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プロポーズとは

「ハウズリーグ国王の契約晶霊…!?」

「あの…スカート戻してもいいですか…?」


驚くライオネルに、シルヴィアは聞いた。


「え、あ、おう…」

「すけべ…」


自分の内腿を凝視したままのライオネルに少女はぽつりと呟く。


「はぁぁ!?ち、ちげぇし!?」

「尋問だから見せろと迫っていたな」

「それは俺だけじゃなくてワズだって…ってバース!お前はどっちの立場なんだよ!?」


慌てるライオネルにバースと呼ばれた大柄な男は真顔でしれっと言う。その言葉にさらにライオネルは騒ぐ。それは放っておいて、秘書官は尋ねる。


「あなたはハウズリーグ国王と契約している晶霊なのに、嫌がらせなんかで今日の小競り合いに巻き込まれたのですか?」

「はい…。吸精してるところを伯爵の子…ご令嬢に見られて、なんか勘違いされたみたいで…。契約者が不在の時に水の晶霊の1人として戦いに連れて行かれました」


契約晶霊を勝手に連れて行くのは重罪だ。しかも相手は国王。どう揉み消すつもりかは知らないが、伯爵本人も彼女が混ざっていることを知っていたのだろうか?いや、そんなことよりだ。


「そうだよ!吸精!なんでキスすんだよ!?そりゃ誤解もされるわ!」

「だってそういう契約だから…」


ライオネルの勢いに押され、なんでこんなに騒ぐんだこいつという目で見ながら答えるシルヴィア。


「は?えっろ!あの男他にもたくさんの晶霊いるだろ!?男も女もみんなそんなエロい方法で精気分け与えてんのかよ!?」

「見たことはないけど多分…?」

「あんな爽やかそうなツラしてドスケベ王かよ!とんでもねーな!?」


吸精の方法は契約次第だ。とはいえ普通は手を繋いだりすればいいだけなので、わざわざ面倒な方法を取るものは少ない。


「ってかあの男、戦場ではいつももっと高位の晶霊を連れているイメージなのに、なんでわざわざお前みたいな弱そうなのと契約してるんだ??」

「私、美味しい水を出すの得意」


自慢げに空中に水を出してそばにあったコップに注ぐシルヴィア。なんの躊躇いもなくそれを飲むバース。


「うまい」

「でしょう?」

「毒でも入っていたらどうするんだバース!」


平然としているバースに、聖王秘書官ワズは怒る。


「攻撃用の晶霊術を封じる腕輪をしてるんだから本当にただ水を出すくらいしかできないだろ」

「それはそうだが…」

「それよりそんなグルメな理由で晶霊と契約するとか…精気有り余ってんだなあの男」


しれっと答えるバースに呆れる秘書官。ライオネルはしょうもない契約理由に驚いている。


「水は大事だろ。俺の精気をやるからもう一杯くれ」

「いいよ」

「待て待て待て待て!」


真顔で近づくバースに軽く答えようと立ち上がるシルヴィア。それを見てライオネルは慌てて止めに入る。


「そいつの吸精方法は知ってんだろ!?やめろこんなところで!」

「!そうだ、ライオネル様!プロポーズしたって…!」


ライオネルの言葉にはっとしたワズが尋ねる。シルヴィア本人ははてな顔だ。


「プロポーズ?」

「ライが跪いて手を差し出して、お前がキスで答えたろ?あれがそうだ」

「チンピラ座りだったし、したのは吸精だけど…」

「チンピラじゃねぇ!!」


よくわかっていないシルヴィアにバースが説明する。あの時後ろに控えていた中に彼もいた。そしてチンピラ呼ばわりにライオネルは怒っているのだった。


「この国ではそれがプロポーズの成立になってしまうんですよ。互いにそんな意思がなかったとしても。そしてここはドルマルク神聖国。愛を尊ぶ女神を信仰し、そのお力を持って神聖術を行使するんです。それなのに愛を疎かになんてしたら…」

「ライは神聖術が使えなくなるな」

「え!」

「ふっざけんなよマジでお前!!俺の…!俺の…!」


とんでもないことをしでかしてしまったらしい事をシルヴィアはようやく知って驚く。ライオネルは怒りながらも思い出して顔を赤くした。


「ガードが甘かった本人も相当あれですが…。この方がどなたか知っていてやったんですか?」

「山賊かチンピラ?」

「ちげぇよ!!」


秘書官の言葉にとりあえず見たままを答えるシルヴィア。ライオネル本人はまたもや怒っている。


「この方は我らが聖王猊下、ライオネル=ウィル=ドルマルク様です」

「聖王…、え?こんなに口悪いのに?チンピラじゃないの??」


神なんて絶対信じて無さそうな見た目なのにとシルヴィアは驚く。それなのに愛の女神を信仰?冗談だろうか。


「女神様はお心が広いんだよ。口の悪さは関係ねぇ、多分。ほら、神聖術は出せる」


そう言いながらライオネルはバチバチッと手元に小さな雷を出してみせる。


「えぇ〜…、じゃあ大丈夫そうじゃないかな?じゃ、私はこれで…」

「話聞いてたか!?不本意とはいえプロポーズまで成り立っちまった以上、愛をぞんざいには出来ねぇんだよ!」

「そう言われても…具体的にはどうすれば?」

「神の御心は気まぐれなので如何とも…。とりあえずあなたをこのまま帰すわけにはいきません」


あくまで帰ろうとするシルヴィアを止めるライオネル。しかし秘書官も具体的な方法は神次第なのでふわふわでよく分からないらしい。


「うーん…よく分からない…。けど私は晶霊だから、契約者のところに帰らないと精気が切れてはらぺこで死んじゃう…。さっきもちょっとしか食べなかったし…」

「愛のためだ。ライ、食べさせてやれ」

「バース!テメェ人ごとだと思って…!

「死んじゃう…」

「…あーもう!おい!お前!」


訴えてくるシルヴィアをキッと睨むライオネル。


「仕方ねぇから解決法が見つかるまで暫くは俺が分けてやる。だが普通に手から取れ!出来んだろ?」

「出来ない」

「やってもみないで諦めんな!ほら!」


まるで熱血指導者みたいな事をいうライオネルの手をおずおずと握り、んー…!と力を入れるシルヴィア。頑張ること3分。


「…だめ、やっぱりできない。むしろ力入れたらもっとお腹空いてきた…」

「ぽんこつかよお前は!!」


いつまでも怒っているライオネル。彼はエネルギーが有り余ってはいそうだ。


「じゃあ手や口じゃなくて、どっか他のとこから取れないのかよ?」

「あとは…うーん、嫌だけど仕方ないかぁ…」


言いながらライオネルのベルトに手をかけカチャカチャと取ろうとするシルヴィア。


「!?!??」

「ちょっ!待ってください!」


慌てて秘書官がシルヴィアを引き離したが、ライオネル本人は驚きに硬直している。と言うかドン引きだ。


「な、な、な、何しやがる!?」

「え…1番取りやすい方法を…」

「ほ、方法って…??」

「まぐわう?」


平然と答えるシルヴィアにもはや怒髪天になるしかないライオネル。


「ふっっざけんな!!」


聖王猊下の声は王宮中に響いた。



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