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乙女チック勇人くんと死にたい神夜ちゃん

そもそも…何故山田幸助は『強い少女』を理想としたのでしょうか。

普通であれば、男の理想と言えば優しい女性や、引っ張ってくれる女性。

強い女性というのは精神面であり、肉体的に強い女性なんて考える人は少し特殊です。

この物語の主人公は特殊性癖を吐いてはいるけれど、基本思想は普通なんです。

そして勇人の家族との物語――



―――この話が最終回につながる気がする。


おびただしい鼻血を流し続ける男を担ぐ女、なんたるシュール。

恐ろしくもこの状態は俺が原因。

簡潔的に説明をしよう。


下着姿の女版俺を見た勇人

鼻血ブー


なんたるカオス、何故鼻血を出したのか原因が確実に俺ということがわかるがもはや俺にとって混乱しかない、何を考えて鼻血を出した、もしや下着姿だけで鼻血をだしたか、大丈夫かお前、純情とかそういうレベルを超えている。

お前パンチラだけで毎度鼻血を出して気絶するつもりか。


「保健室に到着と。」


一階保健室、少し職員室から離れている程度だが、鼻血を出している男を担ぐ女なんてシュールな姿を見られたら人の視線が集まってしまう。

かといって男に戻って、勇人がすぐに気が付いてしまったら、『何故俺がいるんだ』と聞かれてしまう。

そうなるとどう説明すればいいのか、俺がたまたま通りがかったといえばいいのだろうか…今更に考えてそう答えたほうがまだよかった気がする。

いやっしかし、うん、気絶してなかったらバレてしまうことだったし、これが一番の方法だったはずだ。


「先生いらっしゃいますか?…よしいない」


外にでも出ているのだろうか、好都合には変わりない。

意外と運が回ってきていることにため息をついて、俺はすぐに勇人をティッシュを大量に手に取って鼻血を拭き、ベッドに横たえる。


「そういえばこいつなんで…ってこれか。」


ノートを見つけてみる…確か昨日の提出物だったはずだ、こいつをみつけて忘れ物をしたと思ったのだろう、やはりこいつは俺の最高の友人だ。


「ありがとな。」


そうボソリといってみて気恥ずかしさに少し顔をそむける、こんなの俺のキャラじゃないだろう、なんて思ってみる。


「おっと、さっさと変身を解かないと」


「う…ん…?」


おいこら我が親友、お前は俺に対して何か恨みでもあるのか、いつも間が悪いぞこの野郎。


「おはよう。」


とは言わずに俺はニコリと笑って挨拶をする、そうすれば勇人は気が付いた瞬間に顔を少し赤らめ、布団の中に顔をうずめた後に少し顔を出して上目使いで俺を見る。


――うん、キモい。


馬鹿野郎違うだろう、上目使いだと?その状態で、顔を少しだした状態で、その状態で野郎の上目使いだと、何度でも言おう、馬鹿野郎違うだろ!。

それはかわいい娘が好きな男の前でやるべきことだろう!何をやりたいんだお前は!


…と、叫びたい気持ちはあったが、それを叫ぶつもりはない。

勇人が何故こんなにも恥ずかしそうに――あぁ、うん、裸見たからか。


すぐに思いいたって自分も赤面する、畜生、なんで俺はギャグに走ってしまったのだろうか、あんなことをしなければ出会うことなどなかったというのに。


「す、すいません裸を――」


「言わないでくれないか…」


何度も裸を見られたということを聞かされれば、精神的な部分がガリガリと削られていく音が聞こえてくる。


「誰にも、言わないでよ…?」


人差し指を立てて、口に持っていく、いわゆる『しーっ』と子供にやるような形だ。

…後々考えてみて、このしぐさは俺がやってほしい仕草だという結論に至って羞恥心がいまさらながら芽生えてしまったことは言うまでもない。


「ひゃひぃっ」


何その叫び声、顔を真っ赤にして布団にうずめるな、やめてっ俺に恋しているように思えてならないのその仕草。


「そ、そそそそういえばっ、なんであそこにいたんでしゅか?」


惜しい、もう少しで完璧に言えたはずなのに――と思ったら、言われた言葉が異常なほど俺にガンと負担を与えてくる、勇人…恐ろしい子。

聞かれてどう答えたものかとしどろもどろになりかけたが、真顔で俺は答えた。


「間違えたんだ。」


「え?」


「間違えたんだ。」


「あ、はい。」


秘技・真顔で無理矢理押し通す。

どんな嘘っぱちでも真顔で『普通に考えてそうだろ?』的な雰囲気を持たせていれば相手は黙る、黙らない相手だったら困る、というかそういう相手だったら墓穴を掘って俺の人生が真っ暗闇の谷底へ突き落とされる。

