:box9 出逢い:
人は出会って成長すると言う。
では、僕ら道化師はどうだろう?
僕等はお互い、悲しみを共有でき、また憎しみを与えるために仲間を集めるが、
『友達』というのは良く分からない。
何故、そんなに『友達』と言う者が必要なのかな?
ニンゲンというのは分からない。
今日はそんなニンゲン『ミシェル』と新しい『友達』が出逢う御話―。
今日からこの学園に通う事になったミシェル・セルカールです」
「宜しく」と笑顔でミシェルは言う。生徒からはまばらな拍手が起きた。水はあくびをしながら挨拶をする。
「清 水です。仲良く、そして宜しく」
ひらひらと手を振り、テキトーに挨拶をすませる。セインは自分の番が来たので背をピシッと伸ばし、カクカクと言う。
「僕はミシェル様の専属使用人のセイン・ファルータです。どうか、宜しくお願いします」
水はカラカラと笑っている。
「緊張しすぎだよ、セイン。少しは落ち着きなよ」
ミシェルは苦笑いしながら、セインに耳打ちする。セインは首を振ると、ミシェルを見つめた。ミシェルはため息をつきながらも、先生に指名された席へと移動した。
しばらく先生が話をするとチャイムが鳴り、ホームルームが終わる。三人は集まって、どうやって墓を調べようか、話しあっていた。その時だった。
「きゃーッ!!」
女の子達の叫び声が聞こえる。何事かと声のする方へ三人は振り向くと、女子に囲まれていたクラリスとレオンがいた。
「おい!お前ら、クラリスに近づくなよッ!」
レオンの必死の叫びはあっさりと無視され、女の子達はきゃあきゃあ喚くばかり。
「クラリス様がこんな所に来るなんて・・・。一体どうされましたの?」
「ちょっとね。転入してきた子たちに用があって、ね」
クラリスはくすっと笑うと、ミシェル達の方へ視線を移す。ミシェルは少し、睨むとクラリスの方へ歩み出した。その後ろに水とセイン。女の子達をかきわけて、クラリスの前へ立つとにっこりと作り笑いをした。
「お久しぶりですね、クラリス。パーティー以来ですか?まさか、貴方がここの学生だとは思いませんでした」
クラリスはあくびをすると、頷く。
「うん。貴族の子はほとんどこの学園に入る事が多いよ。僕もこれでも、有名なレグナール家の息子として恥をかかないように入れられたしね」
ミシェルの笑顔がひきつる。
(自分で有名なっていうなよ!)
そんなミシェルにお構いなしにクラリスは水に目を向けた。
「あれ?この前のパーティーにはいなかったよね?新しい使用人?」
「あ、えっとそうです」
ミシェルは慌てて、頷く。
実は水の事に関しては事前にミゴールと話をしていた。
『いいかね?水は君の使用人、と言う事にしてくれないかね?』
『何故です?』
『学園も決して安心な場所とは言えんじゃろう。レッド・ピエロのメンバーが何処かに潜んでいるかもしれん。あやつらは自由に変装することが出来るからの。そんな時にバーク夫人の使用人が君とともに学園に来ているのは不審な事じゃ。ただでさえ、使用人が貴族の学校に行く事は極めて異例じゃからの。レッド・ピエロの奴らに不審に思われるじゃろう』
『・・・分かりました』
そんなやりとりをミシェルはしていた。セインもその様子を見て、クラリスに言った。
「一応、僕等もこの学校に特別に入れさせてもらったんです。ほら、この前のパーティーの事件があったでしょう?ですから、ミシェル様をお守りする者としてここにいるのです。水は僕一人では少し、不安なので使用人になってもらったんです」
えへへ、とごまかし笑いをセインはした。クラリスは一瞬、不審そうに眉をひそめたが、ため息をつくと、首を振った。
「まあ、セイン一人では不安だしね。それに僕もレオンを特別に入れてもらってるし。二人いた方が安全か。あ、それで君はアジア系なのかな?」
