表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
95/156

第95話 魔神の正体

挿絵(By みてみん)




 脳裏にこびりつくのは、紫色の光とアザミの曇った顔。


 やりたいことを託し、バトルフラッグのルールに殺された。


 そこで人生は終わった。大した爪痕も残せず、敗北に終わった。

  

 ――ただ、何もかもが終わったわけじゃない。


「…………」


 冴えた頭でメリッサは、ゆっくり目を開く。


 見えたのは、空の玉座と、その周りに並ぶ燭台。


 赤い火が揺らめき、必要な場所だけを照らしている。


 ――立っているのは、玉座の前。


 影になっているものの自分の姿は確認できた。


 白のスーツを着せられ、ドレスコードはバッチリ。


 角、羽根、尻尾の感触を確かめながら、状況を察する。

 

「出てきたらどうっすか。うちに話があるんすよね。……悪魔界の王」


 メリッサは確信をもって、空の玉座に問いかける。


 冥戯黙示録で負ければ、悪魔界に行くのは聞いていた。


 シチュエーションから考えれば、王の謁見以外あり得ない。


「――――」


 すると、玉座に集まるのは無数の蝙蝠。


 期待通りの演出に、鳥肌が立つのを感じる。


 姿を現すのは確定。問題は王の性格と話の内容。


 場合によっては、即戦闘になる可能性も考えられた。


「……」


 メリッサは静かに身構え、その時を待つ。


 体質は据え置き。異能を扱える感覚もあった。


 むしろ、悪魔化した今、それ以上の何かを感じる。


 相手が王だろうと神だろうと、負ける気がしなかった。


 ――やがて、蝙蝠は収束する。


 人の形を成し、角と羽根と尻尾を付け加える。


 その体表面に纏われるのは、赤い布地の服だった。

 

 ドレスのようでありながら民族的な刺繍が入っている。


 描かれるのは鳳凰。死と再生の象徴。永遠に生き続ける鳥。


「……っ!!?」


 顔が形作られる前に、メリッサは正体を予見する。


 まだ確定したわけじゃない。外れている可能性の方が高い。


 ――だけど。


 前後関係と、状況証拠でギリギリ繋がる。


 時間的矛盾を一切考慮しなければ、あり得る。


 元仲間であり、手紙で別れを済ませたはずの存在。


 数千年前には中国を統一し、始皇女帝と呼ばれた豪傑。


「蓮、妃……?」


 メリッサは、思うがままに名前を口にする。


 次第に顔が形作られていき、悪魔の正体は確定した。

 

「久方振りね、メリッサ。魔神としても一個体としても、悪魔入りを歓迎するよ」


 彼女がここに至るまでの過程は、一切不明。


 ただ、別れた仲間と再開できたのは確かだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