しかし勇人はそこまで『わからないものはわからない』と押し通す性格でもないので、押し通せるわけだ―――



チョロイ



「というか、なんで君は鼻血を噴き出して倒れたんだ…?」


「……」


え、なにその沈黙怖い。

顔を布団からあげてチラッとこちらをみたと思えばすぐに顔を布団に埋める、さらに深く深く埋めたと思えば、ボソッと一言。


「…死にたい…」


何があったんだお前に。

神夜ちゃんイヤーは地獄耳、なせいで聞こえてしまったその言葉に動揺を隠せない。


「お、落ち着くといい、もうこの話題は終了だ、ゲームセット!」


とにかくこの話題を終わらせねば、そう思い無理矢理にも話を終了させる。

勇人は俺の言葉にホッとした様子だった…セーフだ。


「あ、あの…お名前なんていうんですかいな…?」


何その口調、もう心でツッコみ続けて口から出そうだ。


「私の名前は月野神夜だよ、君の名前は?」


――言った後にとても羞恥心が湧き出してきた。

もうこいつといるのやだ、羞恥心が湧き出し続けて死にたくなる。

なんで親友に『ぼくのかんがえたDQNネーム』を暴露しなきゃいけないの。


「ゆ、勇人っていいます…いい名前ですね…なんていうか、かぐや姫って感じで…」


あらやだこの子、俺に対して羞恥心を上げる技を繰り出してきたわ、だがすまないな、その攻撃――今から屋上からダイブしたくなる程度にしか効いていないぞ。

…つまり効果は抜群だ。


「うん、私もこの名前には誇りを持っている――あぁそういえば君の友達の幸助くんは今トイレにいってるんだよ、あと少しで戻ると思う、起きたんだし、すぐに授業に向かったほうがいいと思う。」


「え、あ、はい」


「それじゃあね、勇人くん」


そういって俺は即座に外に出ていく、そして変身解除をした後にすぐに戻っていく。

保健室へと入っていき、勇人を見つけるとすぐに手を上げて――とろけている勇人をみて固まった。


「うへへ…」


「……お前大丈夫か?」


「こーすけぇ…俺、理性がふひゅひゅ…」


「もういいから、起きたんならさっさと授業いくぞ!」


「おう!」


「うお!?いきなり元気になるな馬鹿!」


「どうしろってんだよ…」


そう会話して二人して笑う、そして保健室を出て、教室へと向かう。

階段を上ろうとした時に、俺はそういえばと思い出して、勇人をみる。


「ノート、ありがとな。」


「何言ってんだよ、お前が困ってたら助けるのが俺だろ?」


「あぁ、お前が困ったら俺が助けてやるよ。」


そういって笑って歩き始めた、…先生のお説教が待っている。







学校も終わり、夕焼けが世界を照らす時刻。

我が家へと到着してのんびりとしていると、妹がやってくる。

――昨日まではあまり話さなかったというのに、何故こうまでも近づいてくるのか、よくはわからないが家族としては良い傾向にあるのだと思う。


「学校で女性化した?」


「…なんでわかったんだ?」


「メイド服。」


精神状況がヤバい、一言で心へとミサイルが直撃して耐久力が根こそぎ奪われた気分だ。


「French maid? I don't know!?」


「落ち着いてよ、それはもういいから、それでどうせ色々とあったんでしょ?」


概ね正解だった、超能力でもあるのではないかと思うぐらいに。

ため息ひとつはいた後に、何があったのかを淡々と答える。

着替えようとしたら勇人が現れたこと、そして鼻血を出してぶっ倒れたこと、顔を真っ赤にして掛布団に顔を隠しながら恥ずかしそうにしていたこと。

それらを話し終えて妹を見ると、口をポカンと開けてこちらをみていた。


「…兄さん。」


「ど、どうしたんだ?」


「それ…いやなんでもない。」


妹が何かを言おうとして口ごもる。

妹が言わぬべきだと思うなら何も言わないが、とてつもなく気になるのは人間の性だ、そんな心を必死で抑える。


「う、うんじゃ私行くね、兄さんはメイド服でもきてターンして人差し指を口に当てながらおかえりなさいませご主人様とでもやっててね!。」


「え、あ、う…ってなんでそこまで俺の趣味を知っているんだお前は!?」


去っていく妹に叫ぶが、それには答えが返ってこなかった。

メイド服を取り出してみて、ため息をつく、不完全燃焼で気になってメイド服を着る気にもなれない。

自室のベッドへと倒れこみ、天井を見る。


「色々と変わってくるな。」


この二日でたくさんのことが変わった。

――次は、何が変わってしまうのだろうか。

そう考えてみて、うれしくもあり、悲しくもあった――。

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