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赤い道化師の箱  作者: miora
2/9

:box2 サーカスの幕開け:

パーティーで起こった事件。

とうとう、幕を開けたサーカス。

ミシェルの決意。赤い服装達の目的。

登場人物は整った。

台本がないこのサーカスはゆっくりと終わりに向かって進む。

それぞれの運命の歯車が今、廻り出す―。


真っ暗で何も見えない場所―。

遠のく意識の中で、セインの声が聞こえた。

『ミシェル様ああああああああああああああああああ』

(僕は死んでしまったのか)

ふっと笑って、前を横を向いた。

真っ暗の闇の中で誰かがいた。背を向け、髪の色も背丈もミシェルとそっくりだった。

手を差し伸べ、そいつの肩をつかんだ。ゆっくりと、そいつは振り向いた。

―僕だ。

そいつはミシェルだった。ミシェルは何も言えず、ただ立ちすくんだ。

「僕は君だ。真実の君。そして、僕は君の・・・・・・」

その時、ガラガラと空間が崩れ始めた。

崩れてゆくその中でそいつは近付きこういった。そして、顔をぐっと、近づけた。

「道化師だ」

その顔には道化師ピエロの仮面。にやりと口角は上がり、目は妖しい形に歪んでいる。

「君のその顔は本当に君のもの?表の顔はピエロのように笑って、裏の顔は何が隠されているの?」

ケタケタと仮面の中で奴は嗤う。ミシェルは訳が分からなくなって、一歩後ずさった。

「何を言って・・・・」

ガッと顎を掴んで、そいつは最後に言った。

「お前は・・・・・・・・・・たんだろう」

全てが崩れて行き、そいつが言った言葉は聞こえなかった。

視界が真っ白になって何も見えなくなった。


「ミシェル様!!!」

ふっと眼を開けると、そこには見慣れた顔、セインの顔があった。

「セ・・・イン?」

セインは目に涙を浮かべただ、「はい」と繰り返し答えた。

「ご無事でよかったです。もう、死んでしまったのかと・・・」

ベッドのそばで、椅子に座っていたセインは鼻をかんだ。その傍の棚の上には包帯や薬、体をふくための水とタオルが置いてあり、さらには林檎が一つとナイフが置いてあった。

「ずっと僕の世話をしてくれたんだ。ありがとう。大変だったよね」

頭を撫でて、何とか涙を止めようとした。セインは首を振って笑顔を見せた。

「いいえ。助かってほしいとただ必死で。疲れは感じません・・・」

途中で言って俯いてしまった。気になって覗き込むとスヤスヤと寝息を立てて寝ていた。

ぷっと思わず笑ってしまった。

(ありがとう、セイン)

ミシェルは眠っているセインの頭を撫でた。その時、あいつが最後に言った言葉が思い出された。

(何が言いたかったのだろう)

ミシェルはふと、パーティーで起こった事件と父の死因は何か関係があるように思えた。

(あの事件を追っていけば、父の死の真相が分かるかもしれない)

パーティーで赤い服たちが言っていた言葉。

『血塗られたサーカスの始まりだ♪』

血塗られたサーカス。この言葉の意味とは?ミシェルは顔を手で覆い、上を向いた。

「くくくく・・・・・」

ミシェルは小さな声で嗤った。

ピカッ、ゴロゴロ・・・。

遠くで雷が鳴り、雨がぽつぽつと降ってきた。

(面白い。この事件の真相も知りたくなってきた)

そして、ナイフを持ち、それを棚に突き立てた。

―僕があいつ等の血で、このサーカスを真っ赤に染め上げてやる!!―

幕が上がったなら、それを早く終わりに近づけてしまおう。

・・・誰もが見たくない物語が始まるのなら・・・・・。


コツコツと教会の中に足音が響く。主祭壇へと足を進める一つの影。主祭壇の周りには五人の男女がいた。影は仮面をつけ、赤い服を着ている。

ゴロゴロゴロ・・・。

雷はまだ、鳴っている。

「パーティーでのミシェルの誘拐計画、失敗に終わったわね」

影は言った。雷に照らされた、一人の女は言った。

「そういうあんたは、何もしなかったじゃない」

長いストレートの髪の女、リリアン・ピレットはぎろりと睨んで、女の仮面を外した。

「そうでしょう?マロー・ゴルバット」

影はにやりと笑って、指を鳴らした。足元から黒い影がマローを包んだ。

「ミシェルのお目付役って本当、大変」

黒い影がバッと広がり、消えるとそこには若い女が立っていた。

「こ~んな、不細工な顔でしかも、オバサンに化けるって私には死より、苦だわ」

「けけけ。バーカ。僕はずっと若いからさ。全然、苦じゃないよ」

「ライアンは可愛いまんまだよ。僕はカッコいいよ」

ショートヘアーの双子は言った。二人とも左右対称に、刻印が焼き付けられている。

「五月蠅いわよ、ライアン&セリアン・マルテロナ姉弟」

「そうだよ~。カッコいいのはクウェイスだもん」

ぷくっと頬を膨らませ、子供っぽい口調で反抗しているのは、エミリー・ホンデス。クウェイスにぴったりとくっついて、頬をスリスリと腕にすりよせた。

「だってさ。良かったわね、グリーン罪人シナー

マローはクウェイスへと視線を向け、オルゴールの椅子に座った。

クウェイスと呼ばれた男は無言で、エミリーの頭を撫でた。髪が透き通るような緑色が目立つ。

マローはふん、と鼻を鳴らし、思い起こしたようにリリアンに問う。

「そう言えば、レイチェル様の五大遺品の一つ、『ピエロの人形』はあんたが持ってるのよね?」

髪を弄りながら、足を組み笑った。リリアンは不機嫌そうにマローを睨んだ。

「それが何だって言うの?」

「あんたはレイチェル様に、偉く信用されているようだからね。私にも何かご褒美が欲しいなあ。例えば、美しく輝くダイヤ、とかね」

にやにやと笑う、マローをよそにリリアンは懐からピエロの人形を取り出し、見つめた。

「それはレイチェ・・・・レイチェル様がご復活なさってからの話よ」

ドカーン!!!ゴロゴロゴロ・・・。

雷が近づいているのか、ひと際大きい音を鳴らし、リリアンを照らした。

リリアンの目は血で染めたように真っ赤だ。リリアンは立ちあがり、五人をそれぞれ見渡し、仮面を付けた。

「さあ!我ら、レッド道化師・ピエロがレイチェル様をご復活させ、この世界を、サーカスをレイチェル様のお望み通りに真っ赤に染め上げようではないか!!」

両手を広げ、ケタケタと嗤った。

「今こそ、あの時の・・・千年前の恨みを晴らす時!レイチェル様を殺したあの忌まわしき人間どもに復讐を!!!!」

教会には黒い影が、六つ。そして、六つの影は黒い影に覆われ、姿を消した―。




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