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フィッツ•イン•プロミス 〜約束の旅〜  作者: えれべ
第一章『モンスターの襲撃』

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第一章2話『restart』

「あなたを止める!そのために来た!」


「やれるものならやってみろ」


 小さい大きな部屋で互いの決意がぶつかる音がした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ーー時々変な声が聞こえるのだ。まるで誰かの悲鳴のような、悲しみのような。でも、どこか凛々しい感じもする。



「ーーぁ、寝てた」


 目覚めるとそこは見渡す限りの森だった。ここにいる理由は単純だ。


「確か、この森の中にあるっていう村を目指してたんだっけ……」


 徐々に、お寝ぼけ状態から覚醒状態へと体を移行させることを試みる。そのために大事なこととは、自分がここにいる経緯を口に出してみることなのだ。これが実際に良いのかは分からない。

 だが、これをしながらこの少年ーージュリアス•レックスは冒険してきたのだ。ならば、それ以上の根拠などいらない。


「それで、確かこの森は……ってやべぇ!」


 その時、自分がどれだけ無防備で危険なことをしていたのかを思い出した。

 迂闊にも、この猛獣だらけの森の中で、一人寝ていたのだ。

 幸い体を確認したものの、損傷は一切なかった。それでそっと胸を撫で下ろしたいところだが、どうもそうはいかないみたいだ。


 レックスの独り言を聞きつけた凶暴な猛獣たちが、一匹二匹と数を増やしながら森の奥からゾロゾロやってきた。だが、その数は三匹と決して多くはない。ーーいける。


「お前ら、逃げるなら今のうちだぜ?」


「ーーーー」


「まぁ、そんな感じの雰囲気でもなさそうだしな。ーー目覚めにちょうどいいぜ」


 準備体操をしながら挑発してきたレックスに腹を立てたのか、猛獣のうち一匹がレックスに飛びかかった。


「よっと」


 だが、その攻撃をいとも簡単に避けられるとは、ここにいる猛獣は誰一人としてーーいや、誰一匹として想像していなかった。

 そして、そのまま攻撃を避けられて大きな隙を見せた猛獣を、レックスは見逃すはずもなくーー、


「まずは、一匹目!」


 腰に刺している鞘から鉄製の剣を取り出し、その猛獣の体を猛獣の悲鳴とともに真っ二つに斬った。


「さぁ、どうすんだ?」


 言いながら、自分はどんな悪役のセリフを言っているのかと自嘲したが、それで猛獣が引き下がってくれたのならいい。ーーそう思っていたが、終戦というのはそう易々と進むものではない。最も、終戦という言葉が、この一方的な狩に適した言葉ではないことぐらい承知の上だが。


「ガァァァァァ!」


「ガァァァァァって……ったく、やる気満々じゃねぇか」


 その唸り声が、仲間を殺されたことへの怒りなのか、それとも動物の本能なのかは分からない。

 レックスは困ったように自分の青い髪をいじり、そのまま青い瞳に映りこむ敵の姿を捉える。そして、よく動きを見極める。


「いいぜ、来い!」


「「ガァァァァァ!!」」


 先とは違い、こんどは左右から猛獣二匹が同時に飛びかかってきた。先の自分勝手に飛び込んできた猛獣よりかは、賢い判断だとは思う。ーーだがそれだけだ。なんの問題もない。


「よっとっと。とりゃ!」


「「ガァァァ……」」


 難なくその二つの猛獣を避け、そのまま二つを衝突させた。そして隙ができたところに、容赦なく刃をめり込ませる。ーー成功した。


「ふー。危ねぇ、危ねぇ。さてと、朝ごはんの支度っとーー」


 脅威を排除し、そのまま倒した猛獣を朝ごはんにしようと思った矢先、それは未然に取りやめになった。


「誰か、助けてくれーーーぇっす!!」


「んっ、誰かの悲鳴? 行くか」


 この猛獣だらけの森で大声を出して助けを呼ぶとは、実に無謀な事だ。それでこの森に誰もいなかったら他の猛獣を呼び込むだけになる可能性もあると言うのだが。確かに、その悲鳴の望み通り、この森には(すこぶ)る強いニンゲンがいるが。

