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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
55/156

第55話 バトルフラッグ⑤

挿絵(By みてみん)




 紛争の間。発電所内は暗闇に満ちている。


 施設中央に設置される、蒸気タービンが損傷。


 工場地帯全域を担う、電力供給が遮断されていた。


「Блядь!(ちくしょう!)турбину повредили!!(タービンをやられた!!)」


「подтверждать(確認する)Прикрои меня(俺を援護しろ)」


 発電所外で響くのは、軽快なロシア語だった。


 思念通話の副次効果で、頭の中に自動で翻訳される。


 直後、複数の足音が重なり、施設に入ってくるのが分かる。


 ――相手は完全武装したNPC。


 最低でも、自動拳銃以上の装備を持つ。


 しかも、収集品を通さない通常攻撃は無効。


 ライフは二つで、正面から相手するのは絶望的。


「……で、こっからどうするつもりなんすか?」


 メリッサは、タービンを壊した男、マクシスに問いかける。


 結局、旗は見つからず、セカンドプランに移行する形になった。

 

 存在自体は知らされていたものの、詳しい内容は聞かされていない。


「暗闇に乗じ、武器を現地調達する。索敵は頼むぞ。――特異体イレギュラー


 ストレートな物言いで、結論を告げる。


 余計な情報は一切なく、すんなりと理解できた。


 意思の力は無効でも、体質そのものを無効にはできない。


「そういうことなら、お任せあれっす。――隊長キャプテン


 今まで見聞きした情報を込み込みで、プランを立てた。


 市街戦のノウハウ以上に、人の個性を引き出す能力が高い。

 

 味方で良かったと心から思いつつ、許された異能に意識を注ぐ。


「十二時の方向、距離八メートル。人数二人。正面入り口を十秒後に通過っす」


 影の感触を確かめ、敵の情報を的確に言語化する。


 停電した今なら、鉄砲による射程格差は一気に縮まる。


 ここはサポートに徹し、プロに任せておくのが安牌な状況。


 そんな保守的考えを後押しするような条件が、揃いに揃ってる。


「上出来だ。私が戻ってこなければ、捨て置け。……いいな?」 


 当のマクシスは、今にも飛び出しそうな勢いで語る。


 普通は見送る。身を潜め、見物を気取り、戦果を待つ。


 楽して利益を得られるのなら、それに越したことはない。


 何も間違ってないし、本人の口から見物を推奨されている。


 昔なら迷いなくそうした。エゴと利己主義を徹底的に貫いた。


 ――だけど、最近、考え方が変わった。


「捨て置かないよう、うちも同行するっす。……いいっすね?」


 ジェノ・アンダーソンなら、他人を見捨てない。


 瞳に焼き付いた憧憬が、心に根付き、思想を変える。

 

 実年齢が幼いメリッサに、人格形成の時期が訪れていた。


「今ので三秒無駄にした。その分の補填はできるのだろうな?」


「誰にナマ言ってんすか。この環境下において、うちは最強っすよ」


 会話に浪費した時間は、六秒。接敵までは、四秒。


 その間に方向性は定まり、二人の足並みは揃っていた。


 ◇◇◇


「「…………」」


 暗闇の発電所内には、ドサッと倒れる音が響く。


 数度、銃声が鳴ると、やがて動かなくなっていった。

 

「サーマルサイトとは恐れ入ったな。不覚を取るところだった」


「斧付きショットガンとは、敵の割には、いいセンスしてるっすね」 


 NPCを二度ほど殺し、戦果を得たのは二人。


 ライフを削られることなく、新たな武器を入手。


 マクシスは、サーマルサイト付きアサルトライフル。


 メリッサは、斧付きショットガンを装備し、先に進んだ。

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