第二章18話『振るう者同士の』
ロンは手に炎を纏い奇襲の隙を窺っていた。
今ならまだ自分たちの存在がバレていない。しかし近づいて攻撃を仕掛ければ間違いなくバレるだろう。
どうしようかと悩み、スイプに意見を求める。
「スイプ、なんか策はあるか?」
「バレるのはバレる。……けど方法がある」
「ほんとか! どうするんだ?」
スイプは自分の右手をよく見つめ、頷いた。そしてその策というものをロンに話す。
「オレは風魔法を、少しだが操れる。この風で軽い砂煙を起こして相手の視界を奪う。そんで、その隙にロンが攻撃する。ーーこんなんで、どうだ?」
「いいじゃねえか。その話乗った」
「よし、そんじゃあやるぞ!」
二人はバレないようにさらに距離を詰め、ついにこの策を実行できるほどの距離に辿り着いた。
近づくにつれ、キラーの大きな足跡が、さらにスイプの不安を煽るように大きくなっていくのがわかった。だが、スイプは己の拳を握りしめる。
「ロン、いくぞ! ウィンドー!」
スイプの手からは大きな風が発生した。それは砂煙というより、小規模の砂嵐というべきだろう。
その異変にマートが気づかないはずもなく、
「何だ? こんな砂嵐さっきまでなかったぞ?それこそ小規模だが……キラー!警戒体制だ」
だ がそんな警戒も、視界を遮る砂嵐の前には無意味だ。光でもあれば話は違うのだろうが、キラーやマートにはそれをする手段がない。
「ーー何が少しだよ……十分じゃねえか」
ロンはその砂嵐の中に入り込み、視界が遮られる中、ただ真っ直ぐに敵に向かって走り続けた。
そしてまもなくして砂嵐が晴れてきた頃には、キラーの前に炎の拳を振るう者がいた。
「ファイヤーパンチ!」
キラーはロンの本気の拳を喰らって大きくよろけた。手に持っているものを離して、だ。
「ロン! 来てくれたのか!」
「俺だけじゃねえぜ。スイプもだ」
「レックス! 無事か?」
「あぁ、なんとかな。助かった! ありがとう」
「礼なら後にすべきだぜ。今は……」
そう言ってロンはキラーを指差した。
大きくよろけ、攻撃が効いたのは一目瞭然だ。しかしそれ以上に、キラーの耐久力が高いのだ。流石魔王軍の戦闘兵器というところだろう。
「レックス、キラーは俺とスイプでどうにかして倒す。だからレックスはあの魔王軍のやつをやってくれ!」
ロンが指差す先にいるのはフードをかぶり、手に黒いグローブをはめているナックラー、ラティス•マートだ。
「分かった。頼んだぞ!」
「マート! 今度こそお前を倒してやる!」
「二回目でも同じことよ。まーさっきは俺が直接やったわけではなかったからな。今度は俺が直接叩きのめしてやるよ」
そう言ってマートはグローブをはめた両拳を握り、ぶつける。その拳はさっきより黒みを増しているように見えた。
「雷足!」
レックスは一気に間合いを詰め、剣を振りかざす。だがそれにマートは落ち着いて対処を図る。そして、
「黒拳!」
マートの黒い拳は、レックスの剣を簡単に弾き返す。
さらに、その拳は普通の人間の拳の硬さではなかった。そう、例えるなら鉄のような硬さだ。
「硬え! しかも俺の攻撃が弾かれた!?」
「見たことがないのかこの技を?結構定番な技のはずなんだが。まあ経験が浅いんだろうな!」
動揺するレックスにマートは容赦なく拳を振りかざす。これでは剣で防ぐのがやっとだ。
レックスは一旦、雷足で距離を取った。そしてレックスの黒い剣ーー『破王剣』を再び構え、マートに牙を向かんとする。
一方マートは余裕の表情で、この状況を楽しんでいるまでもあった。そして、銃を構える兵に向かって、
「手出すなよ。俺は今最高にいい気分なんだ」
それを言われ、兵は構えていた銃を下ろした。それはまるでら決闘のような状況だ。ーー否、これは決闘だ。剣を振るう者と、拳を振るう者同士の。




