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吸精方法って

「ねえゴンちゃん、ヒュー兄」


しばらくまた歩いていたが、急にシルヴィアがアシュレイの後ろに控えていた2人に声を掛けだした。


「うん?なあに?」

「なんですか?」


シルヴィアの呼びかけに、特に何の気もなしに返事をする2人。


「2人はお腹空かないの?合流するまでに力使ってないのかなって思ったんだけど…」

「いや、それはもうさっき…」


アシュレイに再会した時に、雑に背中を叩かれて吸精している。が、彼女に自分たちの吸精方法を伝えていいのかはいまだに分からない。ゴンダールはちらりとアシュレイを見たがその表情は読めない。


「空腹なのか?」

「いえ全く」

「滅相もございません」


にこやかに問うご主人様に2人は即答した。


「お前の吸精方法とは違うから、さっきもう食ったんだろ。燃費の悪さも違うだろうしな」

「ちゃんとアシュに貰ったら私だって燃費悪くない。今も別にお腹は…って、吸精方法?」


ライオネルの言葉に即座に反論するシルヴィアだったが、前半の言葉に気づいてしまう。


「え?ヒュー兄たちの吸精方法は私と違うの?」


シルヴィアの言葉に男たちは答えず、しん…となってしまった。


「…もし同じだったら俺は想像もしたくないからずっと遠くの茂みでして欲しい。いやむしろ即解散したいな」


まずはバースが口を開いたが、あまり質問の答えにはなっていない。シルヴィアはきょとんとしながら他の者たちを見やる。


「ゴンちゃん?」

「ん、ん〜と、シルヴィアちゃん、毎日ご主人様と同じ部屋で寝起きしてるのよね?」

「うん」

「はぁ!?」


ゴンダールの言葉に素直に頷くシルヴィアだったが、ライオネルは後ろで動揺している。


「あたしたちが同じ吸精方法だとして、いつどうやって吸精してるって思ってるの?」

「え?それは確かにどうしてるのかなとは思ったことあるけど…。でもアシュは元気だし、昼間とか?」


言われて考えたシルヴィアだったが、まあアシュレイなら大丈夫なのかなと謎の信頼を見せた。


「お、お元気なんですねご主人様…。いえその、例えばターニアがその方法で吸精してるとしてよ?ガウディが怒らないのは変じゃない?」

「?食事だしいいんじゃないの?ガウ兄も同じようにアシュに貰ってるんだし」

「う〜んと…」


食事は食事だ。夫婦のそれとは関係ないだろうとシルヴィアは考えている。しかし根本から話は違うのだ。ゴンダールはご主人様の様子をちらちら伺いながら言葉を探っている。その隙に横からさっと影が現れる。


「じゃあなんでさっき俺から吸精するのを拒んだんだよ?」

「ひゃっ!だ、だから契約者のアシュがそばにいるのに他の人から貰えないってば!そんなはしたないことしないもん!」


いきなり詰め寄ってきたライオネルから逃げるようにシルヴィアはアシュレイに抱きつく。その様子を見てアシュレイは笑っている。


「シルヴィア、こいつはお前が思っている以上に腹黒スケベ野郎だぞ」

「はは、思春期猊下には言われたくないなあ」

「???」


ライオネルとアシュレイの会話もシルヴィアにはよく分からない。困った彼女は横にいたヒューズを見る。


「ヒュー兄…?」

「…シルヴィア、その、私たちは吸精する際…我が君とそういうふうには触れ合いません」


ヒューズは口ごもりながらも妹分であるシルヴィアに正直に告げた。言われたシルヴィアはもう一度アシュレイを見た。


「え?…私と同じじゃないの?」

「契約晶霊全員にそんなことしてたら俺の身は持たないよシルヴィ。というかそんな趣味はないよ」


ついに正面から聞かれて、爽やかな笑顔で答えるアシュレイ。ここへ来て嘘をつくつもりまでは無いようだ。


「彼らはこうやって背中を叩くだけで吸精できるよ」


言いながらバシッと近くにいたヒューズを叩く。ヒューズは急に叩かれてむせてはいるが、それでも吸精はできているらしい。


「え。じゃ、じゃあなんでわたし…え、私ってもしかして本当にポンコツ…」

「違うだろ。こいつがドスケベな方法でお前と契約して縛りつけてるだけだ」


自分だけ手間のかかる吸精方法だと知り、愕然とするシルヴィア。そこへすかさず契約内容の問題だと指摘するライオネルだが…。


「心外だなあ。そもそもシルヴィが女神の娘だから男女の睦合いでしか吸精できないだけだよ。最初から俺が決めたわけじゃない」

「そっか…私が女神の娘だから…え?」

「は?」

「へ?」


さらりとアシュレイに言われてシルヴィアとライオネルたちは理解が及ばず固まる。


「女神って…何かの暗喩か?卑猥な言葉とか?」

「思春期猊下は不敬だなあ。別に俺はいいけど、君たちの信仰対象だろ?女神エスメラリアは」


まさかなと思いながら尋ねるライオネルに、アシュレイはやはりさらりと告げる。続いてバースも当然の疑問を口にする。


「め、女神の娘、ですか?ということは父親は…?」

「そりゃあ晶霊王だろう?女神様は浮気を許さないのだから」


さらっとした口調で次々と明かされるシルヴィア出生の秘密に、当の本人はポカンとしている。


「わ、わたし水の晶霊なんじゃ…」

「晶霊王の娘なんだから本当は全ての属性を使えるはずだよ。今は水しか発現していないだけで」

「我が君…それは極秘事項だったのでは…」

「シ、シルヴィアちゃんが…?」


にこやかにとんでもない話をしていくアシュレイを横からヒューズが止めようとしてくる。どうやら彼は知っていたようだ。対してゴンダールはライオネルたちと同じように混乱しているようだった。


「いや、この先でどうせ全て知るだろう?かと言って全て女神の思い通りになるのは癪だしな」

「アシュ、この先って…」

「君が生まれたのはこの森だ。シルヴィ、君は女神と晶霊王の1人娘。12年前に永きに渡る眠りから目覚めたんだ」


さあっ…と木々が風で揺れる中、アシュレイがいつものように微笑みながら静かな声で告げるのだった。


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