挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ドッペル転生~鑑定&コピー能力で目立たず着々と最強に~ 作者:あまうい白一

二章 出会う者と出くわす者

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

15/36

第五話 マップ(人)を手に入れました

 少女戦士が意識を取り戻すまで、十数分も掛らなかった。

「うう……ん、ここは……」
「よっ、起きたか」

 目を覚ました彼女の前に立って俺は挨拶をした。
 その瞬間、少女戦士の目がかっと見開いた。

「あ、貴方は……レイスッ……!?」

 そしてすぐさま膝立ちになって腰に手を当てる。なるほど、ダンジョンに一人で潜ってくるだけあって、反応は良いようだ。けれど、

「あ、あれ!? わ、私の武器は――」
「武器はこっちだ。念のため取り上げさせてもらった」

 彼女が腰に付けていた剣は、俺が持っている。それに気づくのがやや遅い。
 この反応からして初級者を抜けて、中級に差し掛かるくらいの冒険者だろうか。まあ、それはともかくとして、

「良い剣を使っているな。軽くて使いやすい」

 俺は鞘に入れたままの剣を軽く振るう。懐かしい感触だなあ、と思っていると、目の前の少女の顔色がどんどん悪くなっていた。というか、

「ぶ、物理的に物に触れられるということは、本当にレイスキング……。くう、こんなところで命を落とすなんて、お母様……先立つ不孝をお許しください」

 もはや絶望していた。結論を出すのが早すぎじゃないだろうか。

「おい、待てアンタ。慌てるな。よく考えろ。もしも殺すつもりなら俺はアンタをモンスターから守ったりしないだろ」
「そ、そうです、けれども。でも、なんでレイスキングみたいな上位モンスターが、同じモンスターを倒したりするんですか……」

 話しぶりからして若干警戒が解けたようだが、微妙に後ずさりをされている。どうにもモンスターとして見られているようだ。

 ……別に構わないけどな。

 そもそも、さっきからモンスターの種族を勘違いされているし。
 でもまあ、絶滅したモンスターだと自分から言ってやるメリットもないので、今はこのままにしておこう。

「まあ、なんだ? 俺は俗に言う、人に敵意を持っていないレイスってやつだ。ほら、こうして人畜無害そうな風体をしているだろ」
「ええと……半分透けていて、ぼろ布を纏われていると正直、どこの野盗の亡霊かと思ってしまいます」

 ぬう、見た目でアピールしてもダメか。確かに現在の装備品は、スケルトンが纏っていた布切れを羽織っただけだし。よくて世捨て人と思われるのがやっとか。

 ……ただまあ、勇者だと思われてないってだけで十分だけどな。

 今回の少女戦士の正直な感想のお陰で、なおさら実感が増した。いい事だ、と思っていると、

「親分。で、こいつ食っていいのか」

 レオが少女戦士を見据えながらそんな事を言い始めた。

「ひいっ!?」

 レオはそこまで怖い目をしていないのだけれども、少女戦士にとっては違うらしく、再び怯え始めてしまった。ううむ、これはいかん。

「いや、敵意ないから食っちゃダメだぞ、レオー」
「そうかあ……。まあ、親分が言うなら、今は食わないでおくぜ」

 と、尻尾を振りながら、レオは俺と少女戦士の前にお座りする。レオにとっては、彼女はまだ警戒すべき相手らしい。
 まあ、この護衛は悪い事じゃないので、そのままにしておこう。
 俺がすべきは目の前の少女戦士との話し合いだ。

「まあ、そんなわけでこちらから、君を害する気が無いというのが分かってもらえたと思うが、他に質問はあるかな?」

 怯える少女戦士に聞いてみると、彼女はごくり、と喉を鳴らしつつも、なにやら意を決したように訪ねてくる。

「親分……さん、で良いんですか? ええと、先ほどから気になっていたんですがなぜ私を助けてくれたんですか? 敵意を持っていなくても、わざわざグレムリンウルフなんて危険なモンスターに突っ込むリスクがあった筈ですが。人に敵意が無いにしても、何かしら目的があるのではないか、と思うのですが」

 おや、意外な質問が来た。
 どうやら、この子は結構敏いようだ。
 グレムリンウルフが危険という辺りはよく分からないけれども、まあ、目的の一つは話しておくか。

「ああ、俺はダンジョンの外に出たいんだけど、出入り口が分からなくてな。道を知っているなら教えてもらおうと思ったんだ」
「だ、ダンジョンの外に、レイスの貴方が、ですか?」

 また警戒された。
 けれど、ここまでは予想している。レイスだと誤解しているのならむしろ当然の事だ。だから、

「ああ、誤解しないでほしいんだけど、人を襲ったりするつもりはないからな。ただ、外に出たいだけで。だからマップを持っていれば、それを貰うか、写させてもらえれば良いと思ってるんだ」

