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タブーな英雄~ウチの妹がオタクのくせに勇者らしい~  作者: しーなもん
第1章『異なる歴史の二つ世界』
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第7話『異世界の成り立ち1』

 息を切らしながら、槍を杖代わりにして坂を上がる。


 徒歩での箱根越えが、こんなに辛いとは思わなかった。

 ひたすら続く上り坂。同じ景色が続く深い森。滑りやすい道……。

 荷物は多い。手ぶらなら幾分かはマシだろうが、投げ捨てる訳にはいかない。 

 早朝は霧がかっていたせいか気温も低く、それなりに快適だった。

 しかし今は日が昇り、霧も晴れてカンカン照りだ。

 一歩進む毎に暑さで体力と水分が奪われていく。

 延々と続く上り坂に嫌気が差してきた。


「サクヤ様、雨が降るんじゃなかったでしたっけ?」


 からかさ小僧が現れた翌日は雨が降ると、サクヤ様は言っていたが、全く降る気配はない。

 雨なんて降ってしまったらこんな舗装されてない山道は一気にぬかるみ、坂道がより大変になるんだろうけど、それでも暑さ凌ぎになるなら雨乞いでもしたくなる心境だった。


「からかさ小僧が出たからって、100%雨になるわけじゃないわ」


 不要の長物になってしまった、元からかさ小僧の傘を杖代わりにして歩くサクヤ様も、息を切らしながら度々額の汗を袖で拭っている。

 

 そろそろ体力の限界というところで、ちょうどいい感じに腰掛けになる二つの切り株を発見した。


「サクヤ様、ちょっと休憩……」


「そうね」


 休憩の提案は即答で同意された。


「ふう……」


 躊躇うことなく、切り株に腰を掛ける。


 額から出る汗を袖で拭い、ふと上ってきた坂を見下ろした。

 さっきまでは霧で見えなかったが、来た道から少し離れた場所に、多くの建物が立ち並んだ巨大な街が見える。

 昨日いた古代ローマのような文明の遅れた建造物ではない。

 見慣れた日本家屋や洋式の建物、そして大きな城のような建物も見える。


「サクヤ様、あの街は何ですか?」


 サクヤ様も躊躇うことなく切り株に腰を掛ける。


「ああ、あれは小田原の街よ」


「えっ、小田原!?」


 意外な名前で驚いた。

 いや、確かに箱根といえば小田原の街が近くにあるが、この世界の初めに来た街と比べると数倍でかい。


「最初の町より、小田原の方が全然でかいですね」


「そりゃそうよ。小田原はこの国の首都だからね」


「首都!?」


 つい、声を荒げてしまった。


「えっ、小田原が首都って、東京は!?」


「東京は最初に私たちがいた町よ」


 最初にいた町……って、あれ、あの古代ローマぐらいの文明しかないような町が東京なの!?


 サクヤ様は続けた。


「正確に言うと、最初にいた町は江戸ね。この世界の江戸の町は、東京に改名されてないから」


「ちょ、ちょっと待ってください」


 全然話が見えない。

 なぜ東京じゃなくて江戸なんだ?

 いや、そもそもなぜ小田原が首都になってんだ?

 そういえばサクヤ様は元の世界とこの世界は1580年くらいまでは同じ世界だったと言っていた。

 そこから魔法のない元の世界と、魔法のあるこの世界に分かれたとか……。

 魔法が存在する世界だから、小田原が発展した……?

 いや、マジで意味が分からん。


 あれこれ思案していると、それを見かねたサクヤ様が言った。


「しょうがないわね。教えてあげるわよ、この世界の歴史」


「えっ、いいんですか?」


「ええ、別に秘密にすることでもないし。少し長くなるわよ」


 そう言って、サクヤ様は語った。

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