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ドッペル転生~鑑定&コピー能力で目立たず着々と最強に~ 作者:あまうい白一

一章 転生 そしてダンジョンへ~

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第三話 ドッペルゲンガーの能力

 自分の体がドッペルゲンガーになってしまったのは、とりあえず理解した。

 だが、問題が一つあった。それは、

「体、回復しないのか」

 先ほどグレムリンウルフに食いちぎられた腕が、なくなったままだった。
 煙状の体だから新しく生えてきてくれればいいなあ、と思っていたけれども、そこまで甘くないらしい。

 まあ腕が戻っても煙状だからどういう使い道があるのか分からないけれども、喪失感がハンパないなあ、と壁の鏡魔石に映る体をじっと見ていたら、

【名称:グレン 種族:ドッペルゲンガー lv1 状態:負傷――

「……うん?」

 鏡に映る俺の頭上にそんな文字が浮かんだ。

「これは、俺の情報か」

 そう言えば、グレムリンウルフをドッペルする時にも、こんな情報が見えていたっけな。

 ……ドッペルゲンガーには『見通す力』が備わっていたと図鑑には書いてあったけれども。

 魔王が言っていた、視るだけで何を持っているか分かるってのは、この力の事なのかもしれない。

「ただ、レベル1ってなんだよ」

 勇者をやっていた時はもうちょっと高かったのだが、レベルが一になっていた。
 一度死んだせいなのか、人間を辞めたせいなのか分からないけれども。能力値も低くなっていた。

「この能力だと、グレムリンウルフ一体倒すだけでも難しいぞ……」

 素手ではほぼ無理だ。また、レベル一に戻っているという事は、人間時代に培った技が残っていないかもしれない。

 そこまでは、現状の情報では分からないけれど。ともあれ、自分の情報が目に見えるのだ。他に何か書いてないか、と先ほど見た個所の続きに目を凝らす。

【状態:負傷――右腕部消失 修復必要条件:飢餓状態からの回復】

「修復必要条件、ねえ。これを達成すれば治るのか?」

 そう書いてあるように見えるが、信じてもいいんだろうか。
 ただ、確かに、腹が減っているのは事実だ。

 何せ魔王との戦いは三日以上続いて、何も食べることが出来ていなかった。
 この体になって、肉体の感覚が薄れているため、空腹というものが感じにくくなっているけれど、それでも減っているのが分かる。それくらいには飢餓状態なのだろう。

 ……先ほどからだるさを感じていたのは、空腹のせいか!

 それを自覚したら何かを腹に詰め込みたくなってきた。

「食えるものは……ちょうど目の前にあるな」

 眼前にはグレムリンウルフが横たわっている。ちょうど首筋を噛みちぎって血抜きが済んだ肉だ。
 毛皮を剥げば食えない事もないだろう。

 そう思って俺はグレムリンウルフに触れようとして――

「いや、だから、物理的に触れられないんだよな、この手!」

 ドッペルゲンガー状態では、肉をどうこうする以前に、食事が行えない事が判明した。
 口元を通過してしまうのだ。

 気合を入れれば少しだけ固体化するので、触れない事もないのだけれども。咀嚼して物体を飲み込むところまではいけそうにない。

 ……そもそも、火が無ければ肉が焼けないぞ。

 モンスター肉は気にしないが、生肉は辛い。
 だが眼の前には生肉しかない。それを調理する道具は、無かった。
 どうすべきかと考え込む間にも腹の虫は鳴いてくる。

 いけない。このままでは餓死をしてしまうかもしれない。

 折角モンスターの体とはいえ生まれ変わったのに、ダンジョンの中で飢え死にするとか嫌すぎる。

「これは……もう、やるしかないか」

 俺は覚悟を決めた。背に腹は代えられない。

「『ドッペル』……」

 俺は再び狼の姿に変化する。そして、血抜きがすっかり済んだ狼の近くに行って、

「――では、いただきます」

 思いっきりかぶりついた。
 血の味が口の中一杯に広がってくる。

「うあー、鉄っぽい。初の生モンスター食がこれとは……でも、意外と、食えるか」

 どうやら、ドッペルによって味覚までもが変性しているらしい。
 そして、最初に気になった血の味も、飢えというスパイスの前にはどうってことがなかったようで。俺はそのままガツガツと、骨すら残さず平らげた。