クラリスはにっこりと再度笑いながら水に聞く。
「はい。中国の出身です。清 水と言います」
水はぺこりとお辞儀をして言った。
「へえ・・・。中国出身ね。まあ、いいや。宜しくね、水。こっちはレオン。君と同じ使用人だから」
レオンはキッと水を睨むとぷいっとそっぽを向いた。そんな様子に水は首を傾げる。
「ところで、用って何ですか?」
「ああ。君がこの学園に入学するのって本当なのかなって、確かめに来ただけ。もうそろそろ、教室に帰るよ」
クラリスの言葉に女の子達はがっかりとした表情で自分の席へと戻っていく。レオンは「じゃあな、ちびセイン」と悪戯そうな笑顔でそういうとクラリスとともに教室を去って行った。
キーン、コーン、カーン、コーン・・・・。
丁度、一時間目の始まりを知らせるチャイムが鳴った。
「ううッ。やっとお昼かぁ」
精一杯伸びをする水。セインはミシェルの横へと移動し、言った。
「ミシェル様、授業おつかれさまでした。食堂に行きましょうか?」
ミシェルは「そうだね」とお腹をさすりながらセインに同意した。水も「行く行く」と言ってついてくる。途中まで三人で廊下を歩いているとミシェルはあっと声をあげた。
「どうしたんですか?ミシェル様」
セインは問いかける。ミシェルはあわてた様子で二人に言った。
「悪いけど、先に行ってて。先生に名簿を届けるよう言われてたのすっかり忘れてて・・・」
「それじゃ、僕が行きますよ。ご主人様にそんな事をさせるなんて出来ません」
「ありがとう、セイン。でも僕としては席を取っておいてもらったほうが嬉しいんだけど」
張り切ってミシェルの為に働こうとしてたセインはシュン、として頷いた。水は明るく、了解と言うとセインを引きずって食堂へと向かって行った。
「それじゃ、教室へもどろっと」
ミシェルは教室へと戻ると教卓においてあった名簿を手に取ると、走って職員室へと向かった。
「しつれいします」
ミシェルは名簿を先生に渡すと、急いで食堂に向かおうと振り返ると、誰かにぶつかった。
「あっ、失礼。大丈夫?」
「んだよ、何やってんだよ、ライト」
ミシェルは慌ててはなれると、相手を見た。そこにはブロンド色の少し長い髪の少年と黒みがかっている茶髪の少年、二人が立っていた。ブロンド色の少年は瞳が澄みきったブルー、顔は優しそうな美顔であった。一方、茶髪の少年は顔はきりっと、勇ましい顔をしていて偉そうな口調である。
「あれ?見ない顔だね」
茶髪の少年は言う。ブロンドの髪の少年も、頷いた。
「確かに、こんなチビ、学園にいたっけ?」
ミシェルは少し、むっとしながらもにっこりと笑顔を作りながら、自己紹介をした。
「ミシェル・セルカールです。今日、この学園に転入してきました」
茶髪の少年は「ああ」と手を叩くと、笑った。
「そっか。君がミシェル君か。宜しく。僕はここの理事長の息子で、ライト・マッツェル。ライトって呼んで」
ライトはミシェルに握手を求めた。その手をミシェルは握った。ミシェルも「宜しく」と言うと、隣の少年を見た。
「俺はランモル・ニコルだ。ランモルで良い」
そう言うと、そっぽを向いて何も言わなくなった。ミシェルは驚き、ランモルに問いかけた。
「ニコル?もしかして、バーク夫人の孫?」
その瞬間、ランモルはぎっとミシェルを睨んだ。ミシェルはその顔に思わずびくっとしてしまう。ランモルは低い声で怒りを込めたようにいう。
「あのババアの名前を、俺の目の前で出すな。虫唾が走る」
「ちょっと、そんな風に言わなくても良いじゃないか!」
ミシェルは思わず怒鳴ってしまった。バーク夫人に対しての悪態は許せなかった。バーク夫人は自分を我が子のように親しくしてもらっている。
