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異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手しちゃうから!  作者: 明衣令央
第二章:のんびりまったりスローライフ?

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第73話・銀色の髪


 翌日、私はドアをノックする音に気付き、目を覚ました。


 だけど、昨夜も褐色の腕の中で翻弄され続けた私は、眠くて仕方がない。


 どうしよう、眠い……と呟くと、褐色の手が優しく頰を撫でて、まだ寝てていいよ、と言ってくれたので、私はありがたく頷いた。


 彼――ユリウスはベッドを降りて、一つ大きなあくびをした。


 彼も本当はまだ眠いらしい。


 ごめんね、と謝ると、ユリウスは振り返って首を横に振った。


 カーテンの隙間から漏れる光で、キラキラと銀色の髪が輝く。


 綺麗な髪だなぁ、とぼんやりと見つめていると、身なりを整えた彼は私の頬を優しく撫でた後、ドアへと向かった。




「誰だ? ジャンか?」




 ユリウスが、ノックされたドアを開けると、




「あっ!」




「え?」




 ドアの向こうから聞こえたのは、驚いたような男の子と女の子の子供の声だった。


 子供たちの声を聞いた瞬間、私は眠気が吹き飛んだ。


 子供たちは、テッドくんとコリーちゃんだ。


 二人は驚いたような声を上げた……でも、一体何に驚いたの?




「ユリウス、髪!」




「え? あ、そうか!」




 ユリウスは頭に手をやると、深いため息をついた。


 寝起きだったからか、頭にバンダナを巻くのを忘れてしまっていたようだ。


 バンダナはどこにいったんだろう、と周りを見回した私は、床に落ちているのを見付けた。


 そう言えば、昨日私がユリウスの頭から取ったんだった。




「に、兄ちゃん、その髪……」




「お兄ちゃん、始まりの王様みたい……」




 創世王であるルリアルーク王の事は、こんな小さな子供たちでも知っている事なんだね。


 私は子供たちがユリウスを見つめている間に、自分の身なりを整え、軽くベッドを整えた。


 それから、テッドくんとコリーちゃんを前に固まっているユリウスの背中を撫でて、子供たちを部屋に招き入れる。




「ね、姉ちゃん! 兄ちゃんって……」




「お姉ちゃん、お兄ちゃんが!」




 テッドくんとコリーちゃんは、ユリウスを見て、大興奮していた。


 この世界にとって、創世王と同じ色を持っている人間は、特別な存在のようだ。


 色的にはそんなに珍しいものではないように思うんだけど、実はなかなか居ないのかもしれない。




「テッドくん、コリーちゃん、あのね、このお兄ちゃんは、この色に生まれた事が、あんまり好きじゃないの」




 興奮する子供たちにそう説明すると、彼らは不思議そうに首を傾げた。


 創世王と同じ色を纏って生まれた事は、きっと、喜びこそすれ、嫌な事であるはずないと思っているようだ。




「この色はね、この世界にとって特別な色だよね。だけどこのお兄ちゃんは、この色で生まれた事で、すごく嫌な想いをしてきたの。だから髪の毛を隠してね、少しでも目立たないようにしているの。だからね、このお兄ちゃんが創世王と同じ姿をしているっていう事は、内緒にしてほしいの」




 まぁ、目立たないようにしていても、目立ってしまうのがユリウスなんだけどね。


 銀色の髪を隠したとしても、カッコいいから、そこに存在しているだけで目立っちゃうんだよ。


 だけど、私の説明を聞いて、テッドくんとコリーちゃんはわかってくれたようだった。




「兄ちゃん、こんなにカッコいいのに、嫌な目にあったの?」




 ユリウスを見上げ、震えた声でテッドくんが言った。


 隣に居るコリーちゃんも、茶色の瞳を潤ませている。


 青いバンダナで髪を隠したユリウスは、二人の前にしゃがみこむと、うん、と深く頷いた。


 それを見たテッドくんとコリーちゃんは、顔を見合わせて頷き合うと、再びユリウスに視線を戻し、ユリウスの褐色の大きな手を握りしめ、言った。




「大丈夫だよ、兄ちゃん! おれ、誰にも言わないから! 安心しろって!」




「そうだよ、お兄ちゃん! わたしも、誰にも言わないよ!」




「あ、ありがとう」




 子供たちの健気さに、目頭が熱くなってしまった。


 ユリウスも私と同じ気持ちだったんだろう、長く逞しい腕で、二人を抱きしめた。




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