男ってヤツは欲望に忠実でなければ腐っちまう
お化け屋敷での俺の叫び
「ヤッフー!」「イヤッハー!」「マァリオ!」「ヤッ」「フー!」
「マンマミーヤ!」
どこのマリオだ、そういつも突っ込まれる。
「…雨が降りそうだな。」
身体能力を検査していると、どこをどう間違ったのか空中を足場にするという奇妙な力に目覚め、常識という概念を砕かれた妹は「アハハハァッ!」とちょっとハイになって笑いながら俺に乗って空をとんだ。
やり続けていると、さすがに疲れるのか、疲労を感じて着地して上を向くと、鉛色の空が見えた。
「兄さん、きっと雨雲吹き飛ばせるよ!」
「さすがにできねーよ。」
女性化した俺をどういった目でみているんだよ、と問うことはできなかった。
頬に冷たい感触、雨が降ってきたのだ。
「…帰るか。」
「うん。」
妹がこのやり取りをやった後、少し嬉しそうにしていたのが少し気になって、そしてそういえばと思い出す、
昔妹と疎遠になる前に、よく遊んでいた時期のやりとりだったのだ。
家へと走り出すと、少しずつ雨が強くなっているのを感じて、足を速めた。
家について、濡れた体をタオルでふくと、濡れて透けた妹の体が視界に入る。
「…フッ」
「何故今鼻で笑った。」
「いや別に貧相だなんてロプッ…何故今ビンタした。」
「なんでもない、そういえば思ったんだけど…兄さんって女性で何をやりたいの?」
「……」
そういわれて考えてみると俺が女性化してやりたいこと、というのを思いつかなかった。
なりたいという願望はあったが、やってみたいということはない。
強くなりたいと思って、強くなって何をやりたいのか抜けているようなそんな状態。
とても不安定な状態なわけだ、どっちに転ぶかもわからないような。
「考えとく。」
「まぁせっかく手に入れたんだから役立たせてね。」
そういわれて、母の手料理を食べて、風呂に入って、そして机の前で考え続けてでてきたことを紙に書き綴る。
その1
メイド服を着てクルッとターンして嬉しそうに『おかえりなさいませお嬢様』
備考
ご主人様ではなくお嬢様であることが重要。
題名をつけるなら『お嬢様大好きメイド』
…俺の頭が大丈夫だろうか。
どこかネジがぶっ飛んでないだろうか、ネジどころか中枢機関がウィルスによって理性という枷が外れてはいないだろうか、思わず自分の頭の心配をしてしまうほどだ。
床をネジが落ちてないか見てしまうこと自体ひどく心配してしまった。
その2
ショタっぽい男の子の助けに入る万能お姉さん。
備考
ショタっぽいことが重要、助けなくちゃいけないキャラが重要。
題名をつけるなら『クール万能お姉さん』
「ウオオオオオ!」
とりあえず書いたノートを床に叩きつける。
そして踏んだ後に俺は部屋に置いてあるパソコンの前に行く。
「俺は変態じゃない。」
そういってお気に入りから通販サイトを開き、検索キーワードに『メイド服』を入力。
マウスで検索をクリックすると、いくつかの画像が出てくる。
「俺は変態じゃない。」
さらにそういって、メイド服から気に入ったものを数点掘り出してくる。
在庫を確認して、在庫があるものから吟味していく、値段をみる、数万円もするのか。
「俺は…」
しかし俺は止まるつもりはない、気にったものをクリックして一点購入、サイズはどのくらいだろうか。
SかMかと思ったら、メイド服には色々と自分で手直しできるものが付いていることに気づき、Mを選択。
「俺は、メイド服コレクターなだけだ…」
どっちにしろ変態だ。
お急ぎ便で購入したと思ったら、朝についた。
到着した時に代引きを選択したのでお金を払ったらすぐに手に入った。
母にでもお願いしようかと思って、購入をした後に中身を見られるのではないかと内心ハラハラしていたのが馬鹿らしい。
そして宅急便と通販サイトの行動が迅速すぎることに驚きながらも俺は箱から取り出してみる。
袋で梱包されていたのでそれを丁寧にはがして、取り出してみる。
それを眺めて…少し匂いを嗅いでみる。
「…新品のニオイだ。」
当然だ、何を想像していたのだろうか、おそらく知り合いに問い詰められていたら俺は涙を流しながら逃げ出していたのだろう。
かすかにツンとくる臭いを感じた後に、俺はゆっくりと袋に詰め直して、学校用のカバンに入れた。
意外に大きいものなのですんなり入ってしまう。
