第二章21話『ラティス•マート』
レックスとチーフが戦おうとする頃、後ろでは大きな爆発音がした。
「嘘だろ……キラーがやられた!?」
「ロン、スイプ! そんじゃぁ、俺もやらねえとな。だけどどうしたら……っ!」
レックスが考えてることなど気にも止めず、マートはレックスのすぐそこまで接近し、レックスにとっての『恐怖』、ーー黒い拳を振おうとしていた。
今回も反撃する余地もなく、仕方なく剣で受け止める。
「そうだ。反撃保存は使えないか?…いや、でももし耐えられなかったらまずいな」
反撃保存。剣に貯めた相手の攻撃によるダメージを全て相手に跳ね返す技だ。だがこの技には当然ペナルティもある。
それは、反撃保存で与えるダメージの半分を、自分も喰らってしまうということだ。
もしこのペナルティに耐えることができなかったら、技を放つ前に倒れてしまう。
そしてもうすでに『破王剣』はチーフの黒い拳を何発も防いでいる。一発でももう味わいたくないほどの痛みだったのに、それを何発も喰らって耐えられるとは到底思えない。大業物の剣が壊れる心配はないが、その前に自分が壊れてしまうかもしれない。
このように今は反撃保存を迂闊に使うことができない状態なのだ。
そんな感じで悩んでいるレックスに、無情にもまた『恐怖』が近づいてくる。
「迷ってる奴ほど」
「ーーっ!」
「弱い奴はいねえよ!」
また剣で防ぐことしかできなかった。攻撃を防げば防ぐほど、セーブカウンターを使いづらくなる。
レックスは雷足で距離を取り、斬撃を二、三本マートに向けて撃った。案の定黒い拳で打ち消されてしまうが。
「もう手立てがねえのか? つまんねえぜ」
「くそっ、なんかねぇのかよ。この状況を打開する方法は」
ジュリアス•レックスは自身にもう一度打開策がないか問いただす。しかし決定的な策など一つも見当たらなかった。
「もう諦めちまえよ!」
また黒い拳が襲ってくる。それに成す術もなく、また剣で防ぐ。もうあの『恐怖』を味合わないためにも、だ。
「防ぐダメじゃ駄目だ。何か考えないと。防ぐだけじゃ、防ぐだけじゃ、防ぐだけじゃ……防ぐだけ?……っ! そうだ、防がなければいいんだ!」
「なんだ? ここの気温的に、暑さで頭がやられるなんてことはねえはずだが。ーーまあそっちがその気なら、上等だ!」
また黒い拳、すなわち『恐怖』が迫ってくる。今まではその『恐怖』を剣で受け止めて防ぐだけだった。
だが別に、全部を防がなくたっていいじゃないか。だってーー、
「お前の技は隙が大きいから!」
レックスが『恐怖』をしゃがんで避けた。そして雷足を使ってマートの横に瞬時に移動した。
「ッッ! お前いつの間に」
「これで終わりだぁ!」
『恐怖』など防がなくても避ければいい。これが『恐怖の味』を知ったジュリアス•レックスの見出した結論だ。
こうしてレックスはーー否、レックス一行は魔王軍幹部、ラティス•マートとキラーを討ち取ったのだった。
ーーしかしまだ終わらない。ワイド砂漠の地獄は、まだ終わろうとしないのだ。