 

 とにかく助けなければ。場所はそう遠くはない。行くしかなかろう。


「待ってろよ。今、助けに行くから」


 レックスは駆ける。駆けて駆けて駆けて、そして青い瞳の中に捉えた。一人のニンゲンと、それを襲う二匹の猛獣の姿を。


 そして、一匹の猛獣が無力なニンゲンに飛びかかる。このままでは間に合わない。手遅れになってしまう。

 思いっきり踏み込んでも、ギリギリ届かなさそうな距離。なので、レックスが取った行動というと、


「とりゃーーー!!」


「ガァァァ……」


 手に握っていた剣を、思いっきり猛獣の頭に向かって投げてぶっ刺すという、非常に大胆な攻撃だった。

 それに驚き、そして怒り、もう一匹の猛獣がこちらを睨みつけてきた。

 剣はさっき投げてしまったので手元にない。それに加えて、レックスは拳で戦うジョブーーナックラーでもない。剣を振り翳して敵を斬る剣士だ。故に、今レックスには、猛獣に対抗する術がない。


「やべぇ、ここまでは考えてなかった……」


「ガァァァァァ!!」


 猛獣が無我夢中になって飛び込んでくる。このように、猛獣がたいして頭を使わずに脳筋な攻撃をしてくることは不幸中の幸いだ。


「っよし、捕まえた!」


 そんな脳筋に飛び込んできた猛獣の突進を体を横にずらして避け、その強靭な肉体を全身で身動きができないように取り押さえた。

 たがそれも長くは持たない。だからこそーー、


「おい! その剣でこいつをぶっ刺してくれ!」


「は、はいっす!」


 頼めるのは、ヒーローに助けられた無力なニンゲンだけだ。

 だがそんな無力な彼もやる時はやる男のはず。レックスはそんな願望を抱いていた。故に、任せられる。


 案の定、彼は自らの命を救ったヒーローの期待に応えるべく、剣を猛獣の頭から引っこ抜き、それを握りながらレックスの取り押さえている猛獣へ、「今のお前なんか、怖くないっす!」というダサくもかっこいとも受け取れるセリフと共にぶっ刺した。


「やったな!」


「はい! 助けてくれて、ありがとうっす!」


「それを言ったら、俺も今助けられた。だから、これでおあいこだな!」


 そう言ってレックスは開いた右手を上に上げる。その意図を汲み取り、そのニンゲンも「そうっすね!」と言って共に勝利のハイタッチを交わした。


 そうしてひと段落した後、久しぶりに会えた同じ人間にレックスは質問を投げかけた。


「なぁ。俺村を探してるんだけど、場所とかって知らない?」


「それって、シェイク村のことっすか?」


「そうそう! それ!」


 その男の口から探していた村の名前を聞くことができて大喜びする。そして「どこにあるんだ!?」と興奮を抑えられずに聞いた。


「私も今から帰ろうと思ってたとこなんっすよ。ついてくるっす」


「ひゃっほぉーい!」


 レックスはその男についていき、お目当てのシェイク村へと向かうことができるようになった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「さぁ。着いたっすよ」


