第79話 バトルフラッグ㉙
進行者内。胸部コックピット。
右側のモニターには、人間が二人。
針葉樹の上で、敵対する様子が伺えた。
四足歩行兵器に、微塵も興味を示してない。
「メインイベントをガン無視か……。いいご身分してやがる」
アサドは憤りつつ、手元のタッチパネルを操作。
画面を二度ほどタップすると、拡大表示されていく。
ジェノ=♡♥
メリッサ=♡♥
互いに残されたライフは、一つずつ。
進行者の攻撃には、ダメージ判定がある。
軽く一発当ててやるだけでも、命に手が届く。
「舐めた態度を取るなら、こっちにも考えがある」
戦闘の合間を縫い、アサドは更にパネルを操作する。
画面は解像度の高い映像から、赤外線探知に切り替わる。
全体的に青みがかる中、熱源反応があるものを赤く映し出す。
周囲にいる人を自動で読み取り、標的捕捉。いつでも撃てる状態。
「後で文句言うなよ。悪魔界には、裁判も弁護士も国際人道法もねぇからな!」
一切のためらいを見せず、アサドは画面をタップする。
発射の合図であり、進行者は指示に従って、背面を開いた。
『――――』
そこから射出されていくのは、大量の白い筒だった。
噴射口から炎と煙を放ち、あらゆる角度から攻め立てる。
高感度センサーにより、人の熱源のみを感知し、逃がさない。
軍事目標の破壊ではなく、人の殺害に重きを置く、大量殺戮兵器。
――対人誘導ミサイル。
対象になったのは、周囲にいた四名。
放たれたミサイルの数は、二十発にも及ぶ。
一人に対し、約五発の非人道兵器が襲い掛かった。