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幸せな世界で
やがて、金色に輝く音符が止まった。
それと同時に、少年は少女に尋ねた。
「ねえ、君の名前は?」
少女は話しかけられて驚いたように肩を震わせたが。
「……ネ」
顔を真っ赤にし、うつむきながら呟いた。
「え…? もう一回――――」
「サ、サヨネっ!」
そう言うと、少女――サヨネは耳まで真っ赤になった。
「……もしかして、怖いの?」
少年がそう問いかけると、サヨネは目にうっすら涙を浮かべて言った。
「あ、ああああなたも、名乗って……く、ください……」
「ごめんごめん。僕はカイウ」
「カイ、ウ……?」
カイウはこっくりと頷いた。
「よろしくね。サヨネ」
名前を呼ばれて、サヨネは困惑したような表情をしたが。
「う、ん……。こちらこそ。カっ……カイウ」
嬉しそうに、照れくさそうに笑った。
その笑顔を見て、カイウも幸せそうに笑った。
―――――みんなが幸せな世界だった。世界が破壊される日が来るなんて、まだ誰も知らないで。―――――