第二章17話『目印』
一方その頃ロンはこの事件の犯人を探している最中だった。だがロンには、レックスが戦っていることなど知る余地もない。
「どこにいるんだ! これじゃあ埒が開かねえぞ」
その時、少し離れたところから大きな機械音ようなものが聞こえた。
そしてそれは、レックスが向かった方向から聞こえた。
「この音、レックスの方向から聞こえるな。……何かあったんじゃねえか? とにかく行くか」
それはスイプも同じことだった。
「何だこの音!? それもレックスの方向から。急いで向かわねえと、やばそうだな」
ロンとスイプがレックスの元へ向かう時、レックスはキラーに捕まって身動きが取れないまま砂漠を歩いていた。
レックスはキラーについての情報を得るために、マートに問う。
「このキラーってやつ、足元から水を出して地面を固めてるのか?」
「よく気づいたな。これで戦闘中にも足が取られないってわけだ」
「やっぱりか。ーー頼む二人とも。気づいてくれ。俺の目印に」
「目印? この砂漠じゃ意味を成さない言葉だなそりゃ。……そういやお前、剣はどこやった?」
「ーー置いてきてやった」
『目印』それはマートの言う通り、この広い砂漠の上では意味を成さない言葉であり、馬鹿にされても当然の言葉だ。
だがレックスはその『目印』という言葉を、この砂漠の上で意味のある言葉に変えたのだ。
まもなくしてロンとスイプはレックスが戦っていた跡地で合流した。
「レックスは?」
「いいや、俺も知らねえ。戦った後みたいなんはあるけどよーーって、あれってレックスの剣じゃねえか?」
スイプの言う通り、砂漠にはレックスの黒き剣ーー『魔剣』スレイヴが突き刺さっていた。これがレックスの言う目印なのだろう。
ロンが砂漠から剣を抜くと、レックスの剣の先には濡れた砂がついてあった。
「濡れた砂が付いてる。どういうことだ?」
「濡れた砂……まさかキラーか!?」
「知ってるのかスイプ?」
「ここ最近魔王軍で新しい戦闘兵器が開発されたっていう噂をよく耳にするんだ。その兵器は、その地形に適した戦いをすることができるって聞いたことがある」
「砂漠の地面は砂。砂に足を取られたら戦いに支障が出る。だから固める…そういうことか!」
ロンもスイプの言いたいことが分かったようだ。これではっきりとした。レックスは魔王軍の兵器にやられた。そして、
敵は魔王軍にあるということを。
「急いで掘り返してみよう!まだ新しい!」
「おう」
二人は砂漠の地面を掘り、濡れた砂が剥き出しになった。それはまるで大きな足跡のような形を成していた。
そしてスイプがとある考察を口にする。
「ここが始まりの場所で、ここでさえまだ浅い場所にある。ってことはおそらく」
「この足跡の方向に進めば埋もりきってない足跡が見えてくる」
「それを追いかければ奴らに会える」
二人は顔を合わせて頷いた。そして初めの足跡から向かう方向を予想し、予想した方向に向かって走り出した。
そしてしばらくして走っていると、ついに濡れた砂が、剥き出しになっている地点まで辿り着くことができた。
こんなに水が乾いていないのは、今いる場所がワイド砂漠の中では、あまり暑くない場所だからだろう。
二人はさらに前進し、ついに大きな巨体を目にした。そしてその手に捕まっている少年もだ。
「ロン、あれ!」
「あぁ、レックスだ!」
これでようやく分かった。
この事件の犯人、そして自分たちの敵は魔王軍だということを。そして、
その敵がすぐそこにいるということを。




