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フィッツ•イン•プロミス 〜約束の旅〜  作者: えれべ
第一章『モンスターの襲撃』

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第一章9話『ものすげー進展』

 次の日。レックスはまたチーフたちに会いに行こうと森に向かって村の中を歩いているところだった。

 

「今日こそは、何か掴めるといいんだけどなぁ。ーーってまずい!」


 そんな些細な願いを込めて、門を通って森に入った時、一人の村の少女が猛獣に襲われているところを見つけた。

 それを見て即座に『魔剣』を抜いて助けに入ろうとして、ーーその心配は要らなかった。


「怪我はないか?」


 そこに剣を持ったゾンビの青年が現れ、少女を襲おうとしていた猛獣を斬り倒したからだ。


「う、うん。あ、ありがとう! 私ね、ままの誕生日だからそれにきのこをあげようと思って集めてたの。でも猛獣に襲われちゃって」


 少女は、今にも泣きそうな顔をして必死に、必死に言葉を紡いだ。

 そんなニンゲンの少女を、青年ゾンビが元気づけることにした。


「そうだったんだな、偉いなお前。よし、そんな偉いお前をオレが手伝ってやろう!」


「ほんとぉ? ありがと! お兄ちゃん名前なんていうの?」


 笑顔ではしゃぐ少女に名前を聞かれ、青年ゾンビが困り、頭を掻く。


「んー、困った。オレ、名前ないからなぁ」


 名前というのは、普通親がつけてくれる大切なものだ。

 しかし彼には大切なものをくれる親は彼を生んだ直後に死亡してしまい、名前を貰えていない。


 そうして困っていると、ふと少女が青年ゾンビを指差した。


「それじゃあ名前つけてあげる! んー、ゾンビだからゾン介!」


 ニンゲンがゾンビに大切なものーー名前を与えた。これはおそらく、これまでの歴史を見ても類を見ないことだろう。

 青年ゾンビーー改めゾン介は、ニンゲンからの大事な贈り物を受け取った。


「ゾン介か。いい名前だな、ありがとう!」


「行こ! ゾン介がいてくれたら、怖いものなんてない!」


 そんな無邪気な少女の手を握り、ゾン介とニンゲンの少女は森の奥へと入って行った。


「そういえば、お前の名前はなんだ?」


「私の名前はアリス」


「アリスか。いい名前だな」

 

 そんな二人を後ろから見ていたレックスは、ゾンビのことを誤解していたと、小さくため息をついた。

 そしてレックスは少女が安全だということを確認して、一旦村に戻ることにした。


 村に戻ると、門の辺りで大人の女性がなにやら騒いでいるのが見えた。

 そしてその女性は、レックスの姿を見た途端こちらへ駆け寄ってきた。


「あ! レックスさん。あのー、娘を見てませんか? あの子、私の誕生日プレゼントに、きのこを採ってくると言い出して森に入っていっちゃったんです」


「それなら大丈夫だ。なんてったって、あいつには、心強い友達がいるからな」


「とも、だち?」


「あぁ。だから心配せずにってのは難しいと思うけど、待っててくれていいぜ」


 アリスの母親はらレックスの言葉と、その友達という人物を信用することにした。


 そして一時間後、手を繋いだアリスとゾン介が森から出てきて、門の辺りに戻ってきた。すると案の定、見張りに声をかけられ、


「アリス! それと……ゾンビ?」


 見張りは驚きつつも、流石に敵意はないと分かり、槍を構えることはなかった。

 そしてそれを見つけたアリスの母親が、大慌てで駆け寄ってきた。


「アリス! 心配したのよ!」


「まま! 見て、きのこたくさん採れたよ! 誕生日おめでとう!」


「うん、うん。ありがとう。ーーあなたがレックスさんの言ってた友達?」


 アリスの母親は、泣きそうになる気持ちを抑えながらも、ゾン介のことについて色々と聞くことにした。


「友達ですか……オレはアリスと、友達になれたのか?」


 頭を掻いて戸惑うゾン介。その戸惑いを、隣にいた無邪気な笑顔が打ち消した。


「何言ってるの、ゾン介? ゾン介は私のお友達だよ! それに私を守ってくれて、きのこ探すのも手伝ってくれたじゃん」


 母親はハッとした。自分は無意識のうちにゾンビという異種族を差別して、危険視していたことを。

 そしてそれと同時に、ゾン介の迷いも消えた。


「ゾン介。どうもありがとう。これからもアリスと仲良くしてね」


「ーーはい!」


 ゾン介は涙を流してそう答えた。そして、自分にニンゲンの友達ができたということに対して、相当な喜びを噛み締めたのだった。


「すげぇな。ニンゲンとゾンビとの友達か」


 そんな村の様子をアリスの隣にいたレックスも嬉しそうに笑って見ていた。

 ニンゲンとゾンビの間にある大きな壁に、少しヒビが入ったような気がして、とにかく嬉しい気持ちでいっぱいたった。


「私たち大人には、これまで生きてきた経験で物事を考えようとする癖があり、なかなか新しいことを受け入れるのが難しいのじゃ。これを『偏見』と言う」


 そこに現れたのは、この村の村長だった。


「ーー村長」


「しかし、子供はどうじゃ? 物事を考える経験もなければ、それによって生じる偏見もない。その分新しいことを受け入れるのが容易じゃ。それが子供の良いところじゃと、私は思うんじゃ」


 どうやら村長は、昨日見張りがチーフを追い返したことを見ていたらしい。それで、皆がゾンビを信用するのを待つことにしたらしいのだ。

 そして村長はレックスたちーーいや、この場にいる全員が待ち望んでいたことを口にした。


「ゾン介、と言ったかな?」


「はい」


「ゾンビのリーダーを……ゾルト•チーフを呼んできてくれないか? 話がしたい」


 村長は、遂にゾンビのリーダーと話をすることを決意した。



 ーーゾンビとニンゲンの間にあった止まっていた歯車が、今初めて動き始めた。

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