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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第77話 バトルフラッグ㉗

挿絵(By みてみん)




 両手に操縦桿を握り、モニターを熱く見つめる悪魔がいた。


 ズームで表示されるのは、第三ゲート付近にいるプレイヤー。


 黄金のセンスを纏い、進行者プログレッソルを前に体一つで挑もうとしている。


「こいつで二人目か。ルールに例外は付き物だが、ここまでくると笑えてきやがる」

 

 アサドは、起きた事実を淡々と受け入れる。


 言葉とは裏腹に、大真面目な表情を作っていた。


 理由はバトルフラッグが行われている舞台にあった。


 ――独創世界『鋼鉄要塞スタルノイグラード


 本来の用途は意思の力を封じ、銃撃戦に重きを置かせる場。


 旗の争奪は後付けで、得意分野に相手を引きずり込むのが趣旨。


 センスを使われるのは、企画倒れ。ルール違反もいいところだった。


 バグと切り捨て、思考停止したいところだが、原因はハッキリしている。


「マルチタスクだったかね。本物を抑え込むには、容量が足りねぇか」


 アサドは否を認め、現状の改善点を思い浮かべた。


 意思の力を封じる空間。この一点特化型シングルタスクなら問題ない。


 格上が相手だったとしても、抑え込めるだけの縛りになる。


 だが、発電所、高炉、化学工場、NPC、アイテム、進行の管理。


 ここまで条件を加えると、器用貧乏型マルチタスク。どうしても拘束力が弱まる。


 ――恐らく、同格以上の相手には通用しなくなる。


 意思の力の根本は、心の強さ。


 独創世界は、その力の延長線上だ。


 マルチタスクをすれば、自信が揺らぐ。


 破られるかもしれないと心のどこかで思う。


 結果的に世界が歪み、強者にルールを破られる。


 これを機に、意思封じが、形骸化する可能性も高い。


 欠点を自覚した以上、世界が崩壊する危険性すらあった。


 ――ただ、悪い意味合いばかりでもない。


「ま……久々の上物だ。簡単にはくたばってくれるなよ!!!」


 今の理屈が正しければ、相手は最低でも同格以上。


 操縦桿を操り、アサドは進行者プログレッソルの右脚部を勢いよく振るった。


「――――ッッ!!!!」


 その期待に応えるように、一鉄は杖刀を振るう。


 ガキンと尋常ならざる剣戟音を奏で、火花を散らす。


 振るったのは、重量500トン以上の巨体から放たれた爪。


 物理的イメージなら、受け止められても、潰されるのが普通。


「おいおいおいおい……」


 しかし、モニターには、爪を易々と受け止める敵の姿。


 それどころか、やや押されるぐらいの膂力を確かに感じる。


 独創世界のルールも、物理における常識も一切通用しない相手。


「人間ってやつは、これだから――ッ!!」

 

 紛れもない本物を前に、アサドの意識は闘争に溶けていく。


 その間、約5秒。電磁投射砲レールガンのチャージが完了するまで、残り55秒。

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