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再び魔術の国へ

「…ふぅ。ご馳走様」


いつものように吸精をして離れる2人。…が、シルヴィアがじっとライオネルを見つめている。


「…なんだよ?」

「…ねぇ、ライ。なんか味変わった?」


至近距離で見つめられて顔を赤くしながらライオネルが少し不機嫌そうに問う。そしてその問いによく分からない問いで返すシルヴィア。


「いや知らねぇよ、分かるかそんなん!」

「…なんか前よりまろやかになったっていうか、甘くなったっていうか…」

「はあ!?」

「…さらに美味しくなってる。もっと食べてもいい?」


ずずいっ!と迫るシルヴィア。いいわけないだろ!といつもなら返すのだが…。


「…少しだけな」

「ありがとう!…んっ…」


なぜか今日は優しいライオネル。この機に存分に味わうシルヴィアだったが…。


ドンドンドン!


「おいライ!そろそろ行くぞ!」


扉を叩いてくるバースに阻まれた。仕方なく彼女はライオネルから離れる。


「むぅー。せっかく味わってたのにぃ」

「味わうとか言うな。…ほら、お前も行くぞ」


不満そうなシルヴィアの手を引くライオネル。そのまま2人は扉へと向かう。


「まぁいいや。行軍中はいつでもお弁当がそばにあるわけだし」

「人を弁当とか言うな!」


これから向かうのは魔術国。今ようやく先王の敵討ちに向かうのだ。


「ライオネル様!」


部屋を出ると真っ先に声をかけてきたのはバースではなく、その妹ミアンナだった。


「あなた様の勝利と、ご無事のお戻りお祈りしておりますわ!」

「ああ、ありがとう」


熱のこもった目で見るミアンナをさらりとかわすライオネル。慣れている対応のようだ。


「…今日も、騎士の誓いはしてくれませんのね」

「ミアンナ、いい加減諦めろ」


何やらしゅんとした様子のミアンナを兄のバースが横から嗜める。


「聖王たる俺が誓うのは女神エスメラリアただお一人だ。何度も言わせるな」

「…誓い?」

「いいから行くぞ。大したことじゃない」


この国の風習か何かだろうか?よく分からず聞き返したシルヴィアだったが、ライオネルは答えなかった。ミアンナの様子から考えるに大したことじゃなくなさそうだが、言えないなら多分すけべなことなのかなと判断する。愛の女神は結構エロいみたいだし。


「…おい、なんかまた無礼なこと考えてないか?」

「ん?大丈夫。行こう、大したことじゃない」


シルヴィアの微妙な表情から何かを察したライオネルだったが、先ほどの自分を真似したような言葉で流されて何も言えなくなる。

ちなみにいつもなら解説してくれそうなバースは妹を振り払うのに苦労していた。


とにはかくにも魔術国への進軍開始である。


――


進軍中、野営地にて。


「え、天幕別なの?」


行軍中日が暮れて来たためまた天幕を張ることになった。シルヴィアとしては前回同様ライオネルと一緒の天幕かと思っていたのだが…。


「当たり前だろ!お前は1人で俺の天幕の隣!」

「えー、いつでもご飯がそばにある暮らしかと思ったのに…」

「だから俺のことご飯とか呼ぶな!」


なおも食い下がる、食いしん坊シルヴィアにライオネルは怒る。ライオネルとしては前回から色々と心境の変化があったのに対し、一貫して食事としてしか見てなさそうな彼女になぜだか腹が立つ。


「同じ天幕だとライが寝れないんだ。理解してやれ思春期だぞ」

「バース!」


横槍を入れてくるバースの言葉に顔を赤くするライオネル。こいつはフォローのようでただからかっているだけなのではなかろうか。


「さっきの見事な結界張りを見ただろ?あれは煩悩の分だけ強まった結界だ」

「ってめぇ適当なこと抜かすなバース!」


周りで聞いている聖騎士たちは、今日も聖王様は不憫だなと思っている。しかしそんな聖王様が最初の頃よりずっと婚約者を憎からず思っているのは明らかだ。女神の神罰を恐れるだけでなく、先日見せた2人の愛の奇跡の噂を信じる者も多い。聖王様の青春を温かく見守るため、今はもう彼女に悪さなどしようと思う者はいなかった。


「思春期って大変なんだね…」

「総大将を思春期呼ばわりするなお前ら!」


憐れみの目で見るシルヴィアに怒るライオネル。とはいえ彼女は一応納得したのかしぶしぶ自分の天幕に入ろうとする。しかし振り向きざまに一言つげる。


「食べてもいいなら教えてね。晶霊は眠らなくてもいっぱい食べれば体力回復するから」

「え…」


そういうと、少女はばさりと天幕の中に消えて行った。


「…襲われてもいいなら来いって言ったな」

「…ワイルド系なのあいつなんじゃねぇか?」


バースすらやや引き気味に今の発言を解説した。ライオネルにはこれが女神様の試練なのかちょっと分からないが、神に遊ばれていることだけはわかったのだった。


――


翌日。特に何も障害はないまま聖王軍の行軍は進んだ。


「…妙だな」


どこまで進もうと一向に敵軍が迎え撃って出てくる気配がない。すでに宣戦布告はしてあるのにだ。


「このままだと何もないまま町に着いちまうな」

「町に着いたら蹂躙して女子供を襲うの?」

「だから山賊じゃねぇ!」


シルヴィアの言うことを怒って否定するライオネルだったが、それより嫌な予感がした。


「ライ、斥候が戻ってきたぞ」


バースが戻ってきた兵の1人を連れてくる。そしてその兵が叫ぶ。


「申し上げます!町は今火の海にございます!」

「は?」

「魔術諸侯連合国ブロア領マグネスの町が燃えております!」

「はぁぁ!?」


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