喧嘩の塊魂~そして戦争へ~
わーい青春だー(ギリッ
次の日、昼休みに
『見つかりました、いつ会えますか?』
と、メールを送ると、即座に
『明日大丈夫か、聞いてくれるかしら?』
と絵文字も何もない文章を返してきた。それに即座に返した。
『大丈夫だそうです。
あ、俺明日用事あるので、いないです。
とりあえずどこで会いますか?』
『そうね、そっちの高校の最寄り駅でお願いするわ』
『了解です』
そうして男女の会話とは思えないほどに、淡白なやりとりは、終わった。
さらに次の日、俺の姿は駅前にあった、駅前には噴水のある広場と、平日の夜はタクシーが行列を作っているタクシー乗り場がある、その少し離れた場所に、大きなデパートがある、今はその近くを歩いていた。
時刻は10時、予定された時間は11時になるために、1時間ほど早い。
何故そんな時刻にいる理由はというと、駅前にある図書館に用事があったからだ。
さっさと向かって、用事を済ましてしまおう、そう考えていると、ドンッと何かがくっついてきた、そして手の甲にサラサラとして何かが触れて、驚いて振り向くと、そこにいたのは、11時に出会う予定である、一ノ瀬さんがそこにいた。
そして、こちらの顔をしっかりと見ると、小さな声で、
「……少し、匿ってくれないかしら」
といった、何がなにやらわからなくて、混乱していると、後ろから金髪のお兄さんがたが近づいてきていた。
――一瞬で理解した、なんだこのドラマチックな展開は?
「逃げなくてもいいじゃない、遊ぼうよ」
会話もありきたりだった、自己紹介レベルだ、『オッス、俺ナンパ男です!』と言っているようなものだ。
「彼氏と待ち合わせしていたので……」
一ノ瀬さんの言葉に、心の中の俺が羽ばたいた。俺が100人、神輿を担いではしゃぎまわっている。
くっ……幾度となくホモ疑惑をかけられた、恋人いない歴=年齢の人生に、ついに終止符が――打たれるわけがない、はい、すいません、演技ですよね、求められているのは。
「はぁ?」
ナンパ男は俺をみて、ふっと鼻で笑った。
おう、校舎裏にこいや、と言いたいところだが、俺に言えるわけもない、チキン・オブ・チキンと呼ばれても決して否定できない。最近むしろ誇りに思えばいいんじゃないかと思ってる。
「釣り合わなくね?」
まぁ、天秤に乗せたらどちらか一方に偏ること間違いなしだが、お前に言われたくないわ!――と、いうのが夢だ。
「釣り合うとかじゃなく、好きなんです!愛してるんです!」
美少女に愛していると言われた――俺、今日死ぬんだろうな、ふふ、短い人生だった。
「だからさー、俺と一緒に来なよ」
一ノ瀬さんへと、男が手を伸ばした、その瞬間だ。
パチンッと軽い音が響き渡った、俺は気がつけばその男の手をはたき落していた。
いわば、蚊が自分の血を吸ってるのを見つけた瞬間に、張り手をかますごとく、反射的に行った行為だった。
しかし、その行為はやってはいけなかった、やった後に後悔した。
後の祭りであることは、言うまでもなかった。
「は?」
怒りのこもった声だった、背筋がゾワッとした。目の前の男が、大きく目を見開いて、俺をまっすぐと見ているのが見えた。
――よし、逃げるか。
チキンにプライドなどない!あるのは保身だけさ!
一ノ瀬さんの手首を握って、走り出した。
「おい、コラァ!」
それに気づいた男は、声を低くして、こちらへと叫んだ。
聞こえていないフリをして、公共の施設、今から行く場所だった図書館へと向かった。交番へと行くべきなのだろうが、駅の向こう側だ、それまで捕まりたくはないので、近場で、人が多い場所を選択した。警備員もいるし、棚が大量に並んでいる場所だ、迷惑だろうが、逃げられるだろうと考えられるのは、そこくらいしかなかった。
無事に図書館へと入った、持ち出し制限をするためのゲートを抜けて、奥へと向かっていく、チラリと後ろを見ると、男がこちらへと走ってくるのが見えた。
後ろから、キレた男の仲間が近付き、男の肩を掴んだ、沸点の低い男をいさめようとしたのだろう、肩を叩いて何かを言って――あ、殴られた。
その後は何故か喧嘩勃発した、――何やってんだあいつら?
