あー、あの子は体の治りが早い体質だからね。それに、今は医療技術も発達しているからね。骨の一本や二本くらいなら、回復魔法を使わなくてもすぐにくっつくし」
「医療の進歩すげえな……」

 時代が変わって、劣化したものがあれば発展したものもあるということか。
 むしろ、これだけ迷宮都市と呼ばれていた埃っぽい街が、これだけ大きく風光明媚な街になっているのだから、むしろ発展しまくっていて当然だな。

「進歩しているのは医療だけじゃないわよ。ほら、ここにある食事も、昔に比べたら随分変わったと思うわよ」

 テーブルに並ぶ料理は色とりどりの野菜から、巨大な肉まで多種多様なものが揃えられている。
「こんなに彩り豊かな食卓は初めて見たな」

 昔の迷宮都市ではありえない光景だ。
 これだけたくさんの種類の野菜が商店に並ぶことはほぼなかったし、農家をやっていた自分でもここまで多種類の果物野菜を取りそろえるのは難しかった。

 なのに、今、ここでは出来ている。 

「リゾート化したことで人も増えたし、取れる素材も食材も増えたの。農地改革も進んでいるし……平和に過ごすために、どんどん改良されているのよ? もちろん、昔ながらの良さも消さないように、ね」
「なるほどなあ。皆、頑張っていたんだなあ」

 俺が魔王と相打って消えていた間に、故郷は大きく変わった。
 最初は少しだけ残念に思ったけれども、中に入って数日暮らしてみたら、これがなかなか暮らしやすく思えた。
 これが平和に向けての進歩だというのであれば、喜ぶべきことなんだろう。

「うん、料理も美味いな」
「でしょう? 腕利きの料理人がこの街にも増えてきたのよね。物流も豊富だから、様々な料理が試せるって業界人にも有名なのよ」

 リコリスは微笑みながら言う。
 確かに、こんな美味い料理に囲まれて、楽し気な空気に包まれていたら、自然と頬も緩むだろう。

「ああ、良い所だな」

 と、俺が故郷の新たな雰囲気を感じ取っていると、

「あ、グレイさーん! いらしゃったんれすねー!」

 赤くなった顔をしたミィルが手を振ってやってきた。

「……おい、お前の娘、初っ端から酔っぱらってるんだけど」
「はあ……あの子、お酒にはあんまり強くないから控えろって言ってるんだけどね……」

 頭を抱えるリコリスをよそに、手を振るミィルはそのまま俺の前までやってくる。

「待ってましたよ、グレイしゃん。お母さん!」
「おう、そりゃいいんだけど、酔っぱらい過ぎじゃないか?」
「よってないれすよ!」

 これはいけない。
 完全に舌が回ってない。
 というか足元もふらついている。

「おい、これもうダメだろ。休ませるか」
「そうねえ」
「むーらいじょーぶですのに……。ほらあ、レオさんと同じくらいしか飲んでませんし。ほら、レオさんも大丈夫って感じですよー」

 ミィルがそう言いながら向けた視線の先には、レオがいた。

 毛皮があるからいつもと変わらないように見えるけれど、長い間一緒に過ごしてきた者として、レオの顔に朱が差し込んでいるのが分かった。

「ぬう……おやぶん……なんか、勧められたものを飲んだんだが、あたまが、くらくらするぞ。どくか、これ? 勧めた奴を倒した方がいいか?」

 そういえば、レオは、酒を飲むのは初めてだった。
 多少の毒物は跳ね返すアビスキマイラではあるけれど、初飲酒によって酩酊効果は出てしまっているらしい。

「ストップだ、レオ。とりあえず毒ではないから、倒すのは無しな」
「わふん……」

 俺の指示を理解したのか、レオは千鳥足で俺のひざ元までやってくる。
 そしてまとわりついてくる。

「うへへ、おやぶんの足、気持ちいー」

 何を言っているのかよく分からないが、しばらくは酒を飲ませない方が良さそうだな。
 しかし、二人して酔い潰れかけているとは、どうにかしないといかんな。

「リコリス、とりあえず、この二人は部屋の端っこで寝かせておくわ」
「ええ、お願い。酔い覚ましのお茶でも取ってくるわ」

 そう言って、俺はリコリスと別れ、一人と一匹を部屋の隅にある椅子に連れていく。

「ほら、ここで休んでろ」
「はいー。グレイさんの膝枕で休みますー」

 この子は酔っぱらうと大胆になるタイプなのか、俺の膝上に頭を乗せてこようとする。
 だが、甘い。

「……実体化解除」
「うあっ、あ、頭が、頭がスカりましたよー! ちょっとビックリするレベルで、後頭部が椅子に当たったというか!」
「ははは、油断し過ぎだ。まあ、でも、酔いは良い感じに冷めたみたいだな」
「え……あ、はい……。まだ、少し頭の奥がくらくらしますけど、お陰様で」

 少しだけしゃっきりしたようだ。
 ちょっと荒療治だったかもしれないが、結果オーライだろう、と頷いていると、

「あ、グレイさん。今日は、ありがとうございました」
「うん? 何だいきなり?」
「いえ、その、吸血鬼という強大な敵を前にした時の動きや姿勢、気持ちの持ち方など、色々なことを見せてもらえて、探索者としての動きを教えて頂けたような気がしまして」
「褒めてくれてどうも。といっても、俺は何も教師役なんて出来てないけどな」

 今回なんて、ただ行き当たりばったりに目の前の敵をぶった押しただけだし。

「……一応、空いた時間でミィルの家庭教師や、養成所に物を教えるとは言ったけれど、上手くできるかは微妙なところだな」
「いやいや、自信を持ってくださいよ、グレイさん。グレイさんは、私が見た中で一番強くて、一番学ぶところの多い方なんですから。私ももっと、グレイさんから街を守る方法や、モンスターと戦う手法などを教えてほしいですし!」

 ミィルはキラキラとした目を俺に向けて来る。
 純真な眼だ。

 何かをしなければならないと強制されるのは嫌だけど、こうして期待されるのは悪い気分ではないな。

「ああ、そうだな。俺は教え方の加減は分からないから手探りになるし、俺は俺でやりたいことがあるからそっちを優先するけれども、それでもいいんだな?」
「はい! 望むところです! グレイさんから学べるところ、全部学んでいきますよ!」

 ぐっと握りこぶしを作りながら立ち上がり、ミィルはそう宣言した。
 相変わらず真っすぐな子だなあ、と思って彼女を眺めていると、

「あれれ……なんだか、立ちくらみが……っとと」

 こちらに向かって倒れ込んできた。

「す、すみません、二度も支えて頂いて」
「気にするな。酔っぱらったまま立ち上がればそうなる。ほら、もうちょっと休め」
「あ、ありがとうございます……」

 そうして、俺はミィルに寄りかかられながら、祝勝会の時間を過ごしていく。
●平行連載作品のご紹介
新作です。こちらの連載も応援して頂けると助かります!
元竜騎士が相棒の竜と共に、楽しく運び屋をしていく話です。
 最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます
http://ncode.syosetu.com/n4045ed/

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