「…学校に持って行ってみよう。」
昼休みなら隠れながら着ることぐらいできるだろう、などと思いながら俺はメイド服を持っていくこととする。
欲望を隠しきれない男の行動が何を起こすのかなんて、考えてはいなかった。
それからはいつも通りだった。
メイド服を持っていると言うアブノーマルな感じのスリルを感じつつも、いつも通り俺は勇人と会って馬鹿な話をしながら昼休みが来るのを待った、そして昼休みが来てから、俺は勇人とダベりながら飯を食べて、すぐに席を立った。
「ん?どこいくんだ?」
そう聞いてくる勇人にトイレと言いかけて、じゃあ俺も行くなんて言われてしまってはダメだと思い、こいつがついてこなさそうなところを考える。
…あそこしかない
「職員室だ。」
「何かやったのか?」
「ちょっと提出物が遅れちゃってさ。」
そういって笑って俺は外へと飛び出していった。
「ん、おい、これじゃないのか?お前が昨日遅刻した授業に提出する…あぁもういっちまったか。」
外に飛び出していったために、後ろから俺を呼ぶ勇人の声は聞こえていなかった。
そして職員室にいくふりをして、職員トイレへと入る。
むろん男性用だ、女性用はこの状態でいけるわけがない。
何故職員トイレかというと、職員室近くには新しく作られたトイレがあり、先生たちはここにはよりつかないということからだ。
個室に入り、持ってきたメイド服を取り出して装着する、男の状態でだ。
何か俺の心の奥底から湧き出してくるものに負けて、思わず個室のドアを開けた、誰も入ってきている気配はないので大丈夫だろう。
スススッと鏡の前に立つ…
鏡を見て何故か死にたくなった。
この精神攻撃はヤバイ、そう思ってすぐに俺は
「変身」
と言って、女性化する。
さて、メイド服版の御開帳――と思ったら、執事服を着ていた。
「…は…もしかして。」
女性化すると男物→女性ものになるのではないのではないかと考えてみる、そうだ反転するのだ、男物が女物になり女物が男物になる…そう考えてみるとこの現象は理解できる。
そもそも女性化すると男物が女物になるということよりも、反転するといったほうが不思議ではないような気がする。
…いや、うん、ごめん…女性化する事態異常だよね。
「ある意味便利で、ある意味不便だな。」
そう独り言をつぶやいてから俺は変身解除をする。
そしてメイド服を脱ぐ、めんどくさいが変身した後に着るしかない。
「変身」
個室に入り、制服を着て、再度女性化する。
するとこの高校の女性用の制服に変化して、俺は女となる。
「…脱ぎ方がよくわからないな。」
そういえば、俺は女性用の制服なんて着たこともないし、着たことがあるなんていったらもはやそれは特殊性癖となる、…つまり女装癖があるということだ。
悪戦苦闘しながらもやっと脱いで、俺は下着姿(女ver)となる。
再度湧き出してくる何かに耐えかねて俺は個室を飛び出す。
そして俺の体をみて――
「よっしゃ!」
何度このネタを引っ張るんだコイツ。
その時だった、トイレのドアが開いたのは。
ヤバイ、そう思って人物を確認する。
速攻出なければいけないというのに人としての本能は侵入者の確認へと動いてしまった。
そしてその姿を確認した時、俺は固まった。
勇人だった。
「…え?」
勇人は俺を見て確認する、女verの俺、下着姿だ。
赤面するかもしれない、そういえばアイツ女性苦手という新事実があったか、これが原因で悪化するかもしれない――そう考えた時。
「バビロンッ!」
赤いものが空中を待った、
「…え?」
アイツの鼻から赤い液体が噴出する――つまり鼻血。
変な声をあげつつ、あいつは鼻血をまるで噴水のように噴出し、そのまま倒れこむ。
「我が一生に一片の悔いなし…」
そうお決まりのような言葉を残して、鼻血を出しながら天井に向かって、Good jobと言わんばかりに拳を突き上げ、そのまま気絶する。…何やってんだこいつ。
「What is going on!?」
昼休み終了の鐘が聞こえた。
…俺は何度授業を遅刻するのだろうか。
これで3093文字。
USBを掘り出すと、黒歴史と言えば
『両思いになれば、相手側が呪いをもったひとを忘れる』
という呪いを持ち、その呪いによって能力が非常に高くなった大和くんの物語、…何故晒したんだろうか、
俺はマゾじゃない!