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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第89話 バトルフラッグ㊴

挿絵(By みてみん)




 進行者プログレッソル内、胸部コックピット。


 中央モニターには、三人の挑戦者。


 右モニターには、白き神対人間の戦い。


 左モニターには、森を駆ける二人の女の姿。


 正面は頭部カメラ。左右はドローンが補佐する。


「おいおい、どれも目が離せねぇな」


 操縦席に座っているアサドは、おおよそ把握していた。


 三方向からの会話を盗み聞き、一通りの流れを追っている。


「ま……本命はこっちに決まってるが」


 おもむろに目を向けるのは、左のモニター。


 アップになっていくのは、紫髪のバニーガール。


 意思の力に依存しない異能を、複数持っている存在。


 ダメージを受け続ける限り、半永久的に動き続ける兵器。


 巷では特異体イレギュラーと呼ばれているが、その枠組みには収まらない。


単独軍団ソロ・レギオン。あいつさえ狩れれば、何でもいい」


 目星をつけていた上玉を前に、本音が漏れる。


 冥戯黙示録を開いた目的は、各陣営の戦力の増強。


 頭数が欲しいか、腕が立つやつか、頭が切れるやつか。


 担当する悪魔により、千差万別。取り入れたい輩は異なる。


 ――いわば、悪魔流の採用試験だ。


 御眼鏡に適う人材がいれば、贔屓ひいきする。


 美人か否かで、採用倍率が変わるのと同じ。


 人間でも悪魔でも、根っこの部分は変わらない。


 ――採用者の欲望が他人の運命を左右する。


 そこに、公平や平等なんてもんはない。


 だからこそ、危険を承知で前線に出てきた。

 

 あいつを支配するためだけのルールを用意した。


「絶対に俺の手駒にしてやるぞ……女ぁ!!!」


 アサドは己の欲望を全開にして、操縦桿を強く握る。


 その感情は七つの大罪に数えられ、強欲と呼ばれていた。


 ◇◇◇


 進行者プログレッソルは背中を向けると、高く跳躍する。


 寸断されている道路からは、姿を消していた。


「眼中にない、だと……」


 強化外骨格パワードスーツを纏うベクターは、一部始終を見ていた。


 土下座までして他人を頼り、共闘する手筈を整えた直後。


 神経を逆撫でするような光景を前に、開いた口が塞がらない。


「立ち往生していたのは、『獲物を選んでいた』というわけか」


 一鉄は、表情を変えることなく冷静に語る。


 状況から考えて、間違いない。ただ、気になるのは。


「……なんだか、人間みたいだね。中身はAIのはずなのに」


 生じた違和感を、ヘケトが言語化する。


 進行者の弱点も、詳細もすでに聞いている。


 図面通りなら、人が乗れる仕様じゃないらしい。


 しかし、ここは独創世界。いくらでも隠蔽は可能だ。


 現実世界とは違い、舞台を都合よく変更できる者がいる。


「いいや、こいつの中身は恐らく……」


 ベクターは、答えを口にしようとした瞬間。


『ワォォォオオオオオン!!!』


 天空から聞こえてきたのは、狼の遠吠え。


 大きく口が開かれ、丸く収束するのは紫色の光。

 

 狙いは見当違いの方向。放置しても生死に直結しない。


 ただ、武装の詳細を知っている。二人からすでに聞いている。


 それは、現実世界では未だ日の目を浴びない、空想上の近未来兵器。


「荷電粒子砲……っ!!!」


 口にした瞬間、光は臨界点を迎え、地上へと照射。


 眩い紫光が夜闇を切り裂き、針葉樹の森を焼き払った。

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