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リリカル・ノイズ  作者: 寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
わたし、ライブやってみたい
12/90

――君の名前も、ちゃんと入れたから

数日後。

リリース手続き、無事完了。


ストリーミングサービスと、動画投稿サイトに同時アップ。

タイトルは、ふたりで決めた。


『やさしい透明』


作詞 玲音

作曲 Yuno

歌 玲音


カバー画像は、Yunoが描いてくれた手書きのイラスト。

青くにじんだような空と、そこに浮かぶ白いイヤホン。


どこか、ふたりの距離感みたいだった。


「再生数、3日で……3万いってる」


「すご……」


玲音がソファに倒れ込んだまま、スマホを突き出してくる。


「コメントも……“優しすぎて泣いた”とか、“声がしみる”とか、“Yunoさんの曲調に玲音の声がぴったり”とか……なんか、もう、すごい……」


「ちゃんと、届いてるんだな」


「……うん。届いてる」


玲音はスマホを見つめながら、ぽつりとつぶやいた。


「――届いたって、わかったの、初めてかもしれない」


「今までだって届いてたさ」


「でも、“直接返ってくる”のは、やっぱり違う。

 コメントって、こんなに重いんだね」


玲音の声には、少しだけ震えが混じっていた。

それはたぶん、喜びと、怖さの間にある感情だった。


その日の夜。

Yunoから、ひと通のメッセージが届いた。


『曲、すごく反響あって嬉しいな!


カバー画像、ちょっと手直ししてみました。

もしよかったら、使ってください。


それと……


“作曲:Yuno”って入れてくれて、ありがとう。


名前出さなくていいって言ったのに、ちゃんと載せてくれてて、

すごく、嬉しかった。


――で、ちょっとだけ、照れた。笑』


玲音はメッセージを読み終えて、しばらく動かなかった。

それから、画面を見たまま、ぽつりとつぶやいた。


「……やっぱり、わたし、勝手だったかな」


「勝手って?」


「名前、入れたこと。

 Yunoさんは、裏方でいたいって言ってたし……。

 それでも、わたしが“ちゃんと伝えたい”って理由で、勝手に名前出したの、

 もしかして、負担になってたりしないかなって」


俺はちょっとだけ考えて、それから言った。


「玲音さ。

 Yunoが“ありがとう”って言ってる時点で、答え出てるじゃん」


「……うん」


「照れてるってことは、“うれしい”ってことでしょ。

 それに、“ふたりの曲”って、玲音が信じたことは、間違ってないよ」


玲音はスマホを胸に当てて、目を閉じた。


「――よかった。

 わたし、ちゃんと伝えられたんだね」


「うん」


「ほんとに、これでよかったんだよね」


「うん」


しばらく、静かになった。


それから、玲音はふっと笑って、ぽつりと。


「……なんか、やっと“誰かと一緒に音楽やる”って意味、わかった気がする」


「だろ?」


「でも、たぶん、これで終わりじゃないよね。

 むしろ――これからが、始まりなんだよね」


「うん。

 そのために、まずはライブで披露しないとな」


「っ!?」


玲音はその言葉に、耳まで赤くして反応した。


「そ、それは……また別の勇気がいるから……!」


「逃げるなよ?」


「逃げてない! でもちょっと心の準備が……!」


玲音はクッションに顔をうずめて、じたばたしていた。


でも、心の奥では、ちゃんと“覚悟”していたはずだ。

今度のステージは、“誰かと作った曲”を、“みんなの前で歌う”場所。

それは、これまでの玲音にとって――たぶん、一番怖くて、一番大事な試練。


でも、彼女ならきっと越えていける。


そう思える理由が、今の玲音には、ちゃんとあった。

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