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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第96話 破格の条件

挿絵(By みてみん)




 薄暗い玉座に座っていたのは、かつての仲間。


 魔神と名乗る、赤いチャイナ服を着た蓮妃がいた。


 恐らく、肩書きから考えれば、悪魔界隈の最高権力者。


 過程はどうあれ、再開を喜びたい思いがないわけじゃない。


 ――ただ。


「……何が目的っすか?」


 嫌な気配を感じ取り、メリッサは尋ねる。


 容姿、体格、服装、声音、全てがほぼ同じ。


 角、羽根、尻尾の悪魔的特徴を除けば、人間。


 でも、どこか引っかかる。同じように絡めない。


『久方振りね、メリッサ』


 頭に木霊するのは、先ほどの蓮妃の言葉。


 同じ時間軸を歩んだ彼女なら、こう言わない。


 別れたのは最近。時間的な矛盾があるのは明らか。


 それも、ぽっと出の新入りが、魔神にはなれないはず。


 恐らく、過去に戻り、悪魔化してから、数千年経っている。


 ――その過程で人格が変わった可能性が高い。


 真偽はどうであれ、警戒するに越したことはなかった。


「冷たい反応ね。……まぁいい。我と博打をしないか?」


 蓮妃は足を組み、上から目線で目的の一部を明かす。


 邪推かもしれないけど、嫌な予感が当たったような気がした。


「内容と報酬とリスク次第っすね」


 勝負を受ける立場として、当然の権利を述べる。


 提案してきた以上、強制力はないと見るのが妥当だった。


「白き神と魔神契約者の勝負。どちらが勝つかを賭けるよ。当たれば、自由放免。元の身体に戻した状態で、人間界に帰す。……ただ、外れれば、一生奴隷。成果を上げても評価されず、悪魔界の最底辺で終わりのない作業を続けてもらうね」


 パチンと指を鳴らし、蓮妃は勝負内容を告げる。


 目の前には、四匹の蝙蝠が集まり、四角形を作った。


 そこには映像が表示され、燃える森と男女の姿が見えた。


 紛れもなく、バトルフラッグの世界。死んだ後に流れる時間。


「破格すぎる条件っすね。何か裏があるんじゃないっすか?」


 内容を前向きに受け止めつつも、胡散臭さを感じる。


 悪魔に堕ちた時点で、負けるデメリットはないに等しい。


 評価されようが、されまいが、命を奪う仕事には変わりない。


 ――奴隷以下の存在。


 少なくとも、自分にとって何も不都合がなかった。


 それを見抜けないほど、蓮妃が衰えてるとも思えない。


 好条件を提示したのは、必ず理由があると見るべきだった。


「……裏とは例えば、なんのことか?」


 蓮妃は知らん顔で、試すような質問をした。


 すでに勝負は始まっている。曖昧な返事は出来ない。


「未来を知った上で、勝負を吹っ掛けてる、とかっすね」


 メリッサは鋭い目線を向け、魔神に告げた。


 憶測ではあったけど、当たっている自信はあった。


 彼女の能力は不明でも、未来予知できる悪魔は必ずいる。


 ――未来を知っていれば、絶対に負けない。


 だからこそ、破格の条件で勝負を持ち掛けてきた。


 そう考えれば辻褄が合うし、向こうの損失は関係ない。


「だとすれば、断るか? それでも別に構わナイよ」


 蓮妃は、肯定も否定もしなかった。


 ただそれは、半ば事実を認めたようなもの。


 断る余地を与えて、勝負に誘導しようともしている。


(罠なのか……それとも……)


 出揃う条件を踏まえ、あらゆる可能性を考える。


 思考を巡らせるのは、今までに蓮妃が発した言葉。


 それらを考慮していけば、自ずと答えは見えてきた。


「仕方ないから、乗ってやるっすよ。それが、ありのままのうちっすから」


 メリッサは条件を呑み、勝負が成立。


 魔神との予期しなかった博打が始まった。

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