殴り合う二人を諌めようとする仲間、殴り合っている一方が、何か叫んだ、ガラス越しなので聞こえない。
飛び火した、何か言われた奴がキレて殴り合い――コントか、これは。
「あの」
声をかけられて振り向くと、一ノ瀬さんがいた、素で我を忘れて見入っていた。
「手……」
手?と疑問に思い、自分の手を見ると、一ノ瀬さんの手を握りしめていた。
驚いて放し、
「ご、ごめんなさい」
と、謝った。
「いや、それはいいのよ、とりあえず警察呼んで、あれ、止めてもらいましょう」
既に落ち着き払っている一ノ瀬さんは、殴り合う彼らを見た。
いつの間にか全員が喧嘩をはじめている……このまま拡大して第三次世界大戦とかにならないよな?
とりあえず、外の光景をみてドン引きしている受付の人を我に返し、すぐに警察を呼んでもらう、警備員も彼らを止めようと躍起になっているが、巻き込まれているようだ。
警察が現れて、彼らを連れていくまでこの騒動は終わらなかった。
「……はぁ、落ち着いたわね」
図書館の前にある庭のベンチに、一ノ瀬さんは座り、先ほど自販機で買ったお茶を一口飲んだ。
飲みたい……何がとは言わないが。
「いや、本当にすごい騒動でしたね」
「……別に、敬語じゃなくてもいいわよ?年齢は私のほうが上だろうけど……」
「えぇっと、じゃあ、はい、ものすごいことになったけど、まぁ図書館にこれてよかったなぁ」
「ふふ、なんで棒読みなのよ?」
――女性と話すことが少ないからです。
苦笑いを返して、同じく買っておいたお茶を一気に飲み、半分を消費した。
「そういえば、何故図書館に?」
「欲しい本があって、まぁ小遣いも少ないから、ここで借りれるかな、と、さっき検索したら隣の市にあったんだけど……」
まぁ、そこまで遠くはない、自転車にまたがって20分そこらだ、明日にでも行ってみようか、そう考えていると、突然一ノ瀬さんが噴出した。
「あは、あはははははは!」
そして爆笑、なんだ、なんで笑われているんだ!?
困惑する俺、一ノ瀬さんはベンチの上でさらに笑い始めた。
「え?え?」
「いや、……あのね、パソコン、家にあるわよね?」
「まぁ、自分専用のものが」
それを言えば、一ノ瀬さんはさらに笑いを強めた。
俺は困惑するばかりだ。
「いや……あのね……普通にネット上で、ごふぅっ……ひーっひっひ……図書館の在庫とか、検索できる……ぶ……くっ……もう無理……お腹痛い……」
――え?
其れを聞いて、今までのことを考えてみた。
俺は図書館でしか検索できないと思っていたから、ここまではやくきたのだ、それでこの件に巻き込まれたわけだ。
それが普通にネット上でわかるとなれば、昨日には、ここの図書館にはないことがわかることになってしまう、つまり、ここには居ないわけだ。そうなると、巻き込まれることもない。
……なんだ、うん、すげぇ恥ずかしい……。
しかし、ここまで笑う、一ノ瀬さんの笑いの沸点の低さはなんなのだろうか、最初の凛としたイメージが瓦解していった。
「ふぅ……私としては助かったけど、なんていうか、運が悪かったわね」
「いや、助けられた人がいる時点で、運は悪いわけではないと思うけど……あぁ、すいません、用事があるので、もう帰らなきゃ」
「あぁ、そういえばそうだったわね、突き合わせちゃって悪かったわね?」
「いや、楽しかった、それじゃ」
時計を見る10時半だ。
何故用事があるから、といったのかは、用事について聞かれると、ごまかせるか不安だったからだ。
家への方向へと、小走りで向かって、その途中の路地裏あたりで、変身し、神夜状態となり、外へと出た。
そして足早に、待ち合わせ場所へと向かった。
11時の5分前に到着、一ノ瀬さんは既にそこにいた。
駅前にある噴水の前で立っていた、回りには3人ほどの男性が――
……なんでこの人こんなにナンパされるの?
仕方がない、額を抑えながら近付き、
「待たせたかな?」
笑って問いかけた。
声をかけていた男性陣が一斉にこちらを振り向き、俺の顔を凝視して、ニヘラと笑みを浮かべた。
その瞬間、その隙間を縫って、一ノ瀬さんの前に行き、手を取って走り出した。
――2度目の逃走劇だ。
今度の相手は追いかけてはこなかったようだ、駅の反対側に到着し、手を放すと、一ノ瀬さんは俺の顔を見上げた。
「……お姉ちゃん?」
――は?




