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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第52話 バトルフラッグ②

挿絵(By みてみん)




 工業地帯から歩みを進め、たどり着いたのは、発電所に通じる搬入口。


 車の出入りを管理する入場ゲートがあり、付近のコンテナ裏で停止する。


 中腰の体勢で座り込み、背中合わせの状態で、束の間の休息が訪れていた。


「背後は見ておく。正面で分かったことがあれば、報告してもらえるか?」


 マクシスは辺りを警戒しつつ、静かに言った。


 ここまで武器は拾えず、回収したアイテムもなし。


 拾った武器でしか敵を倒せないルール上、丸腰に近い。


 仮に敵と遭遇すれば、成す術なく、蹂躙されてしまう状態。


 だからこそ、声音は真面目そのもので、緊張感が伝わってくる。


「…………了解っす」


 コンテナから顔を出し、メリッサは真剣に偵察を始めた。


 搬入ゲートは一つ。その周辺は有刺鉄線フェンスに囲われる。


 ゲートを抜けた先には、変圧器、送電鉄塔、発電施設が建ち並ぶ。

 

 施設同士は複数のパイプが接続され、奥にある製鉄所に繋がっていた。


 恐らく、鉄鉱石を熱処理する際に生じる、ガスの圧力を利用した発電方法。


 ――炉頂圧ろちょうあつ発電。


 電力は、製鉄時の熱エネルギーで自給自足。

 

 外部から引っ張ってくるより、遥かに効率が良い。


 独創世界なのに、現実と思うほどのリアリティがあった。


「入り口はゲートのみ。人影はなし。電力は製鉄所に依存してる感じっすね」


 メリッサは、視覚的に得た情報を簡潔にまとめる。


 これまでの行動方針は、全てマクシスに一任していた。


 理由は、実際の戦場で市街戦の経験していたことが大きい。


 ダンジョンでの経験はあっても、市街地での戦闘は慣れてない。


 餅は餅屋。下手に口出しせず、プロに頼るべきと考えた結果だった。


「……やはり、ここを最初に選んで正解だったようだな」


 するとマクシスは、調子良さげに語る。


 開始地点近辺から、選べたルートは三つ。


 製鉄所。発電所。化学工場。このいずれか。


 なぜ、ここを選んだのかは不明なままだった。


「具体的には、どういうところがお気に召したんすか?」


 すかさずメリッサは、探りを入れた。

 

 発言内に気に入ったものがあるのは確定。


 回りくどいことは言わず、本題に切り込んだ。


「警備が手薄な点と、発電方法を知れた点の二つ。……こいつは攻略が捗るぞ」


 声を押し殺しながらも、熱がこもっていた。

 

 確かな手応えを感じているような反応を示している。


「前者は……まぁ、分かるっすけど、後者はなんでなんすか?」

 

 ただ、分からない部分も多い。


 無知を自覚しつつ、質問を重ねた。


「まず前提として、旗は全部で三枚あると言われていたが、恐らく、製鉄所、発電所、化学工場にそれぞれ一枚ずつ配置されると考える。その中で、難易度が低い地点を攻略した方が効率がいいわけだが、警備が手薄な時点で、低難易度は確定。最初に選ぶ地点としては大当たりだ。デメリットとして物資がしょっぱいが、旗を楽に見つけやすい状況にある。ここで見つかれば、万々歳だが……旗を見つけられなかった場合にも、セカンドプランとして、ここの発電方法が役に立つ」


 淡々と語られるのは、概要だった。


 具体的なプランの内容とは言えないもの。


 ここを選んだ筋は通るも、疑問は解消されない。


「いや、具体的にどう使うか、聞いてるんすけど」


「今は考えなくていい。ここで旗を見つけることだけに集中しろ」


 望んだ答えは返ってこず、少しモヤッとしたまま、発電所に歩みを進めた。

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