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久々の

神秘の森の入り口に到着したハウズリーグ軍。そこでシルヴィアは道中もうっすら感じていた既視感にきづく。


「あれ?この森ってなんか来たことあるような…」

「え?そうなの?あたしは初めてだけど」

「ゴンダールは、来た事なかったかも、ね。僕は主君と、定期捜索にきたこと、あるよ。シルヴィアも、じゃない?」


首を傾げるシルヴィアに、ロウルは過去の定期捜索で来たんじゃないかと指摘している。同じ契約晶霊だが、シルヴィアは2人よりもアシュレイとの契約期間が長い。彼らが把握していない時期に行った可能性は大いにあるのだ。とはいえ、だ。


「ううん、定期捜索に連れて行って貰ったことはなかった気がするんだけど…」


気のせいかなぁ?とシルヴィアは森の入り口を見つめる。そこへターニアがすすすと近寄ってきて、シルヴィアをちょんちょんとつつく。


「ん?どうしたのニア姉?」

「どうしたじゃないわよ。来たわよ、あなたの婚約者様」

「!」


言われてターニアが指差す方を見ると、そこにはドルマルク神聖騎士団がいた。そしてもちろんそれを率いる聖王ライオネルも。ハウズリーグの騎士たちが前面にいるため彼からはシルヴィアが見えていないようだ。が、正面にいたアシュレイには気づいたらしく顔を顰めている。


「…げ」

「おやおや、久しぶりだね若き聖王猊下。ご健勝そうで良かったよ」

「そちらも変わりない様子で何より。本日は日頃の遺恨を絡めずどうぞよろしくお願いしますよ、と」


アシュレイに笑顔で言われて一応嫌そうではあるがライオネルも形式的な挨拶を返す。嫌そうではあるが。


「こちらこそよろしく。年に一度の定期捜索、今日は互いに血生臭い争いは無しだ」

「そっちが破らなければな。こちらからは手出しする気はない」

「そう?なら良かった。規定通りお互い大軍は率いてきていないしね」


穏やかに話すアシュレイだが、何かを確認するようにライオネルはその周囲を見やった。その両隣にいるのは人間の騎士たちだ。晶霊は…。


「誰かを探してるのかな?聖王様のお知り合いなんていたかなぁ」

「…シルヴィアはどうした。連れてきていないのか」

「ははは!凄いな、直球だ。俺のシルヴィにそんなに会いたいのかな?」


騎士たちがヒヤヒヤしながら見守る中、ライオネルは腹の探り合いなどせずに直球を投げてきた。それに対するアシュレイのからかいにも動じずに、真正面から話を続ける。


「会いたいから言っている。まぁいてもわざわざ俺の目の前に見せないだろうが…」

「聖王様がお呼びだよ、おいでシルヴィ」

 

言われてアシュレイはしれっと後ろから呼び出した。ご主人様に呼ばれてシルヴィアはおずおずと後方から現れる。まさか本当に現れるとは思っていなかったライオネルは驚きに固まる。


「シルヴィア…」

「ライ…。あの…」

「シルヴィ、あちらに行きたいのかい?」


真っ直ぐに見つめてくるライオネルに何を言うべきか迷っていると、すかさずアシュレイが声をかけてきた。


「い、行かない、アシュといる!」

「あ、おいっ…!」


これは捨てられてしまう流れだ!と慌てたシルヴィアは、ぴゅんっとアシュレイの後ろに隠れてしまった。


「そうかい?君がそう言うなら嬉しいけれど…久々に会った婚約者だろう?それとも解消するのかな?」

「婚約は解消しない。女神に誓いをたてた婚約だ。そちらが本気でかかってこなくともこの件に関しては一歩も引かない」


何を考えているのか分からない笑顔を浮かべ悠然と構えているアシュレイに、ライオネルは全く怯む事なく言い放つ。そしてご主人様の背から半分身を乗り出すようにしてぴょこんと覗いてきているシルヴィアに目を移し、そのまま無言で見つめる。


「あの、ライ…?」

「可愛い可愛い超可愛い。やばい触りてえ〜、と、聖王猊下はお考えです」


無言で見つめてきているライオネルに動揺しているシルヴィアだったが、彼の横からバースが相変わらずの真顔でしれっと代弁するように言った。


「え…ええっ??」

「やめろバース!こんなところでまで余計なこと言うな!」

「はははっ…!内容の否定はしなくて大丈夫なのかな、聖王様?」


ライオネルは即座にバースを怒ったが、アシュレイの言うように否定はしていない。どうやら図星だったようだ。


「と…にかく、森への探索を開始する。ドルマルク神聖軍は東へ向かう。異論は?」

「ないよ。じゃあハウズリーグ軍は西だ。ま、どうせすぐに地形は変わると思うけどね」


神秘の森は唐突に地響きとともに景色が変わる。どちらを選んだとてどうなるかは誰にもわからない。


「じゃあね聖王様、また会えたらいいね。全軍森へ進軍だ。…シルヴィ、行くよ」


そう言ってアシュレイは颯爽と森の中へと進みだし、晶霊や兵たちも続いた。ぼんやりしていたため少し遅れを取ったシルヴィアも慌ててすぐその背に続こうとすると、ライオネルがぱしっとその手を掴んできた。


「ライ…?」


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