未来のステージへ
ライブ当日。
これまでで一番大きなホール――
俺たち「奏汰と玲音」としての初ツアー、そのファイナルステージ。
控室には、ルナ、小町、ミレイも集まっていた。
なんというか、ここまで来たんだなって、静かに実感する。
「緊張してる?」
ルナが玲音に聞くと、彼女は首を横に振った。
「ううん。……今日は、楽しみのほうが大きい」
その言葉を聞いて、思わず口角が上がる。
あの玲音が“楽しみ”って言えるようになったんだ。
小町が、穏やかに微笑む。
「君の声は、もう“誰かに届くか”じゃなくて、“誰かと響き合うか”になってる」
「……うん。そう思えるようになった」
玲音はまっすぐ、小町の目を見てそう答えた。
ミレイはVJ機材を触りながら言う。
「オレ様も、今日はステージに上がるからな。
“リリカル・ノイズ feat. All Stars”ってことで」
「ださっ」
「またそれ言うかっ!?」
玲音とミレイのやりとりに、思わず笑ってしまう。
場の空気が、ふわっと軽くなった。
そんな中で、玲音はそっとマイクを握る。
その手はもう、震えていなかった。
ステージに出た瞬間、眩いスポットライトが俺たちを包み込む。
目の前には、満員の客席。息を呑むほどの景色だった。
背後のスクリーンに浮かぶのは、『またねの続きを』の文字。
「こんばんは。リリカル・ノイズです」
玲音の声は、澄んでいて、まっすぐだった。
「今日は、わたしたちの“これまで”と“これから”を、音にして届けます。
そして、仲間たちと一緒に――“未来のステージ”を、始めます」
イントロが流れはじめる。
俺がギターを構え、スライドバーを弦の上で滑らせる。
オープンEチューニングのレスポール――そのセッティングは、空を切るような伸びやかな音を生む。
その一音が、曲の始まりを告げるように唸った。
玲音がマイクに口を寄せる。
ルナ、小町、ミレイ、それぞれの“声”が重なっていく。
ルナのコーラスは、太陽みたいに明るくて、力強い。
小町の朗読は、夜の静けさを宿していた。
ミレイの映像は、熱を帯びた風のようで――
玲音の歌声は、そのすべてを受けとめるように優しく、でも確かに未来を描いていた。
『またね』の続きを
『いま』に変えて
『これから』を、歌う
客席から、拍手が静かに広がる。
その音に包まれながら、玲音はマイクを握りしめた。
「……わたし、もう迷わない。
この声で、世界と繋がっていく。……そして、みんなと一緒に」
俺は、彼女の手をそっと握り返した。
そこに、ルナが歩み出てくる。
「じゃあさ、次は“5人”でユニット組もうよ。名前は……“Lyrical Future”とか!」
「それ、ちょっといいかも」
玲音が笑った。
俺もつられて笑う。
「“またね”の続きとして、未来へ進む名前……いいかもしれない」
小町が静かに頷いた。
「“声”は、ひとりでは響かない。……だからこそ、今ここにいる意味がある」
「オレ様たちの音、世界に響かせようぜ」
ミレイの映像がうなりを上げる。
その音に背中を押されるように、玲音がマイクを構えた。
「この歌が終わっても、わたしは歌い続ける。
だって、音楽は――“またね”の続きだから」
ライブが終わったあと。
控室で、玲音がノートを開いた。
“またね、の続きへ”
その下に、彼女は新しい言葉を書き加える。
“そして、未来へ”
「次の曲、もう浮かんでる?」
俺が聞くと、玲音は嬉しそうに頷いた。
「うん。……“はじまりの声”ってタイトル、どうかな」
「いいね。……それが、きっと誰かの“はじまり”になる」
玲音は、ふっと空を見上げて呟く。
「この声が、未来をつくる。……だから、歌い続ける」
その姿を、俺はただ静かに見つめていた。
ふたりの物語は、またここから始まっていく。
“リリカル・ノイズ”の新章として。
“奏汰と玲音”の未来として。
そして、“仲間たち”との音楽として――。




