小悪魔チックな神夜ちゃんと、なんか翻弄される男たち
書き方は簡単、フリーダム!
ここからすぐに終わらせていく……!
神宮司くんは目の前でベンチを座り、時節こちらへと視線を向けた、口を開いたり閉めたりと、まるで餌をねだる金魚のような動作をした後に、意を決したように、立ちあがった、
正直、ずっとこのまま葛藤してろと言いたかったが、何も言わないでおく。
「僕は……貧乏だったんだ……」
神妙な顔で、神宮司くんは俺へと語り始めた。
今の父と血のつながりはあって、母は言ってしまえば愛人だったという話だ。
母が死に、父は神宮司くんを引き取り、そして育ててくれた、贅沢に慣れて、君――つまり神夜だ、に言われるまで、昔の大切なものを忘れていた、ということだ。
そして、懐から小さなアクセサリーを見せてくれた。
「僕の……僕の、お母さんからもらった誕生日プレゼント、貧乏でね、誕生日プレゼントなんてものは、これしか貰ったことはなかった」
嬉しそうに涙を流しながら、神宮司くんが胸にアクセサリーを抱いた。
その様子を見ていると、イケメン爆発しろ、とか思っていた自分が矮小に見えてくる、いや、実際矮小だけど。
「『たとえどんなものでも、私を幸せにしてくれたものを、そんなものというな!』か……そうだよね、これも、僕を幸せにしたものだ、どんなものでも、大切にしなきゃいけない、ありがとう、君に言われて、僕はやっと気づけた」
「いや、貴方はずっと気づいていたはずさ」
「え?」
――勝手に口が動いた。なんだろう、この体、なんか災難を呼んでくれるんだけど。
「貴方は、私の一言でそれを直視しただけ、貴方は心優しい人だね」
――勝手に手が動き、そして神宮司くんの手を握り締めた。もうどうにでもなれ、とニコリと笑みを浮かべた、ぶわぁっと神宮司くんの顔が赤くなっていく、――なんだろうか、その――死にたい。
「ぼ、僕、神宮司、神宮司友哉っていいます」
「月野神夜、友哉――良い名前だね」
――神宮司くんの笑顔が花開いた、イケメンの笑顔は愛らしかった、妬みゲージばかりが上がった。
「おっと、もうすぐ授業がはじまりそうだ」
近くに立っている、柱の上にある時計を見る、時刻は授業五分前だ。
よし、帰るぞ、さっさと帰るぞーと歩き出して、くるりと踵を返して、神宮司くんを見た。
「またね」
この体のやることが俺の趣味を体現している、訴訟も辞さない。
くるりと回り、いたずらな笑みを浮かべ、明るい声でそう言った、スカートはふわりと揺れ、手は体の後ろで握り合っている。
「は、はい!」
――完璧だからこそ、死にたい。
SAN値がグッバイし、心の中で白目をむきながらも、途中でさっさと変身解除して、俺は教室へと直行し――
「あれ?俺のウーロン茶は?」
「黒ウーロン買ってねぇ!?」
面倒事の理由である、勇人の頼まれごとを忘れていたことに気づき、全力疾走を開始した。
学校では何事もなかった、お嬢様学校の生徒会長様と出会うことがなかった幸運に、ほっとしながら帰宅する、時刻は4:35、少しばかり外の景色が薄暗くなっていた。
5時から刑事ドラマの再放送だ、ほぼ毎日やっているが、最近は同じ回ばかりやっているために、最近では見なくなってしまった、しかし今朝の新聞で、今日の回は見たことがない回だという、これは三週間ぶりだと、テレビを着けて始めるのをまっていたときだった。
「こーちゃーん」
甘ったるい母の声が聞こえた、しかし母は元ヤンである、こんな声を出すときは面倒事を押しつける気満々の時だ。
よし、これはどこかへ隠れるべきだ。
「幸助ぇ……?」
「はい、なんでしょうかッ!」
少し声が低くなった、反射的に声を返してしまうほどの威圧感を食らい、手をピシィッと頭上に上げた。
チキンハートな自分が嫌になる、嫌になろうと勝つ努力はしないが。
「しょうゆと、お肉、牛逢引肉300g買ってきて?」
「再放送終わったらでいい?」
「ダメ」
「じゃあ無理だわー、俺無「あ゛?」やったぁ!いくらでもいっちゃう!」
もう、なんだ、なんだこれ。
雷直撃した息子にやることではないような気がする、というよりそうだ。
母の息子愛の薄さに泣きながら、俺はお金とエコバックを受け取り外へと飛び出した。
時刻は40分、近場のスーパーへは走っても片道10分、往復20分だ。
刑事ドラマは冒頭にストーリーが詰まっているといっても過言ではない、遅れたくはない、遅れたくはないのだ!
