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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第50話 調停

挿絵(By みてみん)




 エレベーターの扉が開くと、視線が一斉に集まる。


 大半がセンスを纏い、修羅場になる一歩手前の状態。

 

 こうなった理由も、経緯も、勝負の内容も、一切不明。


 ただ、タイミングだけは悪くない。そんな気がしていた。


「……今の状況を、誰か簡潔に教えてくれませんか?」


 ジェノは一切の物怖じをせず、堂々と発言する。


 危機感や恐怖心の欠如。失敗するリスクを考えない。


 戦局を左右する一言だと理解しながら、一歩前に進んだ。


「「「「「………………」」」」」


 しかし、返ってきたのは深い沈黙だった。


 責任を取れない。余計なことは喋りたくない。


 修羅場を潜った経験が足を引っ張り、空気を読む。


 大人の悪知恵だ。均衡が崩壊するリスクを恐れている。


 立場のある人が多いから、生半可な覚悟じゃ動けないんだ。


(困ったな。これだと仲裁のしようがないんだけど……)


 ある程度の状況を察した上で、途方に暮れる。


 揉めているのは明らかだけど、情報が少なすぎる。


 せめて、誰と誰が敵対してるかだけでも知りたかった。


「発端は、そこの中国人含めた、後入りの五人。ルールを無視して、いざこざを起こそうとしたっす。狙いは、この階の勝利報酬『一人用特急権』だったっすけど、所有者が放棄。宙ぶらりんの状態でジェノさんが現れたって感じっす……」


 空気を読まず、語り出したのはメリッサだった。


 必要最低限の情報だったけど、おおよそ理解できた。


 かなり端折った可能性もあるけど、聞く限り犯行は未遂。


 ――これならどうにかなりそうだ。


「ありがとう、メリッサ。……まずは、自己紹介といきましょうか。お姉さん」


 次なる標的を見据え、ジェノは声をかけ、揉め事の調停が始まった。


 ◇◇◇


 簡単な挨拶を済ませ、双方の言い分を聞いた後。


「……つまり、マカオの地を荒らすニワカ共に鉄槌を下したいと?」


 蓮麗の動機を要約し、ジェノは確認する。


「はい、そうですネ」


 驚くほど従順な相手は、素直に認めた。


 それも、異様に腰が低く、敬語を使ってる。


 事前に聞いていた印象とは、まるで違っていた。


 ちゃんと話せば分かってくれるタイプかもしれない。


「だったら、ルール外じゃなく、ルール内で決着をつけませんか」


 切り出すのは本題。彼女の憂さ晴らしを解消するプラン。


「それは……タイムズルーレットで徹底的に殺し合えと言うことでしょうカ?」


 蓮麗がたどり着いたのは、一つの答え。


 話の流れから考えたら、何も間違ってない。


 ただそれは、冥戯黙示録による、思考のロック。


 あらゆる可能性を考えない、短絡的な考え方だった。


「いいえ。勝負をつけるのは、一つ上の階。必ずしも殺し合う必要はありません」


 確信を持って、ジェノは本題を切り出す。


 先に進める手段は、特急権だけじゃなかった。

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