暴走超特急・美佳【第3駅】お嬢様の買い物につきあったら、庶民プライスなのにレシート地獄で大変なことになりましたダァシエリイェス!!
※この作品は暴走超特急です。途中下車はできません。あらかじめご了承ください。
美佳の横を歩く優雅な少女は、西園寺須磨子。
先日、美佳のバイト先のファストフードで「ここがファストフードという場所ですのね?」と興味津々に現れた、生粋のお嬢様である。
もちろんオーダーの仕方も分からず、美佳に手取り足取り教えてもらった。
――そのご縁で、今日は庶民の洋品店「しままち」へ。
「ここが……庶民の殿堂“しままち”ですのね!」
「そーそー! プチプラで可愛いのいっぱいあるんだよ!」
須磨子様はキラキラした瞳で店内を見渡し、ふと表示価格を指差した。
「この表示、0の数を間違えているのではなくて?」
「間違ってないの! これが“しままち”プライス!!」
店員「いえ、税込でこのお値段です」
須磨子様「……では色違いを全色ちょうだい」
美佳「ちょっ、強気ぃぃぃ!!」
《次は特売駅〜、特売駅〜》
ダァシエリイェス!!
それからの須磨子様は止まらなかった。
ワンピースも、ブラウスも、スカートも。
「この柄も、この色も、揃えたいですわ!」
「在庫がある限りすべて頂きます」
――ブルジョワ爆買いモード発動。
美佳も横でノリノリになり、つい衝動買いの山をカゴに放り込む。
「やっべ!安いからいけるって思ったけど……やっべやっべ!」
《次は爆買い駅〜、爆買い駅〜。この列車はレシート地獄直通です〜》
ダァシエリイェス!!
そして会計。
「……お会計、合計〇万円になります」
レジ横の機械から、レシートがずるずるずる……とトイレットペーパーさながらに吐き出されていく。
「長っっっ!!!」
美佳と店員が同時に絶叫。
須磨子様だけが涼しい顔で受け取っている。
その時、美佳の視線がレシートの端に走った。
「えっ!? 赤いライン出てるじゃん!!」
そう、カートリッジ交換間近を知らせる残量警告――。
つまり、この一枚でロール紙ほぼ消費完了ということ。
(……バイト時代、これ出たらカートリッジ交換が地獄だったやつ……!)
美佳は戦慄しながらも妙に懐かしい気持ちになった。
一方、須磨子様はきょとん。
「赤いライン? なにかのご褒美ですの?」
「違う違う違う!!レシート終わり間近の警告だから!」
財布にはまだ余裕の須磨子様。
一方、美佳の財布は……真っ赤に燃え尽きていた。
《次は大赤字駅〜、大赤字駅〜。美佳様のお財布のみ5分間停車いたします〜》
ダァシエリイェス!!
その後、西園寺邸の衣装部屋にて。
「ではファッションショーを始めますわ!」
須磨子様は買った服を次々と着替え、優雅にポージング。
一方、美佳のプチプラ服は――。
「ぴらっ……あっ、ここ縫製が甘いですわっ!」
「ぎゃーーー!情報漏洩ぉぉぉぉ!!」
笑い転げる美佳。
涼しい顔で服を次々と試す須磨子様。
そして――。
《次は終電セール行き〜、終電セール行き〜。倹約駅・節約駅には停車いたしません。赤字駅では予算調整のため、5分間停車いたします。繰り返します、途中下車はできません!》
ダァシエリイェス!!
暴走直通、類友レシート地獄。
今日も列車は、止まらない――。
著者は……コンビニで「レシートいりますか?」と聞かれて「いいです」と答えたのに、財布からレシートが洪水しています。
しかも何故かクーポンまで紛れ込んでいて、結局使わず期限切れになります。