しかし――神夜さんに変身するということは、つまり災厄を呼ぶかもしれないということだ、これ以上精神が削られてなるものか!欲望になんか負けない!
……欲望には勝てなかったよ……。
神夜さん状態で全力疾走、片道3分で到着。息も上がってはいない、これならさっさと選んで、神夜さん状態で帰れば良いわけだ。
スーパーの自動ドアをくぐり、肉売り場を探すことにする。
久しぶりにきたもので、どこにあるのか忘れてしまった、キョロキョロとあたりを見回し――
「か、かぐやしゃん!」
――見なかったことにしようか――。
頭の中で葛藤するが、頭の中の我々が全員否決した、すでに一秒目が合ってしまった。
「お、お久しぶりです、お元気でしたか……?」
お前、昨日あったよな?
「ふふっ、昨日振りだね、今日はどうしたの?」
「えっと、母さんにお使い頼まれて……妹と」
へぇ、沙弥ちゃんもいるのか。
そう思って周囲を見回すと、少し後ろに、沙弥ちゃんがいた。
長い黒髪の、かわいい女の子だ。
少しもじもじとしていた、あぁ人見知りだったな、と思い出した、既に長い付き合いとなるので、忘れてしまっていた。
「こんにちは」
「こ、こんにちは……」
笑顔で挨拶すると、返してくれる、新鮮味がある、純粋な子供っていいよね!ロリコンじゃないけどね。
トテトテと近づいてくる姿がキュート、俺がロリコンなら攫っている。
頭をなでるとニパッと笑顔を向けてくれる、おっとよだれが……ロリコンじゃないけど。
「にー、ちゃ」
「ん、あぁ、神夜さん、兄ちゃんの知り合いだ」
「かぐやさん?おひめさま?」
「うぅん、普通の女子高生だ、君のお名前は?」
「さやだよ!」
ピースで嬉しそうに自己紹介。
こんなもん、涎たらさないほうがありえんわ!ロリコンじゃないけどね。
沙弥ちゃんは小学5年生だが、障害を持っているために、少しばかり成長が遅い、学力はそこまで劣らない程度ではあるが、言動が同年代よりも少し幼い。
「そう、沙弥ちゃんかー」
ニコニコしながら頭をなでていると、沙弥ちゃんもニコニコを返してくれた、鼻血でそうだ……ロリコンじゃないけどな。
おっと、時間がやばい、勇人に断ってさっさと帰らないと、そう考えて勇人を見ると、おびただしい鼻血を垂れ流しながら嬉しそうに笑っていた、なんだ、ものすごく怖い。
「ど、どうかしたのかな」
「天使……いや、女神がみえまして……」
「ち、血が足りないのなら病院にいったほうがいいんじゃないのかな?」
さすがに幻覚みるようでは、帰り道怖すぎるぞ……
「そ、それで、神夜さんは何を買うんですか?」
「しょうゆとお肉だけど?」
「料理できるんですか?食べたいなぁー食べたいなぁーおなかすいてきたなぁー」
後二時間で御飯だというのに、何をそんなに物欲しそうな眼で見ているのやら。
「お菓子とか、買い食いをしちゃダメだからね?家に帰ればご飯だろう?」
「ま、まぁそうですけど……」
「まぁ成長期だもの、お腹がすくのはわかるけど……」
すっと、人差し指を立てて、ずいっと上半身を前に出し、勇人の口元にあてる。
じっと勇人の眼を見る、身長差により、見上げる形になった。
「買い食いはあまりしちゃ、ダメだよ?」
――男の時もこれは言うだろうが、神夜状態だと、何故か俺が求めるものが反映する、やっと理解した。自然に体が動いてしまう。
「じゃあね、沙弥ちゃんも、またね?」
最後に沙弥ちゃんの頭をなでて、すぐにお肉と醤油を取って、会計を済ませる、背後のスーパーで、勇人の気色の悪い笑い声が聞こえたような気がしたが――まぁ、気のせいだろう。




