挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ドッペル転生~鑑定&コピー能力で目立たず着々と最強に~ 作者:あまうい白一

二章 出会う者と出くわす者

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

19/36

第九話 信頼できる記憶と信用できない時間感覚

 ギルドの中は、とてもきれいに手入れされた空間が広がっていた。
 一階には受付があり、そこでのやり取りによって、各階層に向かう仕組みだという。そして、

「親分さん。報告ついでに、ギルド長と面会することになりましたので、五階に行きましょう」

 ミィルのそんな言葉によって、俺はギルドの五階まで足を運んでいた。

「ギルドの中にも魔族は結構いるんだな」
「この街には観光名所も多いですからね。多様な種族が集まるんですよ。昔はモンスターと呼ばれていた人も普通に暮らしていますし」

 なるほど、この街は、ギルドは随分と変わりまくっているようだ。

 昔ならばいくら友好的なモンスターだとはいえ、ギルドの長に合わせたりしなかっただろうし。その辺りの情報も今回で得られればいいな。

「さ、この部屋がギルド長がいらっしゃる執務室です。――失礼します、リコリスギルド長」

 そんな事を思っている間に目的の部屋にたどり着いたようで、ミィルの先導に付いていくように俺も部屋の中に入る。

 中には一人の、耳の長いエルフの女性が机に付いて待っていた。

 ……ん?

 そのエルフの姿に違和感を感じながらも、俺はミィルの後ろに立って、彼女たちのやり取りを眺めることにした。

「ようやく帰って来たのね、ミィル。大丈夫だった?」
「はい、どうにか生きて帰ってこれましたリコリスギルド長!」

 ミィルは元気よく報告している彼女が本当にギルド長らしい。

 ……そんな偉い人をモンスターに合わせて大丈夫なのか、ギルドよ。

 普通は両隣の部屋に防衛隊でも配備させておくものだが、そんな気配は一切ない。

 この信用のされ方は逆に怖いくらいなんだが、と思っていると、リコリスと呼ばれた女性はミィルのボロボロになった装備を見て溜息を吐いた。

「はあ……ミィル。相当、無茶をしたようね。戦闘訓練じゃないのだから、すぐに引きなさいと言っていたのに」
「は、はい、申し訳ないです。……今回はこの方々に助けてもらいまして、どうにか一名を取りとめました」
「そちらが、人語を喋り、人に敵対していないモンスターの方々?」

 彼女はミィルから視線をこちらに移して近づいてくる。

「今回はこの子を助けてくれてありがとう。ギルドの代表としてお礼を言うわ。――はじめまして。ギルド長のリコリスよ。挨拶とお礼が遅れて御免なさいね」
「ああ、いや、こっちこそ、ダンジョンから出てくるのに力を借りたからな。それと、はじめまして、ではないな」
「え……?」

 俺はリコリスと呼ばれた彼女の顔を見て、少しだけ安堵の気持ちを得ていた。そしてそんな気持ちのまま、俺はフードを取る。

 本来ならば、こんな状況で素顔をさらすべきではないのは分かっている。けれども、彼女には晒すべきだと思った。なぜなら、

「待って……嘘……。貴方、その顔……まさか、グレイ?」
「俺も驚きだよ。同業者だったアンタがギルド長をやってるだなんてなあ。久し振り、リコリス」

 彼女は、俺の知り合いだった。
 それはもう、農民時代に、また会おうと約束した顔があった。流石に少し老けてはいたが、確かにダンジョン探索者をやっていたリコリスその人だった。

「ほ、本物……なの? 魔王と一緒に、消えてなくなったって、聞いていたのに……」

 彼女は茫然と、俺の顔を見ながらそんな事を言って来た。魔王と共にいなくなったって、そんな話になっていたのか。
 まあ、生憎と一度死んだのは事実なので、間違っちゃいないだろうが、

「――まあ、本物だ。顔を奪ったモンスターとかじゃないぞ? そして……待たせたな、また会おうって約束を果たしに来たぞ、リコリス」

 だから俺は、とりあえずそういった。約束の事を口に出せば俺だとわかってくれる。そう思って伝えた。

 すると、リコリスは一瞬、目に涙を溜めた後、キッと眉を立てた。そして、

「何が、待たせたよ! 本当に三百年も待たせるなんて、どういう神経してるのよ! エルフじゃなきゃ死んでたわよ!」

 そんな、聞き捨てならない情報を喋ってきた。

「うん? さんびゃく、ねん?」
「そうよ! ……相変わらず貴方は人の顔を覚えないんだから。……見て分からない? エルフの私が、こんなに大人になるほどなのよ!」

 エルフは長命種だ。数千年生きる者がザラで、成長も遅い。
 確か、分かれた時のリコリスはまだ少女と言える体つきだったが、今の彼女は、大人びた体をしている。

 違和感があったのは、間違いじゃなかった。

 なんだったら街の風景に違和感を得たのも、間違いじゃなかったんだろう。
 そんな事を思いながら、俺はリコリスに訪ねた。

「もう一度、聞かせてくれリコリス。……魔王を倒したあの日から、何年たった?」
「だから、貴方が魔王と共に消えて、きっかり三百年よ」

 どうやら、時間感覚がちょっとおかしくなっていたというべきか。予想以上に、時間が進んでいたようだった。
●平行連載作品のご紹介
新作です。こちらの連載も応援して頂けると助かります!
元竜騎士が相棒の竜と共に、楽しく運び屋をしていく話です。
 最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます
http://ncode.syosetu.com/n4045ed/

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