しかし、ランモルはハッと笑うと、ミシェルに言った。
「あのババアはな、良い奴ぶってるだけなんだよ、馬鹿。お前、騙されてんじゃねーの?」
その言葉を口にした瞬間、ミシェルはランモルに飛びかかろうとした。しかし、それはライトによって止められた。二人の喧嘩をおろおろと見ていたライトであったが、これはさすがにまずいと思い、すかさず止めに入ったのだ。
「ミシェル君、学園内での暴力は禁止だ。君が怒る気持ちはよく分かる。でも、規則は規則だ。これは理事長の息子として、黙ってはいられないよ」
ミシェルはぐっと、唇を噛み、納得がいかないような顔をしたが暫くして、頷いた。ライトはにっこりとミシェルに向かって笑うと、ランモルを人睨みし、小突いた。
「ランモル、君は口が悪すぎだ。人には人の意見があるんだから、そんな風に言わない。いつもそうじゃないか。もう少し、口の悪さは反省しないと」
ねっ?とライトはランモルにも笑いかける。ランモルはうっと、詰まると観念したように溜息をついた。
「分かったよ」
ライトはにこにこと笑いながらランモルとミシェルの手を掴むと、無理やりお互いの手を握り合った。
「それで?二人共、何か言う事は?」
二人はお互いを睨みあい、もじもじしていたがライトの笑顔に負け、うなだれる。
「悪かったよ、ミシェル」
「こっちこそ、少しやりすぎたよ」
ライトは満足げに二人を見つめると、ランモルの肩をたたいた。
「あ、そう言えばミシェルくん。食堂のご飯はもう食べた?」
「ううん。今から、行く所。セ、じゃなくて、使用人が先に行ってる筈」
「なら、一緒に行こうよ。そうだ、折角仲良くなったんだし、一緒に御飯でも」
「はあ!?ふざけんな、俺は誰かと飯を一緒に食うタイプじゃ・・・」
「良いね!ライトはいつも、何を頼んでるの?」
「ふふ。日替わり定食だよ~。あそこの日替わり定食ってさ、変わってるけどおいしくて、飽きないんだよな~、これが」
「お、おいライ「そうなんだ!じゃあ、僕も頼んでみよっかな~♪」」
―ピキッ。
「人の話を聞けえええ!」
そんな訳で、ランモルの叫び声が響いたのであった。
次の日。
「おい、これはどういう事だ」
ぴきぴきと、眉が動き、あるものを睨みつけているランモル。
その視線の先にはライトとミシェルが周りに花を飛ばしながら、話している姿。その周りに水とセインもその様子を見ている。
「それでね~、セインがさぁ、皿を落としちゃってさぁ」
「ミシェル様!そんな使用人の恥をべらべらと話さないでくださいよ!」
「へえ、セインもおっちょこちょいなんだねぇ」
「ラ、ライト様まで・・・」
「セインはおっちょこちょいで、弱虫で、何をやっても駄目だね」
水もそれに便乗し、笑いながら言う。それに少し、ムカッときたセインが
「君なんかより、ずっと立派な使用人だと思ってます」
「なにおう!?」
水はセインの胸ぐらを掴むと持ちあげた。
「ぐえっ・・・。く、くるじいよ・・・」
「ははっ。水は力持ちだね」
「ミシェル君、力持ちだねって笑える事じゃないよ・・・」
恐ろしげに水を見つめるライト。
「おい、お前らこの異様な光景は何だ」
ランモルは腕を組み、ライトにきく。
「何って、友達と楽しく会話しているんだよ?」
「ランモルもはいる?」
ミシェルとライトはにっこりとランモルに手を差し伸べる。
ランモルは呆れたように笑うと、
「友達ね」
何処か悲しい表情でミシェルたちの輪の中へとはいって行った。
その様子を遠くの空の上から、人形に乗ってリリーは見ていた。
小さな望遠鏡で見ながら、薄く笑う。
「へえ・・・・。あの子が、ね」
そう呟くと、リリーはぶつぶつと呪文を唱え、消えた。
更新が遅くなってしまった・・・。