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賭博師メリッサ  作者: 木山碧人
第七章 マカオ
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第48話 急展開

挿絵(By みてみん)




 ザ・ベネチアンマカオ地下20階。撃鉄の間。


 特急権用のエレベーターが開き、現れたのは五人。

 

 ヘケト、マイク、一鉄、広島。それに加えて、もう一人。


「全員、その場で降伏して、チップを引き渡すネ。じゃないト……殺すヨ」


 蓮麗が突如として言い放つのは、物騒な内容だった。


 しんみりとした雰囲気をぶち壊し、空気は張り詰める。


 ギャンブルのルールを完全に無視した、反社会的な行動。


 ――ようは、カツアゲだ。


 各々が臨戦態勢になり、ほぼ全員が体にセンスを纏っていく。


 馬鹿みてぇな話だが、起こるべくして起こちまったって感じだな。


 ――なんせここは、無法者が集う賭場。


 世の中を無視して、成り上がってきた奴らの集まり。


 所持チップが増えた終盤になるほど、起こる確率が上がる。 


 作物を刈り取るなら、十分に育ってからの方が効率がいいからな。


 ――ただ、いくらなんでもタイミングが悪すぎる。


「おいおい、目ぇついてんのか……? この面子の前にして、よく言えたな」


 一人用の特急権を懐にしまい、ルーカスは反応を示した。


 周囲には豪華すぎる面々。裏社会を牛耳る重鎮たちが勢揃いだ。


 ヤクザの閻衆、ロシアンマフィアのマクシス、中国マフィアのシェン。


 それに加えて、特異体イレギュラーの中でも最高傑作のメリッサと、遺物使いのベクター。


 ――全員でかかれば、負ける気はしねぇ。


 ぽっと出の連中に、不覚を取るような面子じゃなかった。


「修羅場では実力が全てネ。立場や肩書きは、何の役にも……」


 挑発に応じ、蓮麗は喧嘩を買おうとする。


 ただ、こちらを見た瞬間、なぜか言い淀んだ。


 カツアゲ以上の奇策を思いついたかのような反応。


 この場においては、チップよりも重要なものがあった。


 冥戯黙示録の一抜けが確定しちまう、あるアイテムの存在。

  

(まさか……特急権に気付いたのか?)


 懐にしまった紙切れの存在が、えらく重たく感じた。


 参加者全員が共通して追い求めてんのは、悪魔の使役権だ。


 それを引き換えできる紙切れってんだから、気付かれたらまずい。


 向こうの弁が立つ場合、ベクター以外の全員が敵に回る可能性すらある。


(いや、この階の詳細を知らずに、気付けるはずねぇよな)


 頭を振るい、可能性を否定する。

 

 一人用特急権は、この階が初出の情報。


 心を読め取れたりしねぇ限り、知る由がねぇ。 


 感覚系だったらあり得るが、ほとんどが身体接触型。


 直に触らねぇと深い部分まで、読み取れねぇのがデフォだ。


 相手を見るだけで心を読める感覚系能力者は、データになかった。


「あぁ、計画変更ヨ。狙いは、そいつが持つ一人用特急権。……早い者勝ちネ」


 しかし蓮麗は、知る由がねぇはずのワードを口にした。


 確定だ。身体に触れずに、見るだけで心を読み取れるタイプ。


(おいおいおい、ほぼチートじゃねぇか。そんなのアリかよ……)


 その場にいる、ほぼ全員の目線が一斉に集中する。


 明らかに流れが変わった。ルール無用の殺伐とした空気。


 裏社会の重鎮たちも空気に流されて、敵に回る可能性すらある。


(ったく、楽には勝たせてもらえねぇか……。やるっきゃねぇだろうな)


 この場の全員を巻き込んだ、一人用特急権の争奪戦。


 勝つべくした勝った博打の先には、まだ見ぬ未来があった。

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