 素直に本音の部分を語った。すると彼女はこちらの目をまっすぐに見た後、静かに頷いた。

「……分かりました。では、私が責任もって、出口まで付いていきます」
「うん? マップをくれれば別にそれでいいんだぞ? アンタにもこのダンジョンに入ってきた目的があるんだろうし」
「いえ、それよりも私が案内させて頂いた方が確実ですし。外に出て行った時、本当に何もする気が無いのか確認する意味も込めて、付いていかせていただきたいのです」

 最低限の警戒はしておきたい、というような口ぶりだ。けれども、その言葉に裏があるのを、俺は知っていた。
 そしてそれに気づいているのは俺だけではないようで、

「なあ、親分。こいつ体の中に魔力残ってないぞ。匂いで分かる。精神力や筋力もボロボロだ。……だからこれ幸いと付いていこうとしてるんじゃないか」

 レオがそんな事を言い始めた。

「なっ、そ、そんなこと……あります……」

 そして少女戦士もすぐに認めてしまった。素直な性格だ。
 いや、認める認めない以前に、俺はドッペルゲンガーの能力で、この子の状態は分かっていたのだ。

 ……【人間(女戦士) 状態:極度疲弊(魔力 0・体力 残り僅か)】なんて出ちゃったからなあ。

 俺がドッペルする瞬間、相手の体調すら理解できてしまう。情報が多いので短時間で見れる情報は限られているのだが、幸いにも今回は気絶した人間へのドッペルだった。
 だからしっかり確かめさせてもらった結果、この少女戦士は既にいっぱいいっぱいの状態だという事が判明した。

 けれどまあ、俺と喋っている時は気丈に振舞っていたので、不憫だから言わなかっただけだ。まあ、レオに指摘されて、認めてしまったけれども。

 この子は嘘やごまかしが出来ないタイプなのかもしれない、と項垂れている少女戦士を見ていると、彼女はよわよわしい視線でこちらを見て来た。

「え、ええと、先ほどと話は違って申し訳ないのですが、……親分さん。外まで私を連れて行っては貰えないでしょうか? このままでは生きて帰れる気がしなくて……も、もちろん、お礼は別にさせて頂きます!」

 そして、彼女は頭を下げて頼みこんできた。だから、

「ああ、分かった。んじゃ出口まで一緒に行くか」
「あ、ありがとうございます!」

 少女戦士は嬉しそうに礼を言ってくる。
 ただ実の所、意地悪な事を言ったが、元々そうするつもりだったりする。

 ……この子の装備は本当に軽かったし。

 俺がドッペル出来るのは、彼女の姿だが、鎧や武具などの装備品すらもドッペル出来てしまった。
 そして装備の取り外しすらも出来た。

 だからこそ、モンスターの攻撃に耐える力が弱い、とんでもなく軽い装備であることは分かっていた。更には、彼女が目覚める前に、彼女が持っていた道具袋の中身も見させてもらったのだが、

 ……この子は最低限の治療薬くらいしか持ってきていない。

 とてもダンジョンを探索するような装備では無かった。
 その上、グレムリンウルフ二体に追いつめられる程度の腕前で、こんなところに置いていったら死んでしまう。

 意地を張って残るというのならば置いていったが、そうでないのならば連れて行こうと思っていたのだ。

「よし、んじゃ出発と行きたいところだが……聞き忘れていた事がある。アンタの名前、教えてくれるか?」

 ドッペルでは相手の種族名は分かっても個人名までは分からない。だから聞くと、

「み、ミィルと言います」
「じゃあミィル、ダンジョンの外まで連れて行ってくれ」
「わ、分かりました。でも、あ、あの……私の武器は……」
「ああ、アンタはもう戦えないだろ? それなのに武器を持たれてたら、俺達が無駄に警戒するだけだからな。俺が預かっておく」

 こちらに武器を向ける体力も残っていないだろうし、彼女くらい敏くて素直な思考の持ち主ならば俺達を襲ってこない可能性の方が高い。
 ただ、もしも仮に武器を握って殺気の一つでも俺達に向けようものならば、今度こそレオが噛み殺してしまうだろう。
 だから、それを防ぐためでもある。

「ただまあ、身の守りについては俺達が何とかするから安心してくれ。そんじょそこらのモンスターには負けない程度には強いから。な、レオ」
「わん! 親分の言うとおり、この辺の奴らには負けないぜ!」

 俺とレオの言葉に戸惑いながらもミィルは納得したようで、

「は、はい。で、ではよろしくお願いします。親分さん、レオさん」
「おうし。それじゃ出発だ」
「分かったぜ、親分!」

 そうして、不安げな顔を浮かべる一人と、楽しそうな顔をしている一匹を連れて、俺達はダンジョンの外へ向けて出発した。
●平行連載作品のご紹介
新作です。こちらの連載も応援して頂けると助かります!
元竜騎士が相棒の竜と共に、楽しく運び屋をしていく話です。
 最強職《竜騎士》から初級職《運び屋》になったのに、なぜか勇者達から頼られてます
http://ncode.syosetu.com/n4045ed/

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