第二章16話『勝ちを確信した時』
ここはワイド砂漠のど真ん中。そしてコルトとナサのど真ん中でもある場所だ。
そこでは銃声が響き渡る。そこでは両勢力の狙撃手同士の戦いの音が響き渡る。そこでは怒りに吠えた獣のような人々の叫びの音が響き渡る。
そしてそこでは三人の少年の驚きと嘆きの声が響き渡る。
「なんだよこれ! 早く魔王軍を見つけないと!」
「手分けして探そう。それでも間に合うか怪しいとこだが」
「絶対に見つけ出してぶちのめしてやるぞ!」
「それじゃあまた!」
三人は三手に分かれて、犯人と思われる魔王軍を探し出しに向かった。なおラクダはナサに置いていくことにした。戦いに巻き込まれると危ないからだ。
一方その頃、この戦いを良いものとして見つめる影がこの広いワイド砂漠の上にあった。
「ーーこれでいい。ようやく任務を果たせそうだ。それにあの男、もしやレックスか? だったら一石二鳥だな」
そしてレックスが犯人を探して歩いてる頃、遠くに複数の人影が見えた。それは怪しげな雰囲気を放つ者たちだった。
その者たちがレックスに話しかける。
「お前か、ジュリアス•レックスってのは?」
その男はフードをかぶっており、肌も焼けていた。そして手にはロンのようにグローブをはめているナックラーで、いかにも砂漠の戦士のような感じの格好だった。
お前はレックスなのかと問う男。しかし、その男の背後には、レックスを狙う銃を持った人物もいた。
「あぁ、だがそれがどうしーー」
向こうは相手がレックスだと分かった瞬間、レックスに向かって銃を放った。
レックスは悟った。こいつらが自分たちの敵であることを。
「すまんな、別に殺そうってわけじゃないんだ。だがその名を聞いた途端俺達の任務が果たされると思うとつい興奮してしまったんだ」
「任務ってのはなんだ?」
レックスは鋭く尖り、そして黒く光り輝く『破王剣』の剣先を男に向け、剣をより一層強く握りしめる。
「俺の任務は二つ。冒険者ジュリアス•レックスの捕獲。そして」
その後の男の言葉は、すぐにレックスの怒りを呼び起こした。
「この二つの街の壊滅だ」
「お前がやったのかぁぁぁ!!」
怒りが爆発したジュリアス•レックスは剣を握りしめて男に斬りかかった。
「俺の名前はラティス•マート。魔王軍の幹部だ。そしてナサの長の前でコルトの兵に変装し、物資を奪った男だ!」
そう言い放ち、マートは手を挙げて背後に控えさせていた銃を持った兵約十名に攻撃の指示を送る。
そして、銃の雨がレックスに降り注がんとする。
「くそ、やっかいだな。雷足」
足に雷の魔力を纏って、足の速さを一時的に劇的に早くする技。それこそが雷足だ。
その技を使い、レックスは弾を避けるために横一直線に走る。その後を追いかけるように銃の弾が襲いかかる。
そしてまもなくして、銃の雨が止んだ。おそらくリロードしないといけなくなったのだろう。
「チャンスだ! これで終わり……」
ーー戦いにおいて相手の一番の隙は、どんな大技の後でもなく、
勝ちを、確信した時だ。
誰もが勝ちを確信した時、予想外のことが起きる。レックスが砂漠の砂を蹴ってマートに斬りかかろうとした時、レックスの足が砂に掴まれた。
ーー否、何者かの手に掴まれた。そしてそのまま砂の地面に顔を打ちつけた。
「ーーなんだ!?」
砂の中から手を出し、レックスを掴んでいた存在が、砂の中から姿を表す。
それは機械仕掛けの巨人のようだった。
それは全身に砂を被り、赤い瞳で敵を見つめる存在だった。それは全長四メートルほどだった。
それは足から水のようなものを出して、砂に埋もれないようにされていた。
そして、それはその大きな手でレックスを宙ぶらりんにして空中で掴んでいた。
それは一つしかない黄色い瞳でレックスのことをじっと見つめていた。そして大きな機械音のようなもので叫んでいた。
「流石魔王軍の兵器ってだけあるぜ。砂の中に潜らせておいて正解だったぜ」
「こいつは、何なんだ……?」
「こいつの名前はキラーだ。魔王軍が開発した戦闘兵器ってやつだな。こいつが敵になったら、俺でも勝てるか不安なとこだぜ」
「くそ、離せ! こいつ、離さねえ」
「一応お前のことは何でか知らんが、生捕りにするように言われてるんだ。だから大人しく着いてこい」
レックスは抵抗するも抗うことができず、キラーとラティス•マートに捕えられてしまった。




