歌姫の想い
☆
カイウとサヨネが共に旅に出て数年が経ち、カイウは15歳、サヨネは14歳になったある日。
「……サヨネはいつまで旅を続けるつもりなんだ?」
突然の質問に、サヨネは少し考えてから言った。
「生きてるうちは、いつまでも。私の歌でたくさんの人を幸せにしたいから」
サヨネは旅を始める時、カイウに約束した。『不思議な力を使わず、人々を幸せにする』と。それからサヨネは力を使わなくなった。
「……カイウはずっと一緒に、いてくれる?」
カイウは驚いたような、戸惑ったような表情になったが、
「ああ。俺はずっと、サヨネと一緒にいる」
そう言って、サヨネの手を握った。
しかし次の日、カイウはサヨネの前から姿を消した。
サヨネはその町で歌い、人々を幸せにしながらカイウを待っていた。普段よりも滞在時間を増やして、彼を待った。
それに、サヨネはうすうす気づいていた。
カイウも不思議な力を持っていると。どんな力なのかは知らなかったが、今回のことは少なからず影響しているだろうと思った。
それでもサヨネが、その町でカイウと出会うことはなかった。
涙は、出なかった。
カイウが何故いなくなったのか、
どこへ行ったのか、
一人なのか、
誰かと一緒なのか、
何も知らないけれど、
いつか必ず、逢えると信じていたから。
☆
黄金の光にブレイカーが叫び声をあげ、膝をつく。苦しそうに顔に手を当て、その拍子に黒い布で覆われていた顔の半分が、露わになった。
「……っ!?」
サヨネは歌うのを止め、口に手を当てた。この顔を、彼女は知っていた。
「まさか、カイウ?」
「……サヨ……ネっ……?」
サヨネの言葉に、ブレイカーは息も絶え絶えに呟く。サヨネはブレイカーに駆け寄り、上体を起こさせた。するとほんの少しだけ、虚ろだったブレイカーの瞳に、生気が宿った。
「カイウ! ねえ、カイウっ……!」
言いたいことがあるのに、何も出てこない。
光がブレイカーを包み、だんだん体にまとわりついていく。
「ごめんね、カイウ! 私は殺意なんか、込めてないのに、どうして、あなたが……」
「……、サヨネは、悪く…ない。君の、想いは、ちゃんと、伝わった…から」
ポツリ、ポツリと降り出した雨が涙と混じって地面に落ちる。
「俺の、穢れた心が、君の、綺麗な想い…に耐えられなかった……だけだ」
たくさんの光がブレイカーに集まる。もう時間がないと、サヨネは感じた。
「カイウ。いつまで経っても、私はカイウが大好きだから……! カイウのこと、忘れない」
「…俺も、サヨネを…ずっと愛してる……。そ、れか…ら」
『アリガトウ』
口がそう動いて、ブレイカーは光と共に消え去った。
雨は、サヨネの気持ちなんかお構いなしに、降り続けた。
次から新章突入です。




