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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第87話 バトルフラッグ㊲

挿絵(By みてみん)




 般若無道流の本質は、暗殺拳。


 骸人を殺すために研ぎ澄まされた流派。


 同時に、意思の力を体系化した源流でもあった。


 般若心経をベースとし、あらゆる苦難や難敵に対応する。


 ――その型は五つに分類される。


 色。物質破壊に特化した型。


 受。精神掌握に特化した型。


 想。心象創造に特化した型。

 

 行。意思形成を主とする型。


 識。対象認識を主とする型。

 

 識と行を基本の型。想、受、色を応用の型とした。


 全てに精通する必要性はなく、自分に合う系統を極める。

 

 後に肉体系、感覚系、芸術系と分類。基本修行は禅と呼ばれた。


 ――奇しくもこの場には、系統ごとの達人が揃う。


 肉体系特化の広島。


 感覚系特化の蓮麗。


 芸術系特化のバグジー。


 三人の視線の先には、少年がいる。


 白き神を宿した、ジェノ・アンダーソン。


 今や主人格を神に奪われ、表に出ることはない。


 樹々の奥手に見える進行者プログレッソルは眼中になく、目的は同じ。


 ――ジェノを主人格に呼び戻すこと。


 神格化の末期状態では、声が一切届かない。

 

 そこで彼らが選んだ方法は、原始的なものだった。


「「――――――」」


 地面を同時に蹴ったのは、広島とバグジー。


 身体にはセンスを纏い、直線的な動きで攻めた。


 万全の体勢で身構えている白き神へと吶喊していく。


 ――振るわれるのは拳と、二刀のククリ。


 バトルフラッグのルール上、収集品以外の通常攻撃は無効。


 どちらも収集品ではなく、ダメージが与えられる状態ではない。


 ただ、意思の力が扱えるようになった今、ルールは崩壊しつつある。


「「――――っ!!!」」


 衝突と同時に、零れ落ちたのは微量の血液だった。


 両者共に口端から血を滲ませ、確かなダメージを受ける。 


 その身体は反対方向に飛んでいき、針葉樹をなぎ倒していった。


「色と想の敷居も随分下がりましたね……。やはり、無害」


 一方、白き神は当然のように無傷だった。


 遅れて飛来するククリを避け、残る敵を見ている。


「……」


 蓮麗はごくりと息を呑み、静かに構えた。


 系統は感覚系。体術面の補強は他系統に劣る。


 肉体強化は肉体系。飛び道具は芸術系が専売特許。


 その代表格の二人が破れた以上、同じ手は通用しない。


 どちらかの手法を真似ようとしても、半端な出力で終わる。


 肉体系の頂上に位置する白き神が相手では、極めて不利な状況。

 

 頼れる仲間は離れ、鍛錬不足と言われた体で孤軍奮闘を強いられる。


「余の見立てでは、貴方は有害。相応の活躍を期待していますよ」


 ただ白き神は、誰よりも彼女を評価していた。


 主催である最上位級悪魔よりも、興味を示した存在。


「黙れ、喋る災害。マカオの地に足を踏み入れたことを後悔させてやるヨ」


 蓮麗は挑発に応じ、神との一騎打ちが始まった。

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