来訪者
徐々に、足音が近づいてきた。
そして。
――シュロ。
「……っ!」
強く人形を抱きしめる。
小さくならなきゃ、自分が壊れてしまいそうだ。
「うーん……。こんなとき、なんて言っていいか判らないんだけどさー」
耳に届いた声は思っていたよりも若くて陽気で、この暗い塔の中には合っていなかった。
近くの樹がざわざわと揺れた。塔の周りに築いてきた景色が、突然の来訪者によって崩れてきたみたいだ。
「国王が急用って言うから代わりに来た者でーす。よろしくね」
瞼をそっと開く。
真っ白なシーツの中は、ボクしかいない平和な世界。
その外は塔の最上階。鉄格子に囲まれた、大きなボクの玩具箱。
さらに、その外は――――
「んー…出てきてくれないかな?」
敵だらけの真っ黒な世界。
それから、数分が経った。いい加減、この恐怖にも慣れてきた。
相手も、何も反応を示さない。
【神の視点】を使って心を読み取ろうかと思ったけど、【神の視点】を使っている間はボクの体を動かすことはできなくなる。この状況で身動きが取れなくなるのは……。
《こーん、こーん。》
冷たい音が響いた。
「へえ……。弱そうだな」
多分、鉄格子を叩いたのだろう。
《こーん、こーん。》
「じゃ。失礼しまーす」
ボクが言葉の意味を、
《ぎちぎち》
理解する前に、
《ぎちぎち》
奴は、
《ぎち…ぎち…》
「っ……ははは! 案外脆いなっ、……これ」
息を切らしながら。
笑いながら。
鉄格子を破壊して。
ボクの世界に入ってきた。




