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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第91話 バトルフラッグ㊶

挿絵(By みてみん)




 針葉樹の森、上空。進行者プログレッソル内、胸部コックピット。


 正面モニターに映るのは、焼けた大地とバニースーツ。


 火の手が上がり、煙がたなびき、徐々に勢いを増していく。


 残ったのは、勝者のみ。奇襲により、欲望を叶えた悪魔がいた。


「しゃあ!!! 手中に収めたぞ、お前の全てを!!!」


 アサドは操縦席で、熱く拳を握り込む。


 それは、冥戯黙示録に参加した目標の達成。


 ひいては、その先にある目的の足がかりとなる。


「あいつさえ率いれば、俺は魔神に……」


 決して尽きることがない、強欲の最終到達点。


 悪魔界における最高権力者の地位。それが、魔神。


 全悪魔の支配者であり、直接的な指揮権を持っている。


 命令に逆らうことはできず、断れば存在そのものが消える。


 最上位級悪魔。十二貴族の面々であろうと、条件は変わらない。


「と……ゲームはまだ終わってなかったな」


 アサドは高い壁を認識し、ふと現実に立ち返る。


 勝ち誇るのは、今じゃない。魔神の座についた時だ。


 その頂に至るまでは、手を抜いてやるわけにはいかない。


「行きがけの駄賃だ。その他大勢の命も、ついでにもらってやるよ!!!」


 次に矛先を向けるのは、優先すべき脅威。


 メインカメラに対象を映し、操縦桿を操作する。


 そこに映し出されるのは、道路上で身構える脇役三名。


『――――』


 空から落ちる進行者プログレッソルは、再び口を開く。


 口内に秘められている武装は、荷電粒子砲。


 電子を生成、加速して、目標物に撃ち放つ兵器。


 威力もさることながら、最も脅威と言えるのは速度。


 光速の99%。亜光速と呼ばれる勢いで、発射されている。


 光った頃には命中する。人間の身体能力では、回避が難しい。


 能力やセンスで察知できたとしても、撃ち放った後なら手遅れだ。


 ――警戒すべきは、撃つ前。


 電子を生成、加速するタイミングが弱点。


 必ずタイムラグが発生し、無防備な状態になる。


「撃たれたら終わりって、気付いてんだろ。来るなら来いよ」

 

 準備段階に入る中、注視するのは正面モニター。


 特に、強化外骨格パワードスーツを装着した野郎に注目していった。


 生き残った参加者の中だと、最も邪魔できる確率が高い。


 あの性能と運動性を考慮すれば、発射直前に到達できるはず。


 奇襲される角度によっては、主砲に頼れない可能性も十分あった。


「…………」


 ジリジリとした空気を感じ、操縦桿を握る手には緊張が走る。


 進行者は重力に引かれ落下中。読み合いが発生するのは、着陸時。


 そのタイミングで荷電粒子砲の準備は完了。同時にそこで、接敵する。


 ――着陸まで0.1秒。


 反応が遅れれば、狩る側が、狩られる側に回る。


 接敵の瞬間だけは、気を抜くわけにはいかなかった。


『――――――』


 口内の加速器が唸りを上げる中、その時は訪れる。


 地面への着陸。ミサイルで粉々になっている道路の上。


 辺りは針葉樹に囲まれていて、見通しがいいとは言えない。


 よく見えるのは正面の道路と、道路上に立っている二人の男性。


 ――そして、正面から堂々と迫る強化外骨格パワードスーツ


 ベクター=♡♥


 ヘケト=♡♥

 

 一鉄=♡♥


 表示されるライフは、残り一つとなっている。


 受け攻めをいくらか考えた上で、最も愚かな選択。


 陽動だろうがなんだろうが、悪手にもほどがある行動。


「あぁ……たまんねぇなぁ、おい。馬鹿には馬鹿をってか。上等だ!!」


 むしろそれが、敵として好感を持てた。


 感情が滾り、センスは昂ぶりを見せていく。


 それに応じるように加速器は作動し、準備完了。


 照準は正面を捉え、後はスイッチを押すだけの状況。 


 射線上には、脅威と認定していた三人が揃っている状態。


「仲良く、まとめて逝けや!!! 三馬鹿が!!!!」


 アサドは、景気よくスイッチを押した。

 

『――――――ッッ!!!!』


 そこで放たれるのは、二度目の荷電粒子の発射。


 メリッサを成す術なく葬った兵器が、再び産声を上げた。

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