第二章23話『パーッといこうぜ』
ーー次の日、スイプはベットが起き上がり、完全に復活することができた。 これにはレックスも「おー! スイプ立てるのか!」と大はしゃぎである。
さて、レックスたちが今日スイプが立ち上がることができたことに対して、こんなにも喜んでいるのには訳がある。もちろん共に戦った仲間が動けたことに対しての喜びは、言葉で表せないほどある。
だが、レックスにとってはそれだけではなかった。その理由とはーー。
「よし。それじゃあ、宴の始まりだぁー!!」
「「「おーーー!!」」」
ここではコルトとナサの人々が集って、宴をしている。肉を食べ、酒を飲み、芸を披露する人までいる。
場所は今レックスたちがいる場所、砂漠の街コルトだ。
そして今、スイプが回復したことにより、この宴に全員が参加することになったのだ。
宴を営んでいる従業員メンバーのうちの一人の若い女性が、レックスに話しかけた。
「あ、レックスさん! 何か食べますー?」
「それじゃあ肉をくれ!」
「はい! どうぞ」
「美味ぇー! これ何の肉だ?」
ここは今ワイド砂漠で一番賑やかな街、コルト。人々はレックスたち三人に深く感謝し、宴を開いているのだ。
そしてなにより、ワイド砂漠の肉はとても美味しいのだ。この肉が何の肉かというと、
「こちら、オオサソリの肉でーす!」
「えっ! あれ食えるのか!?」
この肉はワイド砂漠を突き進んでいる際にレックスとロンを集団で襲い、遭難しかけるにまで発展させた原因、オオサソリだ。 レックスとロンにとっては因縁のモンスターだが、この宴ではそれが覆されることとなった。
その従業員曰く、黒い甲羅を剥ぎ取って焼くと、とても美味しくなるという。 本当に、あれを初めに食べようだなんて考えた人はよほど飢えで死にそうだったのだろうか。
そんなことを考えつつも、この肉の味を噛み締めるのだった。
そうして驚いてるレックスに砂漠の狙撃手、スイプが肉を片手に顔を出す。
「なんだレックス、知らなかったのか? ここワイド砂漠のじゃ、一番美味しい食い物だぜ? ーーうん、最高だ」
「意外だったよ。なんせ俺ら、このモンスターにトラウマあるから……」
そこに赤髪のナックラー、ロンが肉を片手に現れる。流石に宴の時は黒いグローブを外してあるようだ。
「ほんと意外だったぜ。しかも美味えしよ」
「他にもあるから遠慮せず、じゃんじゃん食べていってねー!」
「しゃー! 食いまくるぞ! ……酒は飲めないけどね」
ここはワイド砂漠。腕のいい狙撃手が勢揃いの砂漠だ。そして楽しい楽しい宴が開かれている砂漠だ。
三人が肉を片手に散策していると、屋台の一人のおっちゃんが話してきた。どうやら射的屋のようだ。
「お! スイプじゃねえか! なあなあ、この的射抜けるか? ちなみに今んとこ、成功者は誰一人としていねぇぜ?」
「その難易度大丈夫なのか……? まあ、やってやるよ! コルトの狙撃手、シルフィルド•スイプの名にかけて」
スイプはおっちゃんから射撃用のライフルを渡された。ここから的まで距離はざっと十五メートルほどと、見たこともない距離だ。
レックスたちからしたらこんなのただのぼったくりのように思えてしまうが、ここに集まっているのは狙撃手の街、コルトとナサからやって来た人たちだ。彼らからしたら、少し難しいというほどなのだろう。
「こりゃ確かに難しそうだな。でもーー」
スイプは右手に握っていたライフルを撃った。
ライフルの弾は十五メートル先にある的のど真ん中に向かって、真っ直ぐに飛んでゆく。そして、そこで大きな歓声が上がった。
「すげぇ! 初めて的に当てた人が現れたぞ。ーーっ! しかも、ど真ん中!?」
「すげー! 流石スイプだぁ!」
「まあ、これくらい楽勝ってやつよ」
スイプはそう言いながら、得意げに自分の狙撃の腕を自慢した。
そしてやはり、この距離を撃ち抜くものはスイプ以来いなかったのだ。
そうして楽しんでいると、コルトの長、ジェイ•リティアムが現れた。
「スイプ、それに客人……いや恩人たち。楽しんでいるようようで何よりだな」
「おーリティアムさん。おかげさまでだ」
「いいや、礼を言うのはこっちのほうだろう。この度はどうもありがとう」
「礼なんて、そんな」
コルトの長の感謝の言葉に思わず慌てるスイプ。しかし青髪の少年は違ったようだ。
「リティアムさん、感謝もそうだが今は宴だぜ?細かいこと忘れて、ぱーっといこうぜ?」
そう言って、レックスは二つ持っていたオオサソリ肉のうち一つを渡した。
「ははは、そうだな。私も盛大に楽しまなくては!ぱーっとだな!」
「あぁ、ぱーっとだ!」
これにはロンとスイプも安心した表情を浮かべた。色んな人と友好的に接する。これこそ、レックスの才能だろう。
そして、リティアムとは対のような存在の者が、この場に訪れる。
「ーーネオンさん」
それは隣町ナサの長、ツタン•ネオンだ。
「おお、みんな揃っていたのか。ーーってリティアム殿。この度はどうもすまなかった。魔王軍の策略とはいえ、私のミスでこんな事態にーー」
「それでいうとネオン殿、こんな事態という言葉が指すのは、みんなが明るく、そしてぱーっとはしゃいでいる宴のことになるぜ?」
「ーーっ、いやそういう意味じゃなくて」
「いいじゃねえか! そういうのはまた後にしようぜ! それに見ろよ。この様子を」
リティアムに勧められてネオンが見たもの。それは、人々が楽しく宴をしている様子だった。コルトとナサの人も問題なく楽しそうにしている。もうあんな戦いがあったなんて考えることもできない。
「ーーそうだな。そうしよう! リティアム殿。よし、飲むぞ!」
「そうこなくちゃな?ネオン殿……いや若造!」
二人は酒の入ったコップを手に取り、酒飲み対決を始めた。その様子を見て、三人は安堵する。
「おっしゃー! まだまだいくぞぉー!」
その日は朝から夜まで宴が続いた。楽しい楽しい宴の時間が。




