表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/156

第99話 答え合わせ

挿絵(By みてみん)




 針葉樹の森に残る最後の挑戦者は蓮麗。


 神に挑んだ人たちは、ことごとく敗北した。


 生死不明で、救助されたかどうかは分からない。


 仮に生きていたとしても、加勢に来るとは思えない。


 孤立無援で、立ち向かわないといけない状況だと言えた。


「さて、邪魔者もいなくなったところで、再演と参りましょうか」


 炎上する樹々を背景に、仕切り直すのは少年。


 その内に宿る神が、上から目線で偉そうに語る。


 実際、語れるだけの資格も実力も兼ね備えていた。


 数回の攻防とはいえ、体術とセンスの実力差は明白。


 生存を前提に考えるなら、逃亡が最善の選択に思えた。


「御託を並べる暇があったら、さっさとかかってきたらどうカ?」


 ただ、やられっぱなしはムカツク。

 

 神に歯向かう理由は、それで十分だった。


「では、お言葉に甘えさせて……もらいますよ」


 挑発を受け、白き神は行動を開始する。


 やや腰を落とした姿勢で、地面を蹴りつけた。


 気付けば、至近距離。拳が届く間合いに入っている。


(どうせ死ぬなら、試してみるカ……)


 蓮麗は全てのリソースを、視神経に費やした。


 回避も防御も捨て、直撃が免れない状況を作り出す。


 全ては神のからくりを見破るため。命を賭した博打だった。


「――――」


 その間にも、白き神の両拳が懐に迫った。


 実力を考えれば、まともに受ければ死が見える。


「……」


 それでも、蓮麗は動かなかった。


 静観を貫き、無防備な状態を続けている。


(我の勘が正しければ……恐らく……)


 冷静でいられたのは、直感によるもの。


 数回の攻防で感じ取った、些細な違和感だった。


 客観的な証拠はないものの、答え合わせが今、行われる。


「「……………」」

 

 密着した間合いで、流れるのは沈黙だった。


 それは、好戦的な台詞と態度の対極にある動き。


 白き神が放つ掌底は、懐に届く寸前で止まっている。

 

「成程ネ……。腐っても、神というわけカ……」


 博打の成果。観察の収穫。直感の証明。


 客観的な事実を前にして、蓮麗は確信に至る。


 偶然でも気まぐれでもなく、答えは行動で示された。


「無害の相手は殺せないみたいネ。例え、魔神の契約者であっても」

 

 蓮麗は、相手が抱える欠陥を端的に告げる。


 あくまで脅威の対象は、害意を発した人間のみ。


 攻められた場合にだけ反撃する、機械的な防衛機構。


 実際、手を出した時だけ動き、少し上回る力で返された。


 ――恐らく、迎撃型の能力なら最強。


 受け幅に上限はなく、世界規模の力でも返せるはず。


 仕組みを知らなければ、いかな達人でも絶対に勝てない。


 裏を返せば、迎撃型だと分かっていれば、攻略は可能だった。


「思ったよりも聡いようですね。……では、少し味変といきましょうか」


 不穏な台詞を残すと、白き神は逃亡を果たす。


 思ってもみなかった結末。神と立場が逆転していた。


 殴られた鬱憤が少し晴れた気がしたが、どうも引っかかる。


(嫌な予感がするネ……)


 胸騒ぎが収まらず、蓮麗はすぐさま、逃亡者の背中を追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