「おーーー! ここがシェイク村!」


 助けた男の案内のもと、ついにレックスは念願のシェイク村へと辿り着くことができた。

 なにせ、三日間この森を彷徨っていたのだから。それも、彼に会うことがなければ更なる時間を要することとなっていたのかもしれない。ーー考えただけで恐ろしい。


「そんじゃあ、俺はこれで」


「おう! 色々ありがとな!」


「俺もっす。それじゃあ、またー!」


 レックスに救われたここの村の住人は、元気に笑いながら手を振って去っていった。

 その背中を少しの間見つめ、改めて念願のこの村の光景を目に焼き付けることにした。

 そしてただ黙って見ているだけというわけにもいかないので、レックスは村の門をくぐり、中へと入る。


 辺りを見渡すと、この村をぐるっと一周を木の柵が囲っていることに気がついた。おそらくこの森中にうじゃうじゃといる猛獣への対策なのだろう。


 さて、レックスがわざわざ数日かけて森中を駆け回ってこの村に辿り着こうとしていたのには、とある理由がある。

 通常の場合、冒険の目的地に定める基準としてよくあるのが、そこにしかないモノを手に入れるためという考え方がある。


 そして今回のレックスの判断基準も、そのうちの一つだ。すなわち、この村にしかないモノを手に入れにきたというわけだ。

 当然、何か盗みを働いたりするわけではない。ーーそんな、野蛮な魔王軍の人間ではないのだから。むしろその逆だ。レックスは魔王軍を倒そうとする冒険者の一人だ。

 

「さて、そんじゃあ探すとしますか。剣を売ってる武器屋を!」


 今のレックスに剣がないわけではない。なんなら、先ほど使っていたところだ。では、なぜ剣を手に入れようとしているのか。それは先の話と繋がってくる。


 この村にしかないモノ。それはシェイク村という場所が、世界で見ても最高クラスの剣を作る場所としても有名だということだ。

 故に、レックスはこの村でより強い強靭な剣を手に入れようとしているというわけだ。


 そんなわけで、今から武器屋を探そうとしていた矢先、それをまたもや、とある声によって止められた。


「君かな? 村の住人を救ってくれた少年というのは」


「ん、あー。そうだぞ。もしかして村長さんなのか?」


 そこに現れたのは、レックスより目線の低い一人の老人だった。

 さて、レックスが村長なのかと尋ねた理由は、その雰囲気にあった。

 ただの老人ならレックスもそんな事は言うまい。

 だがこの老人からは、他の人にはない落ち着きと冷静さ。そして、物事を広く見れる力があると、その雰囲気から読み取れた。ーーだが、あくまで勘の話だ。


「よく分かったな。いかにも、私がここの村長じゃ」


「やっぱりだ。そんな気がした」


 勘というべき予想が当たって嬉しそうにするレックス。それに笑いかける村長。非常に平和な村だと思う。


「俺の名前はジュリアス•レックス。冒険者だ」


「ほぅ、レックスか。ーーそんなレックス君に、頼み事があるのじゃが、聞いてくれるか?」


 その瞬間、村長からは、さっきまでの穏やかな雰囲気が消え、真剣な話を始めるというのが感覚で分かった。


「ーーおう。なんでも言ってくれ」


「ありがとう。ーー最近、夜になるとモンスターがこの村を襲ってくるのじゃ」


「モンスターが? なんで?」


「理由はわからぬ。ただ、私たちは日々それに困らされておってな。どうにかしてくれぬか?」


「分かった。やってみせるよ! 約束だ」


「いいのか。ありがとう。ーー約束じゃ。成功した時には、私にできることがあればなんでもしようぞ」


「ほんとか!? 頑張るよ」


 この村に来て早々、レックスは村長と話をして、早々依頼を受けることとなったのだ。

 

 ーーやるしかない。約束したのだから。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ーー日が沈み、辺りを月光が照らし始めた頃。レックスは約束を果たすべく、戦いへと足を運んだ。

 村の門あたりに向かうと、そこでは複数の槍を持った村人が、数体の人の形をした緑色の肌のモンスターと応戦しているところだった。


「なるほど。これが村長さんの言ってたモンスター」


 初めは様子を見ていたが、次第に少し押されるようになっていたのでレックスも参戦することにした。


「とりゃ!」


 レックスが剣を一振りすると、たちまちそこにいた一体のモンスターが塵となった。


「助かった。ありがとう」


「こっちこそごめん。途中まで見てただけで。ーーって、まだ来るぞ!」


「あんた、レックスだろ? 村長から話は聞いてる。ーー行け!」


 モンスターがまた一体村人を襲ったが、それをすかさず他の者が背後から倒す。そんな戦法を繰り広げていた。

 故に自分達は大丈夫だと。そうレックスに告げ、心配させないようにした。


 レックスもその想いを汲み取り、「分かった。気をつけろよ!」とだけ言い残し、森の奥へと入った。


「頑張ってくれよ。レックス」

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