 そうして腹がいっぱいになってから、ドッペルゲンガーに戻ると、

「……腕、戻ったな」

 体が回復していた。鏡魔石に映る俺の情報にも、

『名称:グレン 種族:ドッペルゲンガー レベル1 状態:正常』

 と、しっかり正常だとの記載があった。
 どうやらメシを食うと体の回復はなされるらしい。

 とはいえ、人間から絶滅していたモンスターになって、正常というのはおかしい話だ。
 全くとんでもない状態にされたもんだ、と情報を眺めていると、

【種族スキル:・ドッペル
       ・ウォークライ】

 妙な文字が増えていた。

「なんだこりゃ」

 モンスターにスキルがある、というのは知っている。彼らが持つ特殊な体質や能力を活かした技能のことだ。
 たとえばドッペルゲンガーならドッペル、という相手の姿を真似るスキルを所持している。それは分かるが、

 ……ウォークライなんてスキル、ドッペルゲンガーは持っていない。

 少なくとも、絶滅したモンスターが載っている図鑑にはそう書いてあった。

 だとしたら何故、と思った段階で気付いた。

「待てよ。グレムリンウルフは、この種族スキルを持っていたはず……」

 それにウォークライとは、喉から魔力と共に声を発して相手を竦ませる効力を持つスキルで、狼や犬系モンスターが持っているものだ。
 となると、このスキルはグレムリンウルフから得たものと考えるのが妥当か。

 ……だとしたら、スキル取得の条件は何だ?

 ドッペルした事か。食べた事か。はたまたその両方か。

 試さねばならない、と思ったその時、

 ――ぽちゃん。

 という水音が背後から聞こえた。振り向けばそこには青色のぶよぶよとした物体がいた。

「ダンジョンスライムか」

 ダンジョンの生物の死骸に引き寄せられるモンスターだ。
 死んだものを分解して食事としている習性を持つ。

 時折生きているものにも襲い掛かって分解してこようとするが、動きは鈍いので比較的安全な方だ。
 また、その分解した栄養素を体内に含んでおり、その体を集めて治療薬を作る事も出来る、とても役に立つモンスターだったりする。だから、

「こいつで試すか。――ドッペル!」

 俺はスライムの事を視認して、ドッペルを使用した。すると、

【対象:ハイスライム lv1 状態:食事中 ドッペル可能。ドッペル(鏡映し)実行!】

 瞬時に俺の体はスライムになった。

 ……うわ、なんだこれ。ぶよぶよして動きづらい!!

 強制的に匍匐させられているような気分だ。
 グレムリンウルフの件でも思ったが、この能力は体そのものが変化するため、動きに適応するのに時間が掛かる。
 モンスターの体に慣れていないので、その辺りは当然だけれども、少しずつなれていかないと危険だろうな、と思ったあとで、

「とりあえず今は実験だから――ドッペル解除」

 ドッペルを解除して、人間の姿に戻る。
 そして鏡魔石を改めて視てみると、

【種族スキル:・ドッペル
       ・ウォークライ
       ・溶解液】

 しっかりと表記が増えていた。
 ドッペルするとスキルが増える。
 それで確定のようだ。

「スキルの使いどころはともかくとして……とりあえず生き延びるためには覚えておいて損は無いだろうな」

 このドッペルゲンガー状態では満足に戦えない以上、戦える体を増やしておくのは重要だ。

 よし、こうなったら、この辺りのモンスターを出来る限りドッペルしていこう。

 ――ただ、その前に。

「小柄な狼肉ひとつだけじゃ、もう腹が減ってきた……からな。うん、スライムに変化すれば、スライムだって食えるだろう」

 目の前でもぞもぞとしていたスライムをウォークライで竦ませてから、スライムの体に変化して頂いた。
 もうモンスター食に抵抗は無い。いや、嘘を言った。抵抗はあるけれど、そんな事を気にしていられる余裕が無い。

 ハイスライムの動きは鈍いので、食事はすぐに済んだ。口が無いので食事方法について少し悩んだが、溶解液をぶっかけてからスライム状の体で飲む込むようにすると消化できた。
 味は……困った事に感じられて、嫌な酸味を感じてしまったけれども腹は膨れた。

 なんにせよ、ドッペルしながら食べられそうなものを探していくと効率が良さそうだ。

 ……ああ、生存確率が上がって来た感じがするな。

 その事に喜びを感じながら、俺は周辺を探索していった。
続きは夜に更新します
●平行連載作品のご紹介
新作です。こちらの連載も応援して頂けると助かります!
元竜騎士が相棒の竜と共に、楽しく運び屋をしていく話です。
 最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます
http://ncode.syosetu.com/n4045ed/

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