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別れ

あの模擬戦の後も毎日スールと模擬戦をやった。

勝ったり負けたりもあるが俺の方が戦績はいいだろう。


1年程経った時、父さんが家に駆け込んできた。

俺と母さんはビックリしたが何があったか訪ねた。

「どうしたんです?そんなに急いで。」

「クレス、クイナ落ち着いて聞いてくれ。父さんは友人から事業を始めると聞き、商人からお金を借りる際の保証人になって協力してくれと頼まれた。」

父さんは沈痛な面持ちで応えた。

(あっこれあかんやつや。間違いなくあかんやつや…)


「最初は物珍しくて良かったらしいんだか長く続かず借金だけが残ったらしい…らしいというのは、その……友人が逃亡してしまった。」

「そ、それで?」

母さんが恐る恐る聞く。

「保証人として借金の返済を求められた…」

(やっぱりあかんやつや…うちは貴族でもないし兵士の給料はそこそこだが裕福という訳ではないし…)

「し、借金は幾らなんですか?」

恐る恐る聞いてみた。

「6000万バルだ…」

因みに貨幣の価値はバル=円で一般的平均所得は年400万バルだ。

うちは年600万バルらしいが貯蓄あるんかな…

「そ、そんな大金…うちにはクレスの養育費として年々貯めてましたがそれでもかき集めて1000万バルあるかないかです。」

「軍に掛け合ったとしても5000万バルはさすがに無理だしな…しかも身から出た錆だ。流石に頼れん。俺は奴隷になることは構わない。だがお前達に苦労はかけれん。お前達は直ぐにこの国から出ろ。」

とその時家のドアが開いた。

「オルトさん。お金の回収に伺わせて頂きましたよ。」

デブが出てきた。

「…ランガ」

このデブはランガというらしい。

話の内容からするに商人もしくは借金取り立て人なのだろう。


「では6000万バル頂けますか?」

「すまんがない。1000万バルと俺の奴隷落ちで勘弁出来ないか?」

「う~ん。協力してあげたいのは山々ですが無理ですな。」

(協力する気元々ねぇな)

「くっ。ならこの家も家具も全て渡す。だから妻と息子だけは勘弁してくれ。」

「だから無理なんですよ。こんな家売っても二束三文ですしね。まぁ、1つだけ方法はあります。」

「な、なんだ?」

ランガはそこで俺を見て言った。

「貴方の息子さんを買いましょう。フォース持ちにこの容姿。

かなりの額で売れそうですしね。」

「なっ。ま、待ってくれ。それだけは許してくれ。」

「オルトさん、選択肢は無いんですよ。私は優しい方ですよ?なぜなら借金の形として貴方達3人とも奴隷として取り立てていいんですから。」

「そ、それはそうだが」

「お願いします。この子だけは…」

両親が懇願するもランガは首を縦には振らなかった。


押し問答が続いたが一向に進展する気配がない。

最悪なケースはランガの気が代わり全員奴隷落ちするパターンだろう。

(はぁ~。ごめん父さん。母さん。)

「ランガさん。私が行けば借金は帳消しですか?」

「ん~?随分大人びてますね。そうですね。貴方にはそれだけの価値があります。」

「わかりました。なら私は貴方に買われましょう。それで借金は帳消しでお願いします。」

俺はランガに頭を下げた。

「だ、だめだ、だめだ。」

「そうよ。だめよ。」

両親が拒否するがもうこれしか無いだろう。

「父さん。母さん。今まで御世話になりました。また、お会いできる日を夢見てます。」

俺は両親に頭を下げた。


「話しは決まりましたね。では、早速ですが参りましょうか。これを首に着けなさい。これを着けると魔法の制御が上手く出来なくなります。逃げようと魔法を使っても思い通りいかず自分に返って来ることもありますから…滅多なことは考えない方がいいですよ?」

「はい。」

首輪を着ける。

確かに丹田付近の魔力が乱れている感じがする。

これじゃ魔法は無理だろう。

両親は泣きながら崩れ落ちていた。

馬車に乗り込もうとしたときアニマさんとスールが見ていた。

「どっか行くのか?」

「…………」

アニマさんは気付いているようだ。

スールは普通に話し掛けてきたのでちょっと救われた。

「あぁちょっと修行にな。お前も頑張れよ。」またなとボソッと呟き俺は馬車に乗り込んだ。

馬車が進み出す。王都に向かっているようだ。

後ろからスールが何か言っているが遠くて聞き取れない。

すまんな親友。また勝負しような?

そんな事を考えながら自分のいく末を不安に思った。

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