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ドッペル転生~鑑定&コピー能力で目立たず着々と最強に~ 作者:あまうい白一

二章 出会う者と出くわす者

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第十三話 いつか、かつての報酬を受け取るということ

 俺と握手をしたリコリスはしかし怪訝な顔で、首を捻っていた。

「うーん、三百年ぶりの握手だけど、なんだか奇妙な感覚がするわね。ちょっとひんやりしているというか、霊体が触れてくるのとはまた違った感じがあるわ」
「まあ、一応、実体化しているからな。これでも実体化するのって大変なんだぞ?」

 今ではこんな握手すら普通にこなせるけれども、少し前までモノを一つ掴むにも苦労していたくらいだ。
 そう考えると、俺もこの体に慣れたものだが、まだまだ問題は残っている。

「そもそも霊体でも着れる服が無かったら、街中ではずっと実体化してなきゃいけないわけでな……」

 と、そこまで考えてから、思いついたことがある。

「そうだ。こういう服や武具が買い物できる所ってあるか? 出来れば買い物をしたいんだけど」」

 ミィルから受け取ったローブはあるけれど、それ以外にまともな装備をしていない。
 適当な人に変身すればある程度は解決できるのだが、やはり自前のモノを持っておいて損は無い。だが、ここまでの道のりで、それらしき店は無かった。
 だから場所を聞いてみたのだが、

「そうねえ。平和になって、武具屋もかなり縮小しているのよね。この辺りだと、ダンジョン探索者の養成所近くに一件あるくらいね。あとは街の外れまで行けばぽつぽつと小さな店があるわ」
「随分と武具屋が減ったな……」

 昔はちょっと歩けばすぐに武具屋が見つかるくらいには点在していたのだが、今はそうじゃないらしい。

「というか、探索者の養成所ってなんだ? 街の中央にあったギルド塔が、今はその養成所とやらになっているってのは聞いたけどさ」

 リコリスに尋ねてみると、彼女は窓の外を眺めた。
 高い建て物の最上階にある為、この部屋の窓からは街全体を見下ろす事が出来る。そして、リコリスの視線は街の中央にあるギルド塔に行っていた。

「あそこは文字通り、ダンジョンを探索するものを育てる場所よ。ギルドの直営でね、この街を防衛する兵士やギルド職員、その他新戦力を育てる要と言ってもいいわ」
「新戦力、ねえ。平和になっても、ちゃんと鍛えてはいるんだな」
「ええ……魔王が消えてモンスターの凶暴化が収まっても、出来るだけ戦力は整えておきたいのよ。何もしないでいると戦闘技術も衰えちゃうし……何より、ダンジョンから出てきて暴れる輩は出てくるから」

 リコリスは吐息混じりにそう言った。

「暴れるって、厄介なのがいるのか?」
「ええ。一部の竜種は、魔王が消えたのをいいことに暴れまわっているわね。あとは、魔王を超えるモノ、とか言って集落を荒らしている魔神衆なんていう知恵を持ったモンスターが集まった組織もあるわ」
「平和っぽく見えても、問題起こす野郎どもはどこでもいるんだな」
「ええ。しかも、その魔神衆は最近、人に化けることを覚えたらしくてね。警備が甘いと街中に入り込まれる事も多いの。国はその対応で四苦八苦してるわ」

 その言葉を聞いて、俺は眉をひそめた。人に化けられるモンスターは大抵、強力なモンスターばかりだ。

「街に入った状態で暴れられでもしたら、被害も大きいだろう」
「そうよ。だから、その為に養成所に予算を割いたりしているの。……街の運営者としては、そんなことしかできないんだけれども」
「そ、そんな。お母さんのお蔭で、この街の住人はとても強くなっているんですよ? 私も養成所で鍛練中の身で、とっても充実したサポートでどんどん強くなれていますし。周辺の都市からは育成システムも、育成後の進路も確保されていて素晴らしいと賞賛されているくらいですし! 」
「……ありがとう、ミィル。ま、こんな感じでね。どこも武具屋は縮減していってるのよ」

 なるほど、全体的に武具屋が減っているのか。
 この街に数軒の武具屋があるだけでも幸運だった、と思った方がいいのだろう。
 ともあれ、武具屋の事情は了解だ。
 場所も分かった事だし、後は物を買うだけだが、

「まずは金を得なきゃな。なあ、リコリス。ギルドの方で仕事って受けられるのか? 適当に稼ごうと思うんだが」

 そう尋ねたら、リコリスは一瞬目を丸くしてから、苦笑して首を振った。

「……相変わらず、貴方は生真面目ね。でも、稼ぐ必要なんてないわよ」
「うん? どうして?」
「だって、私が渡すもの」

 リコリスはそう言うと、この部屋に入る際に手にしていた革袋を渡してきた。
 中には、ずっしりと金貨が詰め込まれていた。

「これ……昔の感覚だと数十万ゴルドというか、数年は遊んで暮らせる額が入ってるんだけど?」
「ええ、金銭の価値は昔と変わってないからその認識で大丈夫よ。ぴったり三十万ゴルドが入っているわ。それを使って」

 三十万ゴルドと言ったら、ギルドの高危険度ミッションを何度も何度もこなさないと得られない大金だ。

「待て。俺は何も働いてないんだぞ?」
「いや、貴方は十分、それこそ一生分働いたでしょ。魔王を倒したんだから」
「それはギルドの仕事じゃないぞ」
「ええ、だからそのお金は私の懐から出したわ。ギルドとか関係ないから、遠慮はいらないわよ。三百年間でこれくらいは軽く出せる権力は身に付けたってことでね」

 リコリスは笑いながら言った後に、表情を少しだけ悲しそうなモノに変えた。

「……前は何もできないまま行かせてしまった罪滅ぼしって奴だから、受け取ってよ」
「罪滅ぼしって、アンタにとっては三百年前の事だろう? 気にする必要はないと思うぞ」

 それに、あの時の俺は勝手に一人で出ていっただけだ。罪悪感を持たれることでもないだろう。そう考えていたのだが、

「個人的な思いの問題よ。受け取らないっていうなら、時間停止させた貴方の実家に放り込んでおくだけにするけれど、どうする?」
「……そうだな。金が貰えるんなら頂戴しておくよ。何をするにしても入用だしな。買いたいモノもちょうどあったしな」
「ええ、そうしてもらえると私も助かるわ」

 俺としては最早どうでもいいことなのだけれども、これで彼女の三百年分の罪悪感が晴れたのであれば、良い事なんだろう。
 そう思いながら俺が革袋をしまうと、リコリスはほっとしたようにほほ笑むのだった。
●平行連載作品のご紹介
新作です。こちらの連載も応援して頂けると助かります!
元竜騎士が相棒の竜と共に、楽しく運び屋をしていく話です。
 最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます
http://ncode.syosetu.com/n4045ed/

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